文系大学院生の研究とお金/研究は役に立たなくてよい?

佐藤ひろおです。早稲田の大学院生(三国志の研究)と、週4勤務の正社員(メーカー系の経理職)を兼ねています。

本日の読書(下の写真)。
ぼくは、「ビジネスパーソンに役立つ三国志の話を」みたいに意見や文章を求められることが多々ありますが、いつも何を答えたらいいか分からない。

「その研究が何の役に立つんですか」という質問をするとき、研究対象(ぼくの場合は三国志)が「手段」として扱われている。でも自分は研究対象を「目的」だと思ってやってる。自己完結してる。
鉱物学者が「私の研究対象は漬物石になります」と答えるレベルのちぐはぐ感。※漬物は美味いですが

「その小説・映画が何の役に立つんですか」とはあまり聞かれない。
強いて有用性を言語化しなくても、誰かがお金をかけて作り、流通させ、誰かがお金を払って見る(課金方法や収益性は時代・内容によって変わるが)という「現実」が回っていれば、研究もまた結果オーライかも?
※研究はアートだエンタメだ、と言いたいのではないです

「お金を払う」ことに対し、経済学者から他分野の専門家までが熱心に解説してくれるけれども、なかなか解き明かせない。なぜだか説明がつかないが、誰かが「それに1000円を払おう!」と同意すれば、そのものの価値は1000円なのです。売り手も買い手も、よく分かっていないけれど。

2010年代、博士課程の大学院生の窮乏を唱えた本やSNSの書き込みがたくさんあった気がしますが、最近あまり目に入らない。
・困難さが言い尽くされた
・日本人の院生の数が減った
・困難さがやや改善された?
・ぼくの情報源の狭さや偏り
主観的にはこれらを区別しづらい。
博士後期課程入学予定者としては、心配であり希望でもあります。

先輩たちは大変そうですけど、努力を続けていれば結果的に何らかの形で、何とかなっているのではないか?
という気がしないでもないのではないか??

肯定だか否定だか、敢えてよく分からなくしています🐧
少なくとも「絶望一択」ではないことは言えていますね🦁

どういう形によってかは分からないけれども、研究をがんばって、誰かがぼくの話(もしくは書いた本)に対して、「それに**円を払おう!」と言って下されば、それはその経済的価値があるのです。
小説や映画だって、値段の妥当性はよく分かりませんからね。

お金が動いた時点で、
「わたくしの研究するところの三国志は、ビジネスパーソンにとっていかに有用なのか?」を、ひねり出しながら正当化しなくても、経済的には「勝ち」なんですよね。
現実にお金が動けば、経済学者だって解き明かせない。

ぼくは過去に、お金を頂きながら、三国志の話とその研究の話をひとさまに話したり、文章にして売ったりしたことがあるので、空理空論、まったくの妄想ではない、という手応えがあります。

「一攫千金!三国志はめちゃくちゃ儲かる」「左うちわで不労所得」「投資(投入した労力や資料代)に対する期待利回りが**%」みたいな話ではないです。時代状況や内容、自分のやり方によって大赤字にもなるでしょうし、そこそこの生活費の足しになるかも知れない。
お金が欲しければ会社に通えばいいし、株式を買えばいいんです。三国志を迂回している場合じゃない。やりたくてやってるんだ。
もしくは、すでにレールが完成している「明確に金銭的リターンが見込めて費用対効果が約束された学問」をやればよい。優遇措置も手厚い。

当面は世間一般(そもそも誰なのか?)に対して、
「三国志はこんなふうに役に立つんです」と熱心に説得して回ることを第一に考えなくても、生きていけるというか、研究を続けてもいいのかな、という楽観があります。

研究用の予算を取得するための申請書(科研費)とか、「ビジネスパーソンを対象にした出版企画です」など、あらかじめ目的が定義された場合は、なるべく枠にはめる努力はしますが、期間限定。それが第一ではない。

最後に少し軌道修正、行きすぎを緩和しておくと、「研究者は、研究を通じて得た知見を、現代社会・世間に当てはめて発言してはいけない」とも思いません。研究内容が何らかの政策提言?に繋がる、ということは、大いにアリだと思います。
信じる正義があるか、そのレベルまで強い思いがなくても、せっかく考えたことを言うのは、いいことでしょう。知りませんが。

少なくともぼくは、「社会にもの申すため」に研究をしているのではないです。現実社会に対して思うことがあれば、(知識量で優位に立てそうな)三国志を利用せず、三国志をダシにせず、思ったとおりに、こうやってnoteなどに書けば済む話だと思っています。
「趣味でやれ」は、むしろ褒め言葉として受け止め、開き直っても良いのではないか。なんて思ってます。2024年4月に博士課程後期に入学します。

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