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龍野国際映像祭2022[side A]

では、この記事ではちょっと前に開かれた龍野国際映像祭2022の
ほぼ全作品を見た感想をつらつらと書いていきますよ~
ダイアローグがない作品ばかりなので、ストーリーを語るのは困難だったり。つまりそれは、コメントしずらいってことなのです。
ああ、ひろさわさん、文章書くの苦労しているなあ、と思ってくださいね。
では・・・

コンペティションプログラム

STUDENT EXPERIMENTAL / 学生実験映像

2022 COMPETITION PROGRAM / 2022コンペティションプログラム
5作品 プログラム上映時間:22分
上映場所:アポロスタヂオ

アポロスタヂオ入り口 普段は どんな感じなんだろ?

※3つの会場のうちでは、もっとも映画っぽい上映形態。部屋の奥のスクリーンに投影、会場は真っ黒、ステレオスピーカー2本を離して配置。
私語がはばかられる雰囲気。4つのプログラムの合間にカウントダウン付きの休憩が入ります。

01. Saltwater / 塩水

パンフの小さいサムネだと普通に見えちゃいますが、
印刷的に原色を交差したり、スクリーントーンのように円の粗密で描画されています。面目ない、ストーリーは忘れた~っ!
ただ塩水って、体液のことかな、とは思いました。人の体の中に、海がある。

02. Forever / 永遠

その永遠と化した一瞬(絵画)の前に、どんな騒動が起こったか、という話(映像)。
一種、活人画なので、17.S[QUARE]D / 方眼 とも通じるところがありますか。

03. Greg's Apartment / グレッグのアパートメント

グレッグw そう、たしかに彼の愛称はグレッグになりますわw
というわけで、アレが登場したときは変な笑いが出ました。
原作当時だとリモートワークはできないけど、いまはテクノロジーがあるからなあ…(キーボード、意味が分かるとアハ体験)まあ、そのテクノロジー関係の試練は、我々にも頻繁に訪れるわけですな。

04. A House with Garden / 庭のある家

シネスコ画面。これ一人二役の多重合成か! とエンドロール見て思ったのですけど、勘違いかもしれない。ピックして捨てる動きは別の作品でも見た気が…? 女系の継承は、28.Lapso / 期間(こちらは(も?)一瞬しか重ならないが)、Samsara / サムサラ でも。

05. The Moon Rises During the Day: Sound Sculpture / 昼に上る月:音響彫刻

いまだと、消し込みとかしなくても、デジタル絵の制作過程をリアルタイムで録画できますかね。「ある音楽」っての、ドビュッシーかな、とおもったら全然違ってて、テクノな感じだった。

STUDENT ANIMATION / 学生アニメーション

2022 COMPETITION PROGRAM / 2022コンペティションプログラム
上映場所:アポロスタヂオ
5作品 プログラム上映時間:33分

06. Small Hours / 小さな時間

数あるマルチ画面作品のうちのひとつ・・・なのですが、
マルチ画面作品、大画面スクリーンで見ると、こっちの理解がおいつかないんですよね・・・これは龍野国際「映像」祭であり、「映画」祭ではないのだ、と思いました。
映像は、途中停止できるし、巻き戻しもできる。再見ももちろんできる。
映画はそうではない。基本初見で分かってもらわないといけない。
小説で例えるなら、二人の意識の流れを、2段組みでやってるようなものだろうか? 絵は穏やかなのに、理解は難しい・・・

07. Throng / 群れ

本当に小さい人たちが、乗算レイヤーの重ね合わせで増殖していく。中心はない。32.Menagerie / 動物園にも通じるか。
タップ穴やカウンターも入り込み、アナログ制作のアニメだということを自己言及している。制作方式への自己言及は、01.Saltwater / 塩水(PNG画像から始まる)、23.King's Garden / 王の庭園(メイキングがエンドロールで写される)でも行われる。

08. SOLA / ひとり

NERF! NERF!  みんなもうストレスで壊れそう!
額のこぶは、ストレスとシンクロしてどんどん肥大(平成狸合戦?)していき…
タイトルの意味は、ラストで回収されます。「ひとりの楽園」…確かに、自分だけならストレスは感じないかも! 自分は、爽快感を感じたなあ。

