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やりがい搾取と下請法無用の世界からの撤退

佐藤ひろおです。会社を休んで三国志の研究をしています。

これまでぼくは、友達に頼まれ、「三国志労働」をたくさんやってきたんですよ。教えて!助けて!見て!直して!話して!書いて!とか。報酬をもらえたらラッキーですけど、たいていは報酬をもらえないし、別にそれでも、何とも思ったことがないんですよね。
採算を度外視、というのとも違います。損得を考えたことすらない。「小生は、清貧を旨としており」「人格者として振る舞おう」「金銭を遠ざけることで、かえって名声を稼ぐのだ」「損して得をとれ」「将来に対する投資だから」みたいなことは、一切考えずに。経済的思考への迂回は、なし。やりたきゃ、やる。やりたくなきゃ、やらない。内容自体のおもしろさと、(依頼主との)関係性によります。
ありがとー楽しかったー。そうですか、ならばよかったー。以上!!

今回、仕事として「三国志労働」を受注し、途中まで働いたけれど、ぼくの考えと折り合わないから、お断りする結果になったんです。相手は大手さんなんですが、いわゆる「下請法」にがんがん引っ掛かるであろう、やりがい搾取のような状態で。

報酬が少額なのは、仕方がないです。会社員として15年、経理マンとして10年以上の経験がありますが、「三国志労働者」としては、キャリアがゼロです。2ヵ月拘束され、専門性を惜しみなくアウトプットしても、報酬が数万円。それでも、自分のなかで、意義のあるお金だと思ってました。会社員として働けば、2日でお釣りがくる金額ですけど、「三国志労働」で稼ぐお金は別勘定だぞと思ったんですよね。

報酬の低さは納得していたんですが、「下請法」系のことが、黙認できなかったんです。
先方の都合で発注内容がコロコロ変わる。依頼どおりにアウトプットしたのに、先方の都合(依頼内容の検討不十分)で、手戻りややり直しになる。先方の都合で、どんどん業務の質・量が増える(でも報酬は据え置き)。先方の都合でどんどん納期が短くなる(でも報酬は据え置き)。ウェブミーティングで同意した約束をどんどん破る。違約を指摘すると、開き直るか、泣き落としにかかる。
ああもうダメです、容認できません。降ります!!って。

これがね、関係性のある友達同士の「三国志労働」だったら、いいよいいよで、要望を聞いてたと思うんですよ。でも、仕事として請けているんだから、ぼくは耐えられなかったんです。
「実績のない下請け、弱小の個人事業主が、ヘリクツをこねてるんじゃねえ。大人の世界って、そういうもんだ。理不尽に耐えて、流した血と汗の結晶が、お金なんだ」とか、「業界の慣習だ。つべこべ言うな。みんな、同じ条件でやってるんだ。もっとひどい条件の仕事でも、我慢してるんだ」というお叱りは、当然あるでしょう。
実際、そういうもんかも知れません。
「大人になれよ」ってことかも知れません。
でも、それならば、条件が折り合わなかったということで、ぼくは降りまーす、というわけで、実際に降りました。
そもそもからして、「忍耐の代価として、報酬を得る」という世界観はイヤだし、その報酬が少額ならば、もっとイヤです。

ぼくが「忍耐」をお金と交換するならば、会社のほうが、レートが30倍ぐらい効率がいいんですよ。
せっかく休職して手に入れた「時間」なのに、タダ同然のレートで、別業界で、敢えて「理不尽に耐えながら、大量に労働する」というのでは、意味わからんす。というか、提示された報酬の額ぐらいなら、今週に入ってから、金融商品の売買で利益確定が済んでます。
ぼくを「釣る」には、あまりに少額なんですよね。

われながら、理屈と正論ばかりの面倒くさいヤツだと思うんですけど、「仕事として請ける」と、そういうスイッチが入っちゃうし、「報酬を受け取る」からこそ、ほかの労働や運用と比較しちゃう(できちゃう)んですよね。で、レートが不利だと思えば、理由を説明をして打ち切る。
ぼくは、お金ならばある……、というか、お金を稼ぐ方法ならば、ほかにいくらでもあるので。

途中で降りたことで違約金を取るぞーって言われても、むしろこちらがお金を取れる側でしょ?と強めに迎撃し、負けない自信がありました。
仕事としてのぼくは、面倒くさいやつなんですよね。経理職って、理屈を通すことが「付加価値」だったりするんですけど、時と場合によっては、ただゴネるやつ、みたいになります。

ぼくは会社員として、「仕事を発注する側」です。大手の系列なので、交渉力が強いです。だからこそ社内教育が充実していて、「下請けをいじめるな」って、口をすっぱくして教わります。
だから、余計に敏感なんでしょうね。

すごい横暴な取引をしているけれど、おそらく、自覚なくやっているぞと。担当者の個人が邪悪なのではなく、業界なのか、会社なのかが、そういう体質なんだなと。そら斜陽になるよね……と思ったのは内緒。

今回の件で、文句が言いたいのではないです。降ります。そうですか残念です。成功をお祈りしてます。ちゃんちゃん、で終わりです。日常が台無しになる前に意思表明したので、終わりました。

それよりも、異なる原理が衝突すると、おもしろいなと。
無償の趣味が尊いんだ、ビジネスや仕事が汚いんだ、と言いたいのではなくて。ビジネスじゃないと、大きなビルは建ちませんし、高機能なスマホも開発できませんからね。内容と、仕組み(取引形態)の相性って、あるもんだなあ、という学びです。

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