見出し画像

つみたてNISAは詰みたてNISA

煽るようなタイトルですが至って真面目です。
長くなりましたが最後まで見てもらえれば。


前回の記事ではインフレ抑制時において株やその他の様々な資産クラスが影響を受けると書きました。
そして今、確かにインフレ率は下がっています。

お、そろそろ絶好の買い時なのでは…!?
卓球の水谷選手でさえ投資やってるし、自分も始めるべきなのかな?
こう感じてる人もいるのではないでしょうか
ですが僕は今はやめといた方が良いと思います。
これから色々書いていこうと思います。


インフレとトルコ株

いきなりですが、インフレ率と金利は次のような関係で表せます。

名目金利=インフレ率+実質金利

フィッシャー効果ってやつ。後期経済学でめっちゃ出てきたアレ。
利上げしてもインフレが抑えられない場合、実質金利はマイナスになります。そんな時に預金しているより値上がりするモノを買っておいた方がお得な状態という訳です。
マクロ経済で言う「消費の前借り」ってやつです。紹介されました?

現金として握っているよりはマシなんですが。
勿論株は実質金利が低いとプラスになります。

今のトルコの場合、インフレ率が59%、名目金利が30%なので実質金利はなんと-29%。つまり、年間29%も通貨の価値が下がることを意味します。
びっくりぽん。
以下はトルコ株のチャートになります。

そして通貨は暴落してます。絶賛投げ売り状態。
なので株は通貨の下落分底上げされてると考えるべきかと。

上方向がリラ安だよ

実はインフレとリラの減価はずっと前から起きています。
エルドアン大統領曰く「利下げがインフレを抑制する」らしい。
利上げした中銀総裁を更迭、その後利下げしてリラ安を招いた総裁も更迭しています。
…どういうお笑い?
トルコ大統領、中銀に利下げを助言 | ロイター (reuters.com)
【NHK】トルコ 通貨リラ下落で何が起きているのか | NHK

通貨暴落、インフレ、高い失業率、積み上がる政府債務…
もうむりぽ\(^o^)/オワタ
エルちゃん曰く「心配しなくて大丈夫」らしい。
実質金利がマイナスの状態は十分引き締まっているんだって。
投資家はこういう状況を見て安心してリラを空売りすることができます。


米国株と実質金利

トルコはまぁ例外なんですが、話をアメリカに戻してみよう。
もう一度貼りますが、インフレ率は下がっています。

市場の期待インフレ率も下がっています

今FRBが操作しているのは名目金利です。
そしてパウエル議長は金利を長期間維持すると言っています。
FOMC、政策金利を据え置き-年内あと1回の追加利上げを示唆 - Bloomberg
インフレが下がっているので、その分実質金利の上昇に繋がります。

トルコの話を思い出してもらいたいのですが、実質金利がマイナスで株価を押し上げるのであれば、実質金利がプラスの時はその逆で株にとってマイナスになってしまいます。

もうちょい詳しく説明すると、まず、株価は以下の式で表せます。

株価=1株当たりの利益×株価収益率

高金利は株価収益率にとってマイナスです。
預金しておけば金利収入を理論上ノーリスクで得られるので、わざわざリスクを背負って株を買う必要性がなくなるからです。

特に実質金利がプラスであれば、株を含めモノを買うと逆に損することになるので株式市場から資金が流出し、株価収益率が下がってしまいます。
投資家は魅力が上がった預金や国債に資金を移動させます。

また、モノが買われないと企業利益が低下するので、1株当たり利益も低下してしまいます。当然景気の悪化に繋がりますし、それは株主が得られる利益そのものでもあります。

企業利益の前年比年率(この変化が1年続けばどうなるか)はついにマイナスになってしまいました。
なおドル高は更に企業利益を圧迫させます。


デフレ?

もしパウ爺がこのまま金利を維持するのだとしたら、インフレは抑制されるかもしれませんが、逆に引き締めすぎてデフレになるんじゃないですかね…
失業率は上がり始めていて、完全に失業者で溢れかえってから引き締めを止めるのは流石に遅すぎません?

