国際経済ニュースで英語を学ぶ(第3回)

第3回:比喩で学ぶ経済英語(1)

0. 経済学と比喩表現
経済学は、アダムスミスの「Invisible Hand(見えざる手)」に代表されるように比喩表現(Figurative Language)が多い学問です。こうした比喩表現はオシャレですが、時代遅れ(old-fashioned)だと逆効果です。なので今回は、
①ネイティブチェックをかけ、時代遅れでないか確認
②2020年の海外記事から使用例を2つピックアップ
の精査をした上で、表現を紹介したいと思います。

1. 本日の表現: Low-hanging fruit
「低いところにぶらさがっている果物」
=「労せず/簡単に成果を得られるもの(something that is easy to obtain/achieve)」のことです。
下記の図が分かりやすいのではないでしょうか ^ ^

画像4

比喩に合わせて、"harvest the low-hanging fruit (最も得やすい成果を得る)"という使われ方もしますが、「労せず」のニュアンスを出すために"pick"という動詞の方をよく見かけます。では、最近の記事での使用例を見ていきます!

ワシントンポスト紙 (July 16, 2020): コロナ後の経済回復
The jobs that have returned are mostly in retail, restaurants and doctors and dentists offices. These were low-hanging fruit jobs that economists widely expected to come back as reopening began.
 
The DIPLOMAT(January 16, 2020): 米中貿易戦争一次合意
Both sides have kicked the can down the road, picking some low-hanging fruit while leaving unaddressed fundamental questions that strike at the heart of China’s economic model

貿易交渉を報じる記事においては、2つ目ののように「すぐに合意できる項目」を指して使われることが多いですね!

2. 貿易交渉における「合意」
ここで少し、貿易交渉史を話させてください。WTOの全会一致(consensus)制度に代表されるように、貿易界の伝統的な考え方は「Nothing is agreed until everything is agreed(すべてが合意されない限り 何事も合意されない)」に基づく、一括合意(single-undertaking)が原則でした。しかし、経済構造が複雑化するなか、そうした考えは「時代遅れ(outdated)」・「実現不可能(not feasible)」との指摘がなされるようになり、最近の潮流は「できるところから具体的な成果を得ること」に変わりつつあると言われてます。その流れが今後も続くのであれば、国際経済ニュースにおける"low-hanging fruit"の登場頻度は高まるでしょう。

今日も最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。書いてほしいテーマ・要望などあれば必ず反映するので、ぜひ気軽におっしゃってください!さて、次回は明後日、23日に次の比喩表現を紹介します!

(記事出典)
https://www.washingtonpost.com/business/2020/07/16/9-charts-that-show-good-bad-alarming-this-early-economic-recovery/
https://thediplomat.com/2020/01/china-us-sign-historic-trade-deal/

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