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「大規模複雑案件」を生き抜く

大規模複雑案件(Large & Complex Deal)を担当する営業職を何年か務めた。次にどうしても挑戦したい仕事があり営業職を離れるのだが、特異な経験だったので振り返ってみたい。

何度も限界を感じながら、その都度周囲の方々に助けられて何とか生き延びられた。関わって頂いた人々には感謝しかない。今後、同様に強烈な案件に挑む方にとって、何か一つでも参考や心の支えになればと思う。

大規模複雑案件とは何か

大規模複雑案件とはどんなものなのか、何故わざわざそんな名前を付けて他と区別するのか、特徴の例を上げてまず定義していく。いくつかが該当するというケースもあれば、全て該当する場合もある。

大規模
・金額が大規模
・過去に経験のない規模
・複数のプロジェクトの集合である、等。

複雑な販売物
・高度なカスタマイズ
・過去に例のない特別対応
・契約上の取扱が困難なレベルの総合的なデリバリー
・特異なため担当組織が存在しない。実現可能性にリスクがある、等。

合意困難
・法務観点で合意困難
・三社間以上の合意を要する
・契約金額を超える賠償やトラブルのリスク
・決裁プロセスが複数ある
・社内基準で承認困難
・常識を超えた予算削減圧、等。

複雑な顧客環境
・プロジェクトが流動的で先が見通せない
・座組みが混乱している
・国籍、文化、言語が異なる組織間の連携
・不確実性が多い
・複雑な社外利害関係、利害関係各社間の関係に重い配慮が必要
・座組みに政治的意図がある
・コミュニケーションが不完全、等

複雑な社内組織
・関係部署やメンバーが膨大
・営業意図とは別に会社のコミットメントや意思がある
・Finance観点で特殊な扱いが求められる
・投資判断を要する、等。

大規模複雑案件は何が大変なのか

こうした環境下では何に気をつけたら良いだろうか。やりたい事は、通常の案件と同様の提案活動だ。だが、十分に気をつけないと以下のような問題が、経験的には100%発生する。

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