09. Patient's Mind / 患者の心境

マルチ画面作品のうちでは、これが一番楽しめたかな。二つの画面がシンクロしたり、溶けあったりする。不透明水彩でガシガシと描いたような絵柄が魅力。
一応、生死の境をさまよう患者(現実)が、その内心で、生きるべきか死ぬべきかを争っている(心境)ように思えたのですが、今思えば、心象風景だと思っていたものが、ひょっとしたら現実風景だったりもするのかもしれない。その逆なのかも。あるいは両方?
一回だけだと、味わい尽くせない。一応、エンドロールで種明かししている よ う なのですが、それでもわからず・・・
もう一度見てみたい作品・暫定ナンバーワン、でしょうかね。

10. Before Her Body Left / 彼女の体が去る前に

「男と女」という二元論に還元されないジェンダーについて語っているのは、『Choice / 選択』もそう。細く神経質な描線。鏡の中にいるのは、ジェンダーを変える前の自分なのか、と最初思ったけど、どうもそうは見えなかった・・・鏡はナルシシズムのシンボルでもありますが・・・どうなんでしょう?

EXPERIMENTAL / 実験映像

2022 COMPETITION PROGRAM / 2022コンペティションプログラム
上映場所:アポロスタヂオ
7作品 プログラム上映時間:33分

11. THUNDER / 雷鳴

とどろくあの音は・・・
難しくはないけど、英語を読めないと、話の肝が伝わらないかも。
今の(戦中の)ウクライナで撮られた映像「作品」として貴重。

12. 1MTH/MIN / 1ヶ月/分

こ、これは、タイムラプス表現の革命かも!?
ある意味、縦1ドット横1920ドットの画面が横に1920個マルチにつながっているとも考えられるわけで。
マルチ画面を生かすのは、そのマルチ画面「間」のつながり(シンクロ)なのではないか、と思わなくもなかったり。
あと、さりげなく音表現も凝ってました(単に早回ししたら音にならないわけですし)

13. The Fitting / 試着

観光地によくある首だし看板の、眼版。両目以外のところは、モノクロ老若男女(複数)なのですが、眼だけは、常に同じ人(カラー)。
さて、数多くの試着ののちに、お買い上げするカラダは見つかっただろうか?

14. SENSUAL PILL / 官能錠

観客席から、おどろきのどよめきが上がった作品。
当初、受精卵か? と思ったものは、グーグルアース上の島。タイムラプスではなく、似たような写真を一コマずつ積み重ねていくことで、その類似部分が浮き上がるという方法だ。(正式名称不明…『FALLING DOWN / 落下』でも使われている)
似たような写真を、すこしずつある方向に向けて変化するように選択することにより、動きも作り出せる。
全体としては、自然に人間の手が入っていく(だが戻っていく)、というストーリーがあるようなのですが、グーグルアースの(時間的に)蓄積されたデータを早送りで見るだけで新鮮です。SENSUAL PILLの題は伊達じゃない。
4分と短いのですが、見ているほうの脳みそはフル回転です。

15. Waiting for The Buff to Rub Me Out / 私を削り落とす除去人を待つ

壁に落書きする(グラフィティ)少女と、その落書きを、灰色のペンキで上書きして消すおじさんの話です。いくら凝ったグラフィティをスプレーしても、結局は消されてしまう(仕事ですから)。
そんな二人ですが、プライベートでは、クラブで隣り合わせで踊ってたりするw(というオチ?)

16. Three Points of Suspension / 三つの杜絶

杜絶って何!? と思ったら、途絶の別名だった。
ところでこのタイトルは「…」←これ(三点リーダー)のことじゃないかなあ、と思ったり。沈黙などをあらわす記号ですな。
お祈り中に窓の外で何を見てしまったか、ズームもカットもないので、分かりにくかったりもするのですが(わかったときはビクッとする)
窓の外で 見 て しまったこと(後半)が物語の起点であり、救急車の音に邪魔される映像作品としての前半こそが、そのあとの出来事なのかもしれない(時系列シャッフル?)と今、ちょっと思う。

17. S[QUARE]D / 方眼

自分なら 『額「の」中』 とでも邦題付けますか(上手くない)。
活人画(生身の人間が、コスチュームつけて静止し、立体の絵画のように見せるもの)なのですけど、テーマは、[額縁]の(時間的)外にあるものとの落差でしょう。元の絵画を知っていると面白い、と思います。というか、自分は無茶面白かったです(一票入れた)
これも 11.THUNDER / 雷鳴 と同様、ウクライナ作品(戦前)。

ANIMATION / アニメーション

2022 COMPETITION PROGRAM / 2022コンペティションプログラム
上映場所:アポロスタヂオ
8作品 プログラム上映時間:55分

18. Cold Heart (PNAU Remix) / 冷たくなった心

え? これ本物のエルトン・ジョンだったの!?
てっきり二次創作のファンアートだと思い込んでいまして、
今のファンアートってすごいなあ、と思ったんですが、
帰宅してからPNAUで検索してみたら、公式動画だったということがわかりました。3.6億回再生ってすごいな!

