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魅惑の純レバ

前々から憧れていた「純レバ」なるものを食べに行った。

「純レバ」が気になりだしたのは、ミュージシャンの槇原敬之さんが「美味しいのよ〜、純レバなのよ〜」とTVで言っていたからだ。以降もネットなどで紹介記事を読み「いつかきっと」と心に決めていた。

そしてついに時は満ち、暮れの寒風吹き荒ぶ中、わたしはその店の暖簾をくぐった。

店内はカウンターとテーブルが二つ、こじんまりとした店だ。厨房ではおばちゃんが一人、燃え盛る火を相手にフライパンを振っている。注文してもいいのか…と戸惑うほどの人手不足状態だが、おばちゃんが「何にする?」と聞いてくれたので無事「純レバ丼」を頼む。

さほど待つこともなく運ばれてきた純レバ丼には激しくネギが載せられていた。それをかき分けると茶色くギラめいた純レバがいる。おお……とイメージ通りのルックスに喜びのため息を漏らしながら、ひと口。……また一口。

味もイメージ通り…と思ったその瞬間、背後から辛味痛感大王が襲ってきた。いかん!これは大人の食べ物だ!

わたしは極度の猫舌で辛味にもかなり弱いのである。この辛さはたいがいの大人には旨味となるのだろうが、わたしには無理であった。わしわしと純レバをかっこむヲタメとJに後はまかせて、ビールと紹興酒をひたすら飲む。
舌が痛い。わたしもわしわししたいのに…。

お会計の時に、おばちゃんが厨房からでてきて「あんたたち奥にいたおじさん知ってる?」と聞く。わたしたちは初来店だったので「?」となっていると「先週、死んじゃってさぁ。」といきなり言われた。ええっ?知らない人だけどそれは驚く。だからおばちゃんが一人で何もかもやってたのか…。

「あっけないもんだよねぇ…」と
おばちゃんは言う。そりゃあそうだ。それまで一緒に働いていた人が急に
身罷るなんて。ご本人だって
そんなつもりはなかっただろう。
だがそれは誰にでもありうることだ。「死」というのは唯一誰にでも
公平に与えられたものだから。

店を出ると満月が輝いていた。
近くにはいい雰囲気の銭湯があった。
暖かくなったらまた来たいと思う。
その時は天津丼にする予定。


#町中華
#純レバ丼
#千束
#浅草

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