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2種類の個人事業主/くれくれ氏はジリ貧/くれくれする理由

佐藤ひろおです。会社を休んで早稲田の大学院生をしています。
三国志の研究を学んでいます。

「人生、お金じゃない」
「お金の話ばかりするひとは、さもしい」
という価値観がある一方で、みんなお金のことが気になる。目を背けながらもお金の増減に無関心ではいられないんですね。※構造的にお金に無頓着であることが許された、お金持ちの子供は除く。

「お金は、人生に通じる」
というと、やっぱり「お金じゃねえんだよ」と言いたくなるわけですが、この問答は的外れです。なぜかと言えば、人生のあらゆる経験や、人間同士の関係を単純化し数値化したものがお金なんです。人生→お金の順ですから、お金が人生に似ているのは当然なんですよ。

「このレプリカは、本物に似ている」というと、「本物のことを、侮辱するんじゃねえよ。本物はレプリカとは違うよ」と言いたくなりますが、この物言いがまるごと無効なのは、レプリカが本物に似せて作られたものだから。共通性があって当然だし、共通点を指摘しても、それは本物に対する侮辱にはならないんです。

個人事業主は、信頼関係がそのままお金の増減に繋がるので、「人生、お金じゃない」とか、「人生をお金にたとえるな」というタブー性や迂遠さが少ないと思います。サラリーマンより比喩が密接というか、比喩どころの騒ぎじゃなくて、直結してます。ひととの付き合い方が、お金の授受にそのまま表れてくる。

このへん、サラリーマンは、「お金のない世界」に生きている属性なので、人間関係とお金を分断したがります。他人とお金を授受するのって、「ランチをおごる」とか「飲み会の代金を立て替える」ぐらいなので、ママゴトにもなってないわけです。

個人事業主どうしの関係で、サイテーなのは、「私にもってくる案件、私に紹介する人物は、『早い・安い・美味い』限定でお願いします。それ以外は、受け付けません」というやつ。
私の時間・専門性・注意力は超貴重ですから。すぐに儲からない案件、ちょっとでも金額が不利な案件、リスクが発生する案件は、私に持ってこないでくださいね!!
私は人脈を選ぶ側です。すぐに私に得をさせない人物、私に何らかの「持ち出し」をさせる人物、わずかな可能性でも私に損をさせるかも知れない人物は、紹介しないでくださいね!!と。

引用回数おおいビジネス書に、『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』があります。「くれくれ」さんのことを、テイカーと呼び、他人から受け取る一方だから、ひたすらトクをするかと思いきや、ジリ貧になりますよと説いています。
そして、テイカーの反対、ギバー(与える人)が成功するよと。

会社のなかでも、ノウハウを受け取るばかりで囲い込んだり、仕事を手伝わせるばかりの人っていますよね。嫌われますけど、クビにならない。それが自営業者だと、より顕著に差となって現れる。

ぼくは近日、テイカー氏とぶつかって、話がぜんぜん噛み合わなくて、「いったいどういうことだ?何をそんなに怒っているんだ?」っていうのが理解できなくて、長く会話しちゃったんですね。
徒労。疲労。
根本的なマインドが、生粋のテイカーさんなら、何をどう伝えたって、ダメなのでした。自分が1ミリでも損をしうるもの、1ヵ月でも「持ち出し」状態に置かれることに、我慢がならないわけです。もっぱら、「早い・安い・美味い」案件だけ受け付けていまぁす!!「早い・安い・美味い」人物だけ、自分が望むかたちでのみ紹介してもらいたいわけなので。「お互いさま」「持ちつ持たれつ」「この前は上位者を紹介しましたよね。だから今回は、下位者の面倒をみてあげて」は、受け付けてないんですね。

テイカー氏が、強欲で邪悪で自分勝手なだけの人間かというと、そうじゃないと思うんですよ。というか、本人は「それ以外に方法がない」から、テイカー然と振る舞っているわけです。
なにが、人をテイカーにするか。
体力がないと、ひとはテイカーになります!!

