専門知識を伝える3つのチャンネル

佐藤です。じぶんが詳しいことを他人に伝えるときに、相手の段階やニーズ・好みによって、3つの方法・方向性(チャンネル)があるなと思ったので、書きとめておきます。
よく、「賢いひとは、難しいことを簡単に伝える。賢くないひとは、簡単なことを難しく話す」といいますが、これよりも、もうちょっと解像度を上げて分類してみようと思います。

1つめ、専門家同士の会話。これは、同じ企業の同じ部署のなかでの会話、大学教員と大学院生のなかでの会話です。ピラミッドにたとえるならば、上のひと握り。
ただし、「上ならば偉い」ということはない。みんな、自分の興味がある分野、仕事にしている分野、研究している分野においては、ピラミッドの頂点部分に属している。

2つめ、専門家の予備軍への会話。これは、新入社員の教育、大学院に進学希望の学部生への指導などが該当します。1つめに比べて、内容のレベルは落とすけれども、潜在的にピラミッドの最上部に上ってくるかも知れない相手だ、同朋だ、という了解が双方のあいだにある。
ぼくは三国志を専門としていますが、「三国志を勉強することのおもしろさを発信したい」というような催し物をするときは、2つめの伝え方をしているのだろう。三国志の勉強のノウハウ本が、ぼくが書いた本のなかで一番売れておりますが、これに当たる。

3つめ。その分野を極めるつもりはサラサラないが、どんなもんなのか、大雑把に短時間でつかんでおきたい、という相手への説明だ。会社のなかでは、他部署への説明。大学ならば、「うちの研究室に来る予定のない学部生」への講義など。
ピラミッドでいうと、中下層にあたる。第1の分類の人々が求めている個別的な知識はノーサンキューだし、第2の分類で求められている調査のノウハウもノーサンキュー。おもしろさとメリットだけを、さっくりと持って返りたい。一般化でき、他分野と繋がるパーツだけがほしい。
たとえば三国志ならば、ひとつひとつの事件、ひとりひとりの人物について話を聞きたいのではなく、「三国志とは何か?」「発端と結末は?」「どこが面白いの?」だけが欲しい。
そこそこ成功している(お金を得ている)発信者は、この中下層へのリーチがうまいひとだ。なぜなら、人数が多いから。

三国志ならば、「好きを語る」オタクたちは、第3の人々に、第1・第2の方法をいきなり伝えるから、ドンビキされるのだろう。ピラミッドの最上位に登るためには、調査方法や勉強それ自体のおもしろさ(第2の階層)を把握した上で、地道な調査による知見の修得(第1の階層)が必要だ。それはそうなのだが、それを第3の階層に強要するから、逃げてしまう。youtube動画ならば、第3の人々に届けば、「チャンネル登録者が数万人、再生回数が数万回」となり、だれかの月給ぐらいの収入が得られる。

上に書いた、「難しいことを簡単に説明できるひとは賢い」というとき、第2の階層への伝え方と、第3の階層への伝え方の両方が含まれているので、分類方法としては少し粗い(使いにくい)のかなと思います。

この外部に、第4の伝え方として、「興味もない、縁もゆかりもないひとに伝える」という方法があるだろう。
たとえば、ぼくはダンス・パフォーマンスにちっとも興味がないけれど、Tik Tokやショート動画を、ぼけーっと見てしまうかも知れない。テレビや動画のあいまの、大衆にむけたCMもこれに当たるだろう。分野の知見においては、ピラミッドの最下層どころか、ピラミッドの周辺を舞う砂粒にまで届くのが、第4の伝え方だ。これは、あまりぼくと関わりがないので考えなくてもいいかなと思ってます。めちゃキャッチーな大道芸とか、だれもが振り返る美女とかの領域ですけど、自分の三国志とは関係がないので。

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