人形アニメ(かな?)の4人は、重い動きをします。
一方、カートゥーン寄りの絵で表現されるエルトンとデュア・リパはチャーミング、コロナ禍とそれへの救済なのでしょうか。 

19. Us / 我々

ポルトガル語(?)の"nos"が、英語の"us"にメタモするタイトルが印象的。
今気づいたのですが、We(我々は)じゃなくてUs(我々を)なのですな。灰色で曇る人々、戦車、いろいろ出てきたんですが、
申し訳ない、だいぶん忘れちゃってます。

20. 101 Days of Lockdown / 101日のロックダウン

これもマルチ画面なのですが、ほとんど忘れちゃってますねえ・・・この辺、見てる自分のほうが疲労してたのでしょうか。
HD画角の映像を横に二つ並べると、一つの映像の面積は全体の1/4になってしまう。 06.Small Hours / 小さな時間 や 09.Patient's Mind / 患者の心境 では、いろいろ配置を工夫してましたね。

21. The Primitives / 原型

ドットが見える3DCGと、ファミコンみたいな音。
CG表現の原形のようなものが、塊魂のようにつながったりして複雑になっていく。消失点無し。レギュレーションぎりぎりいっぱいの10分作品ですねえ。
自分には、刺さらなかったかなあ。

22. Darwin's Notebook / ダーウィンの手記

自らを文明人だと規定する人々が、未開であると思う人々を、
予防接種や文字化(アルファベタシオン)することにより救った、と考えたのだろうか。だが、あの虐殺は野蛮ではなかったのか。
文明人の思う歴史と、先住民主観の歴史が乖離している。
…↑というのが、自分が脳内で起こしたストーリーではあるのですが、違う気もする。
ストーリーを深く知りたいので、もう一度見てみたい作品・暫定ナンバーワン(複数あります)。
境目のない感じでモーフィングするアニメは心地よい。「魔王」がのべつまくなくグルグル動いていたのに対し、こちらはトメてくれるところもあります。

23. King's Garden / 王の庭園

細かい植物の枝に粗密をつけることによって絵を描くという手法らしいのですが(エンドロールにメイキングがある)、詳細不明の謎超越技法です。
ストーリーは分かりやすい。女への情念が色になったかのような、血と花の赤色が鮮やかです。

24. DING(Thing) / 事物

なにやら正体不明の、どう猛な子供の妖怪みたいなのに、付きまとわれる男。もちろん、何かの例えだと思います。
太ももをかじられ、赤い肉がむき出しに。23とは別の意味で、そこが鮮やか。オチは忘れてしまったのだけど、全体的な陰鬱感と、本当に痛そうな感じ。

25. MOM / 母

スティーブン・キングがバックマン名義で書いた小説のような、逃げるデスゲーム(大人になるために強制された通過儀礼?)。
少女の顔立ちや色の感じ(つるつるしている)が、日本の「アニメ」ぽくも、「ヘビーメタル」のようなバンドデシネぽくも見える。
誤解された日本的な"kawaii"ネオン街も出てきます。
人は他人を犠牲にしながらも、そのことに自覚も罪の意識もなく、消費してしまっている。
今、唐突に、死にゆく兵士は、母の名を呼ぶ、ということを思い出しました。

FAMILY / ファミリー

2022 COMPETITION PROGRAM / 2022コンペティションプログラム
7作品 プログラム上映時間:35分
上映場所:ガレリア アーツ&ティー

本当に橋の近くです。
中から橋を眺める景色が最高

※喫茶店の中に大きなモニターを設置。注文したジュースなどを飲みながら鑑賞です。普通のお客さんも来るので、会話等の環境音が混ざることをご承知おきください。特に会場は暗くないです。(ちょっと安定しないけど)机の上でメモやスケッチを書きながら見れる映画祭(映像祭)は 初めてです!