テイカーの反対側、ギバー(与える人)さんは、関与する案件、紹介を受けた人物との関わりが「早い・安い・美味い」の反対になりがち。とくに最初は「遅い・高い・不味い」が顕著。
仕事を請けたり、ひとの世話をしても、すぐに見返りがない。業務遂行や関係構築で、苦労するかもしれない。労力や時間、ノウハウをシェアしても、持ち逃げされるリスクがある。これが、「遅い・高い・不味い」の地獄の3拍子だと思います。
この「遅い・高い・不味い」という状況にしばらく耐えることをヨシとしているのが、ギバー(与える人)です。

「トータルで、ギバーが最大の信頼とお金を得られる」
というのは、上の本が言うとおりでしょう。
ただし、フランクで性格が開放的、上機嫌なギバーでいるには、「遅い・高い・不味い」を持ち堪える、強き体力が必要です(後述)。強力な持てるものが勝つって、それ何も新しいこと言ってなくないか?
体力がなければ、テイカーにならざるを得ない。ジリ貧ですけど、死ぬよかマシか!!ってことで、目をギラギラさせます。

「遅い・高い・不味い」に耐える体力とは、文字どおりの身体的な力(健康さ、休息をとれる環境)がまず該当します。
経営体力、つまり一時的な現金の持ち出しができ、お金を貸したり、投資に回したりしても、破綻しないだけの豊かさも必要。
専門性の高さも、経営体力と言えましょう。客観的にみてスキルやブランドの価値が高く、ちょっとノウハウを見せただけでは盗まれない独自性。主観的に自信と誇りがあるのも体力です。四六時中、盗まれないかと汲々と懼れ、周囲を泥棒あつかいするのは、体力がないからです。案件も人間も去っていきます。
「同業他者と意見交換したり、手の内をさらしあうことで、かえって互いに高め合ったり、気づくことがある」というメンタリティも、強さであり体力です。企業が工場見学をさせますが、あんなイメージか。※全部さらすのがよい、という意味ではないです。戦略に基づくべき。

体力がなければ、ひとつの商品、ひとつのイベントごとに、個別会計で、外れなく黒字を重ねていくしかない。個人事業主で主人の体力が尽きたら廃業です。「早い・安い・美味い」案件だけをよりわけ、それ以外に敵意を向けるしかない。資金ぐりが悪化したら、こちらも廃業。「早い・安い・美味い」仕事だけを請けます。
性格が悪いから、先見の明や戦略性がないから、テイカーになるんじゃないです。テイカーのスパイラルは、わりと根深い。

「損して得とれ」は、無定見にお金をばらまけというのではなく、個別のサービスは赤字でも、おおきなチャンスに繋げ、数ヵ月~数年のスパンで儲けを回収することを指します。
人間関係も同じで(仕事を運んでくるのは人間ですから、仕事と人間を区別する必要はないが)、目先では、教えてあげる・世話を焼く・苦労をさせられることがあっても、やがて返報が期待できるなら、寛大に待てるんですね。個々で取りっぱぐれても、トータルで黒字をめざせます。

精神論で「テイカーになるな、ギバーになれ」というお説教が有効なのは、サラリーマンのオフィスだけ。サラリーマンは、一定の契約のもと「お金の外部」で働いているので、業務の請け方、人との関係の結び方は、気の持ちようがすべてです。
「オレの給料は、うちの課長が払ってるんじゃねえし」
という発想がはびこり、そして実際にそうなので、サラリーマンは「お金の外部」に置かれています。人数は多いし、会社に不可欠ではあるが、経済界の中心じゃないんですね。※ぼくはサラリーマンです。

個人事業主は、仕事の請け方・人間関係の築き方は、そのまんま生物としての強さと健康に繋がる。お金の流れ・余裕とイコールです。ですから、「くれくれのテイカーは、ダメだ。周囲から人が去って行くし、関わった人が不快を味わっているよ。もう二度と紹介はこないよ」と言われたところで、健康問題や資金問題を解決しないと、気の持ちようでどうにかなるものじゃない。お説教もムダです。

今週たまたま、タイプの違う個人事業主と話す機会があって。あまりに態度が違うし、話が噛み合わないところがあったので、考えてみました。ぼくはサラリーマンですけど、「お金を貯めて休職」しており、身体的な休息はとりまくりだし、お金も困ってないので、ギスギスせずに、ノウハウを気安くシェアできるひとを目指してます。

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