仙台89ers:2022-23シーズン 今シーズンの通信簿
B1初年度以来、6季ぶりにB1の舞台で闘った仙台89ers。まずは今後B1へ定着するためのステップとしての「B1残留」というミッションは19勝41敗という成績でもって全体順位21位で達成することができました。そんな今季の仙台89ersの各選手について、毎度僭越ではありますが選手一人一人の今季のパフォーマンスなどから採点などをしてみたいと思います。
シーズン開幕前のロースター展望はこちら(途中加入のスティール、青木、渡部のインプレッションはございません)。
それでは背番号順に見て参りましょう!
0:小林遥太
総合4.0 オフェンス4.0 ディフェンス4.0
小林本人も脳震盪等での少しの離脱はありましたが、渡辺の負傷長期離脱があったりでシーズンほぼフル回転。前所属名古屋Dでは新星齋藤拓実にプレイタイムを譲る形でベンチウォーマーになっていましたが、まだまだ主力として活躍できる力があることを証明してみせました。ちょっとコート内を落ち着かせたい時に見せる冷静なボールハンドリングやディフェンスではスイッチで対峙した長身選手にも臆さず粘っこく対処するさまには光るものがありました。ペイント内にするする入り込んで決めるフローターは職人芸の域でしたし、高いFT決定率やクラッチタイムでたびたび決める3Pもとても印象深かった。
2:小寺=ハミルトン・ゲイリー
総合3.5 オフェンス4.0ディフェンス3.5
仙台だけでなくBリーグ随一の愛されキャラ。オフェンス時のポストアップからの我々黄援する観客すら欺くマジカルパスで周囲を活かすプレイや高いバスケIQはとても魅力的でしたが、仙台においては使い所が少し難しかったのかな、という印象。特にディフェンス面で帰化枠・アジア枠にビッグマンを置いて外国籍にPG〜SFのスピードある選手がいるクラブに対峙するのがちょっと辛くなっていたところがありました。でも小寺がゴール下に鎮座するゾーンディフェンスではさすがの存在感だったし、バーレルがファウルトラブルに陥った時にはペイント内で奮闘してくれました。
6:岡田泰輝
総合3.5 オフェンス4.0 ディフェンス3.5
シーズン序盤はB1の強度に苦労していたようなところはあったものの、ヤングオールスターで存在感をはなつと、シーズン後半はオフェンス面ではB1の強度にもだいぶアジャストできてきていました。しかしディフェンスではB1で名を轟かす名選手そろいのSGというポジション的に、そんな選手たちとのたちとのマッチアップには苦労していたようで、今後更なるレベルアップが必要でしょう。それでもディフェンスにまだ残る拙さを補って余りあるオフェンススキルは指揮官に信頼されていた模様で、同じ若手の寺澤や渡部と比べるとコンスタントに起用され、実は日本人選手としては唯一全60Gameに出場していたのでした。個人的には渡辺、渡部とともにこれからの仙台を背負って立っていってほしい選手です。
7:澤邊圭太
総合4.0 オフェンス4.0 ディフェンス4.5
今季のワタクシ的MIP
シーズン序盤は昨季末のけがの影響があったのかどうか、ちょっと周囲と噛み合わないことが多くミスが悪目立ちしてしまいプレイタイムをあまり得られていなかったものの、シーズン後半になると元来の持ち味の鋭く切り込むオフェンスに磨きがかかり効果的にスコアリングできるほどに大きな成長を見せました。仙台のファン・ブースターはきっとみんなこれを待っていたはず。加えてオフェンス以上にB2時代からさらにレベルアップした粘り強く激しいディフェンスをやりきることで指揮官の信頼を自ら勝ち取り、B1でやっていく力が十分にあることを示したのでした。
10:寺澤大夢
総合3.0 オフェンス3.5 ディフェンス3.0
