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エヌビディアの決算のどこがいけなかったか?

8月23日引け後にエヌビディア(ティッカーシンボル:NVDA)が決算を発表しました。驚くような良い内容で一時は+8%まで買われたのですが翌24日は利食いに押され結局前日比ほぼ変わらずで引け、今日は逆に現在ザラバ-3%で推移しています。一体、どこがいけなかったのでしょうか?
 
まず決算自体はEPSが予想$2.08に対し結果$2.70、売上高予想111.9億ドルに対し結果135.1億ドル、売上高成長率は前年同期比+101%というぶっちぎりの内容でした。
 
グロスマージンは70.1%と前年同期43.5%からジャンプしています。
 
最も重要なデータセンター売上高は103.23億ドルで、前年同期の38.06億ドルから急増しました。
 
さらに第3四半期売上高は予想125.9億ドルに対し新ガイダンス156.8~163.2億ドルが提示されました。これは前年同期比+170%であり予想を超える強いガイダンスでした。
 
われわれはGAFAMをひとくくりに議論することが多いのですが、各社売上高成長率は;
 
AAPL -1.4%
MSFT +8.3%
GOOG +7.1%
AMZN +10.8%
META +11%
NVDA +107%
 
と桁違いにNVDAの成長率が高いです。しかも次の四半期はガイダンスが+170%となっています。だからNVDAは別格と考えるべきでしょう。
 
問題は「NVDAの数字はなぜこれほどよい?」ということです。
 
その回答は生成系AIはまず大規模に作った方がAIがかしこくなるし、そのためには半導体の演算速度を速くするのがコスト、消費電力面で一番効率的だからです。
 
言い換えればエヌビディアはGAFAMのような巨大企業からおカネをむしっていることになります。UPSIDEがバカでかい理由は、お金を持っている企業と商売しているためです。
 
800億というトランジスタ・カウントを誇るホッパー、ならびにアンペアに依拠するAI向けHGXシステムがアマゾンAWS、グーグルクラウド、メタ、マイクロソフト・アジュールなどの大手企業に大量に買われています。
 
さらにHGXを供給するサプライチェーンは良く機能しており、今後、毎期、順調に増産が可能です。
 
米国が需要のドライバーで、中国はデータセンター売上高の20~25%でした。これは過去の実績と同じです。米国政府が対中輸出規制強化しても米国の需要が強いためエヌビディアの業績には影を落としません。
 
一兆ドルのデータセンター投資額のうち4分の1が毎年更新されます。言い換えればターゲット市場のサイズは2500億ドルということです。
 
データセンターのリニューアルの過程で生成系AIに最適化されたチップに順次置き換えられてゆきます。各社のおおまかな年間設備投資額は
 
AMZN 500憶ドル
MSFT 320億ドル
META 280億ドル
GOOG 240億ドル
 
つまり合計で1340億ドル前後になります。するとターゲット市場の約半分をこれら4社で担っているというわけです。
 
ラージランゲージモデル(LLM)は人の会話をよく理解するだけでなく言語がどう構築されているか? これまでに人類が蓄えた知識、というものをわきまえています。
 
さらにそれらをエンコードすることで簡単に再利用できるようになりました。一度それが構築されれば、今度はそれを小さく、ローコストに利用する様々なサービスが構築可能になります。
 
ちょうど先生が生徒に教えるようにコンピュータがコンピュータに教えることが可能になります。これはディスティレーションと呼ばれる手法です。ラージモデルはとてもおおきな一般化からはじまり、スモールモデルはより専門化します。
ところで生成系AIのこのような特性(巨人対巨人のバトル)は、これまでに信じられてきた技術革新の生まれ方とちょっと違うノリです。
 
『イノベーションのジレンマ』では、破壊的イノベーションはおうおうにして安上がりで、ピンポイントの不都合を解決することに特化し、性能的に取るに足らない「安かろう、悪かろう」的な発明であることが多いと論じています。
 
だから巨人同士の戦いで、莫大な初期投資を行う生成系AIのような試みは「破壊的イノベーション」の常識から外れているのです。
 
軍拡競争に対する恐怖が24日のGAFAMの下げ相場の原因をつくりました。
 
一度LLMを完成させエンコードが終われば次に小さく、ローコストな様々なサービスが構築可能になります。ひとたび「具体的なサービス」のレベルまで降りてくれば、(ま、だいたいアバウトで…いいんじゃね?)というチンケな性能でも我慢して使えるAIウェブサービスというのはどんどん登場することが予想されます。
 
卑近な例ですけれどMaky( maky.onlie )だってまさしくその着想でデザインしました。

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