26. Miranda! - The art of recovery / ミランダ!回復への術

髪の毛が黄色い女性がミランダさんで、
その人に別れられてしまった、ミュータントタートルズのような目をした男が、ウォウォウォウォ、と歌いながら踊ります。
歌詞の意味は分からないですが(レギュレーション的に、日本語には翻訳されない)、もう一度生きなおそう、みたいな感じだと思う。
このウォウォウォウォのときに、色鮮やかな動物たちが集合してくれるのを体感したくて、2回見直しました。

27. Are you here, Ser Brunetto? / ブルネット先生、ここにおいででしたか?

実際にはいないけど、なぜかどこかにいそうな気がする青のハチワレ猫(2足歩行)は、禁酒が徹底されたパラレル日本(コロナの例え?)で、酒とブルネット先生を求めて、渇きに苦しみながらさまよっていた・・・
排水溝の下に、階層化された地獄がある? そして、最下層の地獄に、酔っ払いがいっぱいいるのか・・・
でも、地獄って楽しそうですなあ。楽しいといいなあ。
ホンワカ絵柄と動きを再体験したくて、2回見直しました。

28. Lapso / 期間

おだやかな見た目に反して、今回最大の問題作かもしれない。
初見の感想は、ゲーム画面みたいだなあ、というもの。フラットなメイン画面に、パラメータ数字やアイコンが、どこが中心ということもなく配置されている。左下の二進法的表示は、かなり重要なのですけど、メイン画面を見ていると、そこには注意がいかない。
大画面ではもちろんのこと、これモニターで見ても全部を一度に認識できないんじゃないか・・・
解題してみると、上部の数字は左から 西暦 メトロノームのストローク(半年にあたる) 女性とその孫の年齢
時計アイコンの意味は不明、グラフは命の勢いといいますか
そのグラフは、左下二進法とシンクロしており、
101010101010・・・(最大数の半分)になった時だけ、女性とその孫の数字が合致する。ただし、女性は下行時、孫は上昇時。
ほんとに一瞬で、ズームするとかの親切なガイドはないので、どういうことなのか、わかりにくかったりしますねえ。
「映画」祭ではなく「映像」祭なのだと思い知らせてくれた作品。
意味を分かりたくて、2回見直したのですが、視聴したというよりは、攻略した、という感じ。そして、肝心のメイン画面にはあまり注意がいかなかったという・・・

29. The Turnip / カブ

「おおきなカブ」って民話、ご存じですよね?
そっちのほうは、単純なドローイングで描かれるのですが、
その地上の人々&動物と、異様にリアルな(グロテスクな)地面下の動物たちの対比。
ああ、なるほど、どうりでカブがなかなか抜けなかったはずです!
でも、地下のネズミが、地上の猫の声に負けちゃうんですね。
地下労働者たちの団結はむなしく崩れる(そういう話なのか?)けど、カブのほうはカブのほうで、空中を飛んでいく~
※え? カブ=株、というわけで、金融資本的に考える話なの?(違…ともいいきれないか)

30. A dog barks, the trees grow and the wind blows the clouds / 犬が吠え、木々が育ち、風が雲を吹く

あらすじには還元しづらい、子供のころ見た夕日のもの悲しさのような、作品。「話の話」と同タイプの、個人的なハーモニー(by 土居伸彰)を描く作品だろうか。
パステルと色鉛筆のタッチ。消して描くことで動きを表現か。
たなびく雲、ブランコの少女、自転車の少年。少女は草むらの中で、幼くなったり、ちょっと年を取ったりする。落ち葉とボールの茶色い残像。
生成する鉄塔と木々。

31. Do not cross / 立入禁止

申し訳ないが、タイトルとあらすじで、オチがわかっちゃったw
人がヒトであるが故の苦悩!
兵庫県立美術館は、一番大きい展示場に、トイレがないんだぜ!(関係ない)
まあ、それはともかく、ピカソ的キュビズム顔を、さらに立体化した造形は見ものです。気絶で済んで良かったねぇ

32. Menagerie / 動物園

Menagerieは zooよりも、もっと見世物寄り。いっそ「サーカス」といえば通りがいいか。
「ウォーリーを探せ!」的に小さい人々が、画面を埋め尽くすように反復ループする。犬と人さえ立場を入れ替える。
だがよく見ると、その反復行為には、何の意味もないように思われる。単体としては意味はありつつも、ループと化すことにより、無駄な行為を立場を入れ替えながら繰り返しているように見えるのだ。
構造、というよりは、大量生産品としての人間。交換可能な部品。
やがて、人体さえ分解し、空中にらせんを描くのだが・・・
最後には、一人に戻るんだよね。昼間の狂騒(サーカス)が嘘みたいに。