まぁ統計データは人間の都合なんか知らないのでそのまま現実を織り込んで沈んでいくしかないかと。
あ、一応簡単に言っておくとデフレはモノよりお金の価値が高い状態ね。
デフレで株がどうなるかを予想するために過去の事例を見てみよう。
世界恐慌の場合はこちら

80%のマイナス…

日本の「失われた30年」はこれ

イタリアの失業率知ってます?

つまり、数十年間含み損を抱えたままになります。
なのでYoutuberやその辺の証券マンがよく言う「長期的に儲かる」という考えはかなりマズいと思いますね。
通貨は長期的に減価するので、仮に損失を取り戻せたとしても実質リターンはマイナスになってしまいます。
(明治時代は3円払えば高額納税者扱いだったんだよ?)
そして大きく下げる前、どの場合もバブルになっていて誰もが輝かしい未来を描いていました。
世界恐慌 - Wikipedia

余談になりますが、1933年にドイツで以下のスローガンが掲げられました。

全国民にパンと仕事を!

これでヒトラー率いるナチスが台頭したのですが、その後は増税や資本統制を行い戦争に突っ込んでいきました。
太平洋に浮かぶどこかの国と似ていません?

最近だと中国の不動産バブルが崩壊しましたね
不動産は永遠に値上がりし続けると考えていたらしく、資産価格上昇に頼って老後生活を計画していた人も少なくありません。
隣の国を見てべ冷静になるべきだと思います。
中国大都市の住宅所有者が売却急ぐ、不動産は蓄財手段との確信揺らぐ - Bloomberg

ゑ…いや、でもアメリカはめちゃくちゃ成長してきたやん。
これからも右肩上がりなのでは?

確かにAppleやMicrosoftなど色々な企業が発展してきましたが、多くの企業は借金をして、それを元手に拡大を続けてきました。小難しい言葉で言うとDebt-Based Monetary Systemってやつ。
今までの成長は低金利を前提にしていたのです。

そして借りたお金は必ず返さないといけません。
金利が低い時に借りていたお金を返すために、今後少なくても10%以上の高い金利を支払う必要があります。今後倒産する企業が増える可能性が十分あり得るのではないでしょうか。
米国で過去24時間に7社が破産申請、利上げの信用収縮鮮明に - Bloomberg

高金利が続くんですよ?
ファースト・リパブリック、米史上2位の大型銀行破綻に-SVB抜く - Bloomberg


ドル円の動き

金融危機が起きたとき、景気後退によるデフレを察知してインフレ率は急激に下がります。名目金利は変わらないので実質金利が高騰するのですが、だからと言ってドルが買われることはありません。逆に円が買われます。

…ゑ?

そもそも投資家は通貨を調達し、それ売って色々な資産を買います。
通貨を調達するには金利を払う必要があります。
普通は低金利の方が良いよね…?
という訳で平常時は多くの人が金利の低い円を売って資産を買います。

ところが危機が起きると大勢の人がポジションを閉じるように追い込まれてしまいます。
多くの場合レバレッジ(借金)をかけて手持ちの金額以上の資産を買うのですが、その逆回しが起きるので資産の投げ売りが起こり、怒涛の円買いが起こります。
すると金利は意味を持たなくなってしまい、急速な円高が起こります。

下方向が円高だよ

リーマンショックの事例です。
本当は青線と連動していないとおかしいはずですが、そんなこと言ってる場合ではありません。
皆が円を買うので円の価値が上がります。
これが「有事の円買い」と言われるやつです。

似た言葉で「有事の金買い」というのがありますが、この場合は値下がりすることになります。
金は安全だと思われがちですが、景気後退によるデフレは需要減少を意味するので売られます。そして国債はリスクオフで値上がりします。
これが投資の厄介なところ

話を戻します
今盛んに宣伝されている米国株のような外貨建て資産に投資している場合、円建てで大きなマイナスになってしまう可能性が高いです。
ドル建てだから大丈夫ということはないです。
安心と安全は全くの別物ですよ!?