なかなかプレイタイムがなくベンチ入りも少なかったところに、同ポジションに渡部が特別指定で加入したこともあって、シーズン途中で山形へ期限付き移籍。日本人選手としては屈強なフィジカルを持っていたり、スキルフルな外国籍選手にも物怖じしないメンタルなどポテンシャルの塊で寺澤の活躍に期待し出番を心待ちにしていたファン・ブースターも多かったと思います。しかし限られたプレイタイムの中でそのポテンシャルをまだ引き出しきれなかったのは、引き出すような采配ができなかったチーム事情だったとはいえちょっと寂しかったのは否めません。
11:ベイリー・スティール
総合4.0 オフェンス4.0 ディフェンス3.5
トーマスのIJリスト入りを受けてB3の横浜EXから短期契約で加入するも、エゴを見せない真摯なプレイぶりと端正なルックスも相まって、たちまち仙台ファン・ブースターの心を掴みました。前所属はB3クラブだったものの、インサイドアウトサイドどこからでも得点を狙えるスタイルはトーマス不在の穴をしっかり埋めてくれて、十分にB1でもやっていけるレベルだったと思います。Away富山戦で大型連敗から脱出したことをはじめ、スティールの加入期間だけで4勝(特に残留を争う富山から1勝、滋賀から2勝)を挙げることができ、結果として仙台がB1残留を果たす原動力となりました。
12:寒竹隼人
総合3.5 オフェンス3.5 ディフェンス3.5
今季もプレイタイムはあまり多くない中、オンコート時は果敢に3Pシューターとしての役割を果たそうとするも、過去のシーズンと比べると決定率が今一つだったのは少し寂しかった。しかしAwayでの千葉J戦では全盛期のように3Pを何本も沈めて千葉Jの連勝を止める原動力になったことや、相手のビッグラインアップに対して上背を買われて奮闘するシーンは印象的深かったのですが、ベンチからチームを鼓舞する時間帯が多くてはシュートタッチやコンディション維持も難しかったでしょうか。
14:青木保徳
総合4.0 オフェンス4.0 ディフェンス4.0
シーズン途中に広島から異例の電撃完全移籍。ルーキーからの数シーズンは所属先でプレイタイムがなかなか得られず雌伏の時を過ごしていた模様。渡辺負傷でPG不足に陥っていた仙台では加入当初から多くのプレイタイムを獲得、水を得た魚のように活躍。特に負けん気の強さでもって相手ディフェンスに立ち向かうオフェンススキルは小林や渡辺のそれともまた違う味を見せ、青木の加入がシーズン後半に持ち直した要因の一つでおそらく間違いないでしょう。
15:渡辺翔太
総合4.0 オフェンス4.0 ディフェンス4.0
昨季終了後は公私共に充実したオフを過ごし、今季は正PGとしての地位を固めてB1にその名を轟かすシーズンになるかと期待していました。果たしてB1のなみいる強豪クラブにも怯まず挑み攻守に持ち味を発揮して期待に違わぬプレイをしていた序盤戦でしたが好事魔多し。ホームの横浜BC戦でまたしても残りシーズンを棒に振る大ケガをしてしまう不運に見舞われてしまうことに。完治しプレイできる時期の目処も未だ立っていない模様で、だからといって今オフに放出することは少し考えづらいところはありますがどうなるものか・・・。個人的には仙台89ersでの来季の大復活に期待したいところです。
21:渡部琉
総合3.5 オフェンス4.0 ディフェンス3.5
これまで秋田、広島でも特別指定選手として活動していましたが、今季は仙台へ特別指定選手として加入。過去の例からすると大学卒業とともに特別指定から選手契約に切り替わっているはずで、来季終了までの契約は結んでいると思われます。大学時代はサウスポーから繰り出す高いオフェンススキルでゴールを量産していたウィンガーとして活躍していた模様ですが、プロの舞台では仙台自体が厳しい闘いが続いていたこともあってなかなかプレイタイムを割いてもらえない日々が続きました。しかしB1残留の目処が立ち始めた最終盤になるとプレイタイムも増え、オンコート時はそのセンスと持ち味の片鱗を見せてくれました。来季はもっとプレイタイムとゴールを増やして仙台の未来を背負って立つ選手となってほしい。
24:ジャスティン・バーレル
総合4.0 オフェンス4.0 ディフェンス4.0