ショーケースプログラム

MAGDALENA ABAKANOWICZ UNIVERSITY OF THE ARTS ANIMATION / マグダレナ・アバカノヴィチ芸術大学アニメーション選
上映場所:わのわ自家焙煎珈琲
10作品 プログラム上映時間:48分
※こちらも おしゃれな感じの喫茶店です。文化ですよ~(写真は撮り忘れました)壁にお客さんやマスターの描いた絵が展示されてます。
お土産に焙煎豆を購入すりゃあよかったかも。テーブルとイスの空間の奥の部屋(日本間、ちょっと暗い)にモニターがあり、その部屋の床に座って視聴します。腰がつらいか・・・
同じく、一般の方が来られます。

Post-Proto / ポストープロト

ヘラの跡さえ残っているような灰色粘土の人物が、踊る。踊りまくる。
色鮮やかな仮面をつけて、プロトタイプ(原形)の祈りを・・・
(これも、女系の継承・・・ルーツの話か?)
踊りが終わっても、仮面は後(ポスト)に残った。

Little tale / 小さなおとぎ話

モノクロの世界に飛ぶ蛍。蛍はなぜ光るのでしょう。
それは、長い鼻をした謎の生き物が、蛍光絵の具を塗ってあげているからです・・・って、そんな話なのでしょうか?
語るべき相手の中に幼児・子供がいるということは、創作にいい影響を与えるのかもしれません。

Choice / 選択

プリミティブな形が積み重なり、(21.The Primitives / 原型 参照)
プリミティブな ひとがた が出来上がっていく。
男でも女でもなく。
だがそこに、余計なもの、余剰としての黒い三角錐が一つ現れるのだ。
胸につけると、下半身が大きい女性型△になり、
股間につけると、上半身がマッチョな男性型▽の体になる。
しかし、そのはざまで悩み、その悩みがダイナミックなモーフィングとなる。(10.Before Her Body Left / 彼女の体が去る前に も参照。10に比べて、パースを誇張したダイナミズムがある)
しかもさらに、三角錐がもう一つ現れ、どちらかを選ぶことはより困難となる。
最後は、△と▽、そのどちらかに収束できないジェンダーの形もあるのではないかと問いかける。
テーマははっきりしているんですが、それよりも(よりも?)、ダイナミックなモーフィングが魅力的だと感じました。

We can still be friends / まだ友だち

冷静(青)と怒り(赤)。二色のパレットで語られる恋愛の終わりと再生(なのか? 26.Miranda! - The art of recovery / ミランダ!回復への術 も参照 あっちは彩度の高い派手な色)
赤いツタを伸ばす謎の植物。それは絡みつく嫉妬の具現化だろうか。

Empty room / 空の部屋

面目ない! この作品だけ、きちんと見ていないんですわ~
一人称カメラで15分半は、見てるこちらが画面酔いしちゃうなあ、と思って。

He / 彼

あらすじとサムネを見て、
「謎の人物」の正体、なんとなくわかっちゃったかな~と思ったんですが、
実は、タイトルが大ヒントでして!(と後で気が付いた)
水兵リーベ僕の舟!
命が尽きて終わるのか、と思いましたが、続きがありました。
でも、今思うと、あれは「幸福の王子」の昇天的なものなのかもしれない・・・

Magic Bowl / 魔法の器

おおおっ ゾートロープ!?(スリット部分は撮影カメラそのものがその役割を担います)走るだけじゃなく、お椀で泳ぐのが面白かったですね。走りから泳ぎへの移行が難しかっただろうなあ、と。

Cofee cofee cofee / 珈琲、珈琲、珈琲

英語でコーヒーはcoffeeだけど、パンフの表記のままで。
会場の「わのわ自家焙煎珈琲」は、喫茶店なので、このコーヒー中毒(依存症)みたいな作品は合致してましたね。墨絵みたいなストロークが、コーヒーを ほのめかしながら躍動します。
コーヒー カフェラテ カプチーノ~♪

Keep it / 続けて

この作品も、赤と青の二色だったような気がする。影が青で表現され、
その影の中に、現実では起こりえない出来事が起こるので、びっくりしてやめようと思うのだが、「続けて」の声がして、奇妙な二重のパレット世界が継続する。
・・・すんません、だいぶん忘れています(汗

Samsara / サムサラ

サンサーラ=転生。
生まれた女の子は、やがて成長し、家のドアを開けて出ていく。
そのドアが、母親の目に写る。母系の継承か。
醤油で薄く描かれたような描線。(ちょっと溜まっている)