もしドル建て価格の上昇に賭けたいのであれば、買いと同額分ドル円を空売りすべきです。
買いポジで円を売り、ドル円で円を買うので実質ゼロになりますからね。

なお、現在のドル円と実質金利はこちら。

上方向が円安だよ

確かに円安に振れているのですが、実質金利の上昇の割に上がってない…
米株なら安心と思い込んでいる人は大丈夫?


相場が下落する順番

何度も言いますが、インフレ抑制のために引き締めを行っており、世の中に存在する資金を吸い上げています。

マネタリーベースについては今年の春に回復しましたが、また下落に転じています。
一時的に上がったのは、銀行が次々と破綻したのでパウ爺が臨時で資金を供給したからです(BTFPと言います)。
※BTFPは遅くても1年以内に返済する必要があります。

資金が足りなくなると市場を持ち上げることができなくなって下がってしまうのですが、これには順番があってリスクの高い資産から売られていくことになります。
誰だって良いものは最後まで握っていたいよね。
そして売って得た資金を別のところに移動させます。
skmt先生が仰っていたメキシコとアメリカの例を考えてもらえれば。

リスクの高いものから順に新興国、日本や欧州、米国と思ってもらえれば大丈夫です。
また、株で言えば大型株より小型株の方が先に売られていきます。
先進国を買おうが、全世界にしようが結局同じように動いてしまうので分散にならないです。

ここで現状を見てみよう。
まずは新興国から

新興国の塊みたいなやつです
先行利下げしているベトナムでさえ下落

次に日本と欧州

強気派の人大丈夫そ?
小型は既にダメそうですね
ドイツ怪しそうですよね
ちなみにPMI42

最後にアメリカ

2022年の頭に届かず跳ね返されてるね
小型かなりマズくないですか?

米国株と言うと真っ先にS&P500を思い浮かべる人もいるかもしれません。積み立てNISAでよく聞くアレです。
ですが企業全体の中から500社集めただけなので、米株全体を見るならニューヨーク証券取引所も見ないといけないですよね。

多くの人が手を出すようになってバブルになってません?
まぁいいや
新興国や小型株は下げ始めていますが、誰でも知ってるような銘柄はまだ下がっていません。ですが本格的な下落はこれからだと思います。
NISA民を含め買いオンリーの人は大丈夫なのかめっちゃ疑問。
空売りしないの?


スタグフレーション?

本当ならここで終わりにするはずなんですがもうちょい我慢して。
実は今、ややこしい事態が起きています。
インフレ率が下がっていますが再びインフレが懸念されています。サウジアラビアの減産がついに効き始め、原油価格が上がっています。

まぁインフレ低下はマクロ経済で言う需要低下を意味するので減産は一理あると思います。
あとはアメリカに対する経済措置みたいな意味合いもあるかと。
サウジが予想外に自主減産3カ月延長、ロシアも続く-ブレント原油上昇 - Bloomberg

スタグフレーションは景気が悪いのにインフレが続くという特殊な状態です。1970年代のアメリカで一度起きたぐらいの稀な状況です。
これもskmt先生仰ってたよね?
インフレを察知するなら株上がるんじゃないの?
ところがどっこい
ヨコヨコの時期が続いてしまいます。

ヨコヨコなんだから別に損してないじゃん?
いいえ、額面は変わらなくても実質的に大損しています。
繰り返しになりますが、インフレとはお金の価値が下がることです。
この期間にドルは60%以上減価しています。
そしてインフレが収まらないと多くの人々が考えた結果、貴金属や農作物が暴騰しました。

その後インフレは無事退治できたのですが、その理由をskmt先生は原油価格の暴落を挙げて説明していました。
当時原油価格はOPECが決めていて、3ドルから10ドルに釣り上げたことでインフレを押し上げました。そう、オイルショックです。

ここでまたマクロ経済が出てきます。
需要と供給のお話です。
原油高になれば普通は採掘企業がそれに反応し、設備投資などを行って原油増産を目指します。
誰だって高く売れるなら多く売りたいですよね。