昨季加入し、B2ではそのパワフルなプレイでインサイドを攻守で支配していましたが、B1では千葉のムーニー、琉球のクーリーなどを筆頭にB2時代からはさらにレベルが上かつ上背のある選手たちとの対峙ではなかなか思うようにいかないことも多かったでしょうか、インサイドで持ち味を発揮しきれないシーンもしばしば見られました。それでもキャリアあるベテランかつキャプテンとしてチームを引っ張り、理不尽なジャッジ等があってもグッと自制する姿は頼もしかったし、会場の雰囲気をガラッと変えてしまうBリーグで一番かっこいいと思うボースハンドダンクの威力はいまだ絶大でした。
25:ラショーン・トーマス
総合4.5 オフェンス4.5 ディフェンス4.5
今季のワタクシ的MVP
シーズン序盤はPSMのTOHOKU CUPでいきなり腰周りを痛めたり、シーズン途中には指の骨折とケガに悩まされる時間も多かったですが、出場時にはシーズン当初の期待通りのスコアラーとしてチームを牽引、チームとしてのバスケを遂行する仙台の中にあって、個の力でも打開しゴールに持ち込めるスキルはとてもありがたかった。特にケガから回復して以降の終盤3月4月は八面六臂の大活躍で、スティールが引き寄せてくれた残留への流れを確固たるものにしてくれました。一方、オフェンス時には少しばかり前に行こうとする気持ちがつんのめってTOとなってしまうことが多かったので、もう少し周囲を使うなどして打開できればそこも減らせそう。また長い手を活かしたスティールもとても上手でディフェンススキルも高い得難いオールラウンダーでした。
30:田中成也
総合4.0 オフェンス3.5 ディフェンス4.5
トーマス同様今季はケガに悩まされた時間が多かった。しかし、指揮官の信頼が厚い優れたディフェンス力で仙台のスタイルを体現する選手として貢献度は非常に高かったと思います。仙台での2シーズンで更に成長した、日本人選手だろうが外国籍選手だろうが相手エースを封じてみせるディフェンス力は仙台になくてはならないものでした。2季前の広島で味わった悔しさは今季はクラブの中心選手として活躍するほどの自らの成長で晴らすことができたでしょうか?ただしっかりしたディフェンスからというチームのスタイル的に仕方ない面もありましたが、オフェンスでの貢献という面では要所で得意の3Pを決めたり、隙を狙ったペネトレイトなどのゴールは時折り見られたものの、シュートアテンプト自体があまり多くなく、少し物足りなかったのも事実でした。
31:加藤寿一
総合3.5 オフェンス4.0 ディフェンス3.5
シーズン序盤はスターター起用も多く、ベテランらしい気の利いたプレイと多彩なスキルでチームに貢献し、さすがのアイシンブランドと思える活躍を見せていました。精度の高いコーナーからの3Pや端正なルックスとは裏腹な泥臭く粘り強いディフェンスなどは絶品。しかしその激しさもあってシーズン途中に何度か負傷したり、終盤はコンディションが整わないことが多かったでしょうか、ベンチから外れることが多くなっていましたが腐る素ぶりも見せず、Game前のシューティングで他の選手のサポートをしながらファンサービス的に観客とコミュニケーションをとったり、Game中はベンチ脇や後ろからベンチ全体を鼓舞し盛り上げていたナイスガイ。
45:ネイサン・ブース
総合4.0 オフェンス4.5 ディフェンス4.0
ビッグマンながらアウトサイドからのオフェンスを主体とするストレッチ4を得意とし、期待に違わず3Pを量産。中盤以降は疲労もあったでしょうかタッチが合わないGameもしばしばみられたものの最終的にはランクイン要件を満たして3Pランキングで10位につけました。シーズン序盤では日本のバスケへアジャストしきれていないところからイージーなミスが結構多く、ちょっと心配に思ったところもありましたがそこは次第に改善。終盤には得意のアウトサイドでのプレイだけでなく、インサイドでも過去のスタッツからするとあまり多いとは言えなかったリバウンドやブロックなどで存在感を見せたり、ダンクを叩き込んでみせるシーンも多くなり、このレベルの選手でもまだまだ成長することができるのだと示してくれました。また意外にタフネスさを見せて今季60Game全出場にして平均プレイタイムはチームトップでした。