2021 AWARD WINNING FILM / 2021年度受賞作品

上映場所:わのわ自家焙煎珈琲
7作品 プログラム上映時間:41分

Tero Akvo / テラ・ウォーター

水没した地球の森のような世界に、大きなクジラが悠々と動く。
28.Lapso / 期間 とは別の意味でゲーム画面っぽいなあと思ったのですが、
アニメ「Away」がゲームエンジンで制作され、カメラワークは手で(アナログジョイスティックのようなもので)つけていた(のかな)を思い起こしたのです。空間が大きいからか、大画面にも映える。
ラストの古い電話機は、ほろんだ人類の遺物と考えたのですが、どうやらあらすじを見ると違うようですな。

Nod. Wink. Horse. / うなずき.ウィンク.馬.

荒いタッチ。全体が見えない。何かに覆い隠されて。
その覆い隠す茶色い何かは、タイトルに導かれ、かろうじて馬だとはわかる。
背後、貧しい人々が、なにか物語を演じているらしいのだが、
(カメラに対し相対的に)巨大な馬に覆い隠されて、よくわからない。
このよくわからなさが、リアルなのかもしれず。

Festering Sink / 膿むシンク

麺類を撮影し、それを流し(シンク)に投影し、実際の手などと合わせる。
麺類に対しトラウマが起きそうな。
青白い色調。

Elephant in Castle / 城の象

トポフィリア・・・今調べてみたのですが、性的倒錯(この言い方も問題あるかもしれませんが)の なんとかフィリア とは違うのですな。
「都市も生態系」「第2の故郷」みたいな感じか?
この作品の場合だと、香港(過去の?)というトポスを愛するということなのだろう。
う~む、それを踏まえたうえで、もう一度見たい(個々の要素は工事現場と、選(よ)って豆を捨てるシーンしか覚えてない・・・)

Anemone Temple / イソギンチャク寺院

テッカテカーっ! 中心からのパラソル的対称形で、モノクロのイソギンチャク(sea anemone)らしき物体が、メタリックな光沢をもって展開していきます。寺院…は、寺院の円天井を思い起こさせるからかな。
とにかく テカっていますわ。

FALLING DOWN / 落下

やはり地球は水没したらしい。かつての思い出は、茶色に染まってしまった。
ストロボフラッシュ的に過去の思い出が列挙される。猛スピードで切り替わるお札の肖像画は、同じ位置に置かれた目のイメージだけが残る(13.The Fitting / 試着 参照)。それは 14.SENSUAL PILL / 官能錠 と同じく、本能的な知覚(対義語は「理論的な思考」)に訴えかける劇薬である。激ヤバ(見てるほうの精神力が)。

Poise / 落ち着き

虫~蟲~~~~~~
白い人物のパーツが重なるところ、上の楕円型と下の楕円型が重なり合って、断面図に見えるところが面白かったです。
ストーリーは忘れてしまった・・・

終わりに

というわけで、全プログラムの感想を書きました(1作品除く)。
ストーリー忘れている作品も たくさんあるのですけど、
ストーリーはあくまで、画と動きを最後まで見せるための媒体でしかないのではないか、とさえ考えることもあります。
映像の鑑賞とは、いいお湯に入るようなものだとも。お湯の中で、お湯の意味やストーリーなんか考えない。ただ浸(ひた)る。
一泊二日だったのですが、体力・精神力の関係もあり、複数回見れなかった作品も多数ありますね。(一回通しで見ても 4時間はかかるそうで)

また、映画・映像というのは、ほかの作品・経験とのネクサス(関連性)とともに存在するもの。複数上映というのは、そのネクサスごと提供しているのですな。

シニフィエ(意味されるもの)はシニフィアン(意味するもの)より常に多い、とロラン・バルトも言っていることですし、見た人によって解釈や感想が違うのも映画の醍醐味。
ほかの方の感想も ぜひぜひ読みたいです~
ではでは。

本年度の龍野国際映像祭上映作品をダイジェストでご紹介! たつのアート2022 11月13日から20日まで。 Digest of this year's Tatsuno International Film Festival screenings! Tatsuno Art 2022 November 13-20.

Posted by たつのアート on Saturday, November 5, 2022

↑各作品をダイジェストで。順番は、カタログ順(この記事もそう)。
プログラム冒頭にも流れてたと思います。
全プログラム見て、記事も書いたので、今の自分は、このダイジェストがとってもよくわかります。

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