実際にノルウェーの北海油田だけでなく、東南アジアの様々な地域でも採掘されるようになったため多くの原油が市場になだれ込み、最終的に原油価格が暴落してインフレが落ち着きました。
skmt先生曰く「人々の行動は長期的に変えられる」らしいです。

ですが、個人的には現在の人々の行動を長期的に変えることができない状況だと思います。


不吉な時代へ

まずは前提となるお話を
原油にも種類があって、例えば硫黄分に着目すると含有率の低いスイートオイルと高いサワーオイルに分けられます。前者はアメリカが、後者はサウジとロシアが生産しており、サワーオイルは脱硫過程が必要な分安価なのが特徴です。
この違いが精製方法の違いに繋がります。

アメリカは自国で採掘したスイートオイルを輸出し、輸入したサワーオイルを国内で精製している国です。要は少しでも高いものを売り、少しでも安いものを買うことで利益をあげてきました。
ですがこれから減産が続く場合、自国で生産される原油から需要をまかなう必要が出てきます。
アメリカ国内の工場はサワーオイルに最適化されているので、自国のスイートオイルを精製することは得意としていません。
精製プロセスの仕組みが異なるので、むしろ無理に増産しようとすると設備の老朽化を急速に進めてしまい生産量は激減してしまいます。

じゃ設備を新しくすれば良いじゃん?
ところがどっこい
業者は新しくするお金が手に入らないのです。

今「投資の新トレンド」とか言ってESG投資というものが盛んに宣伝されていますが、実はこれを通して環境に配慮する企業に投資するのと同時に原油採掘業者への融資を制限しています。
結果として中小企業はエネルギーが生産できなくなり、エコな人々のせいで再びインフレの可能性が高まっています。
投資の新トレンド「ESG投資」とは?環境や社会に配慮する企業が成長する | 三菱UFJ銀行 (mufg.jp)
COP26・’21グラスゴー:全化石燃料、公的融資停止へ 20カ国合意、日本不参加 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

大手企業は設備投資を行うのではなく自社株買いを行っています。
これは株主にとってはありがたいのですが、それ以外の一般市民からすると超つらたん。
また、サウジはNEOMという巨大都市開発に向けて資金を集めています。
1バレル90~100ドルにならないと採算が取れないと言われてますね。

…ゑ、誰も設備投資してないやん
\(^o^)/オワタ

個人的な意見ですが、このような背景があっても景気後退に入れば一時的に原油も売られてしまうと思います。ですがファンダメンタルズが変わらない以上長期的に値上がりすると思います。
ちなみに原油価格が上がると輸入頼りの日本の貿易収支が悪化すると予想され円は売られやすくなります。

それ以外にも今年はエルニーニョ現象により農作物の値上がりが懸念されています。
景気が抑制される気配を察知するとコモディティは真っ先に値下がりするはずですが、オレンジシュースの価格は上昇し続けています。

エルニーニョで世界のスタグフレーションリスク増大か、4年ぶり到来 - Bloomberg

中銀はインフレを完全にコントロールできないのではないでしょうか。


結論

長くなりましたが今までのをまとめると、ただ単に株を握っていれば良い時代は終わったという訳です。
一発でデフレになるのか、あるいはスタグフレーションに突入するのかは分かりませんが、これからの将来が今までと同じようになると思わない方が良いと思います。
個人的には短期的なデフレ、長期的なインフレを予想していますが。

どこかの国のばら撒きメガネの口車に乗せられてつみたてNISAを始める必要は全く無いですし、資産運用を考えるなら他のものになるかと。

名前は忘れた

毎年200万もの借金を積み上げながらNISAに突っ込んでいる人を見るとすごく心配。自分が何に賭けてるのか分かってます?

まぁ人には信仰の自由があるので止めはしませんが。

ひろ理ん的には買いしかできない時点で詰んでいるように見えます。

最後に、世界三大投資家のジム・ロジャーズ氏は次のように述べています。

歴史、数学、哲学を学べ
そうすれば大部分は人々の先に行ける

また、このようにも言っています。

歴史から学べるのは、人々は歴史を学ばないということだ

人間は賢くても人々は愚かだということですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?