91:片岡大晴
総合4.0 オフェンス4.0 ディフェンス4.0
仙台の顔として今季も安定の活躍。年齢的なものを考えると毎季終了後の去就が気になる選手の一人ではありますが、衰えを見せることなく円熟味を増すプレイぶりには舌を巻くばかり。今季もプレイタイムこそそこまで多くはありませんでしたが、ひとたびコートに上がればほしいところでの3Pやスルスルとバックカットから忍者のように事もなげにシュートを決めてみせたり、闘志溢れるディフェンスで相手選手に喰らい付いたりなど、たとえどんなに苦しい状況にあっても自らのプレイでチームを鼓舞していく姿には本当に頭が上がりません。
HC:藤田弘輝
総合4.0
就任初年度にして仙台をB1昇格に導き、久しぶりに仙台が挑むB1での今シーズンも指揮。初戦で京都から勝利をあげ思ったよりいけそうかな、と思わせてくれたシーズンもその後は苦戦続きで、昨季から作り上げてきた「仙台89ersらしさ」の象徴でもあるインテンシティ高いディフェンスはB1においてもしっかり機能させられていましたが、オフェンスの方はやはり他クラブと比べたときの精度の悪さは如何ともし難かったでしょうか。熱さ全開のベンチワークは今季も健在で、熱さが高じてベンチテクニカルからの1Game出場停止になったこともありましたね・・・。しかしこの藤田HCの熱さと戦術眼なくして、他の資金力や個の能力に勝る他のB1クラブを向こうに回して闘い、勝利をもぎ取ることは至難の業であったことは間違いありません。来季続投については昨季同様早々に発表されましたが、まずは今季仙台89ersをB1仕様に作り上げた手腕で来季はどこまでレベルアップさせることができるのか楽しみで仕方がありません。
◯最後に
PSMのTOHOKU CUPでは1回戦でB3所属の岩手に力負けするなど、開幕に当たっての不安を抱えながらも、開幕後の2節は京都と三河からそれぞれ1勝ずつを挙げるなど上々のスタートかと思いましたが、Home開幕戦の宇都宮のエース比江島に「B1で闘う個の力」を見せつけられクラッチタイムで2Gameとも逆転負けを食らってからはなかなか苦戦の日々が続きました。毎試合のレビューや本エントリーでもしばしば触れていた通り、B1レベルのディフェンスはチームとして構築できていたものの、オフェンスはB1で闘うにはいささか個のレベルでの精度が足らなかったのと、バーレルをもってしても支配しきれなかったペイント内ポイントの少なさ、FT%の低さなどから1Game平均得点はリーグ最下位という結果に。それでもファウルも厭わぬ激しいディフェンスを遂行できたことで平均失点で上位に食い込む少なさがあったからこそなんとか残留はクリンチできた形です。
まずは来季もB1で闘えることになり、B1へ定着、さらに上位を伺うための土台はできたものと思います。来季に向けてはやはり今季度々まろびでたオフェンス面での悪さ加減をなんとか改善してほしいところ。しかしオフェンスの強化にかまけてこれまで築いてきた仙台の持ち味であり代名詞でもある「インテンシティ高いディフェンス」を失うことがあっては本末転倒ですので、来季に向けての編成も非常に悩ましいところでしょう。
来季の選手編成に向けては藤田HCの続投が早々に決まったことで、藤田HCの構想に合致する選手の獲得に向けて先手は打てそうです。ただ他のクラブと比べて資金力で奮わない仙台がどれだけ指揮官の要望に応える人材を集められるかは未知数ではあるので、その辺は志村社長はじめクラブスタッフの皆様の奮闘に期待することにしましょう。仙台としてはシーズン終了からすでに2週間ほど経過し、契約継続の選手、自由交渉公示リスト入りする選手もリリースされ、すでに来季に向けて動き出しています。来季はどんなチームになるのか、今から楽しみに待つことにしましょう。
それではまた。
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