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はじめての「メタバース」

 メタバース系VCアソシエイトの弘中(@hironaka_ryoya)です。今回は最近話題の「メタバース」について書いてみました。ぜひご一読ください!

Summary(60秒サマリー)

 1分でちゃちゃっと要点だけ知りたい方はこちらをどうぞ👇

・メタバースとは日本語では「仮想世界」と言われる、インターネットの次に来ると期待されているインフラ。
・最近では『Fortnite』や『あつまれ どうぶつの森』などがメタバースとして取り上げられることが多く、ユーザーはアバターを通して新たな経済活動を始めている。
・GAFAやRobloxなどの新興企業もメタバース創造にチャレンジしており、USではVCマネーも動き出した。
・With、Afterコロナでは外出機会が確実に減っていく中で、新たなコミュニティとして、メタバースがその機能を果たすだろう。

それでは本編に入ります!

第1章 メタバースとは

 1992年にSF作家のNeal Stephensonの著書『SNOW CRASH』でメタバースは初めて登場しました。メタ(meta)とユニバース(universe)の合成語で日本では「仮想世界」などと訳され、インターネットに次ぐインフラになるのではないかと期待されています。昔の人に「インターネット」の説明をすることが難しかったように、2020年に「メタバース」を言語化するのはとても難しくまだ正解がない状態です。
 そのような状態のため、多くの文章では2020年1月にMatthew Ballによって書かれたこちらのエッセイを参考に定義づけし、説明することが主流です。

 まずはメタバースの共通事項として認識されている7つの特徴を紹介します。

1 永続的 
「リセット」、「一時停止」、「終了」の概念がなく永久に続く。

2 現実世界との同期 
現実世界と同じように全ての人が同じ時間軸で生活体験をする。

3 人数無制限 
人数制限なく誰もが同一の仮想空間でイベント、場所、活動などを共有できる。
 
4 経済圏が存在 
仮想空間上での仕事が生まれ、販売、購入、投資、所有などの概念が存在。

5 仮想 - 現実、プライベート - パブリックの繋がり 
現実世界と滑らかにつながっている。

6 仮想空間同士も滑らか 
IP(知財)、ブランドなどをコンテンツ内で作成、利用でき、メタバース間での取引も可能。

7 UGC可能 
ユーザーによって自由にコンテンツを生み出せる。ユーザー同士の協力も。

 まとめると現実世界とシームレスに繋がった仮想世界で、ユーザーの自由な経済活動が許されていると解釈できます。
 現実世界では「Google」、「Instagram」、「メルカリ」などアプリに対してそれぞれのアカウントを保有しています。メタバース内では検索、投稿、購買などのユーザー体験は単一のIDで全てを利用できる必要があります。iPhoneユーザーがiOSアカウントに基づいて多くのアカウントを所有することが多いように、全てのサービスをiOSアカウントのみで利用できるような世界観がメタバースに近いものとなっています。

 また技術的な議論では、メタバースはオープンソースであり開発に関して支配的な構造があってはならないと考えられています。後述のFortniteなどはそのような観点でユーザーに対する開発の権限が少なく、メタバースとしてのパワーバランスの偏りを指摘されています。

 このようにメタバースの概念は非常に抽象的でその境界は曖昧です
ここで多くの人がメタバースと勘違いしてしまう事例を見てみましょう。

1 「virtual world」 
AIなどを利用してあたかも他の人がいるようにキャラクターが存在するゲーム。ユーザー間でのコミュニケーションがない。「meta」はギリシャ語で無限を意味し、このようなvirtual worldは単なるゲームに過ぎず無限の可能性はない。

2 「virtual space」 
Second Lifeのような体験がメタバースの前身として語られることが多いが、「空間」に過ぎずもっとユーザーの自由度が高いことが理想である。

3 「VR」 
これは体験する方法の一つであり、コンテンツによってメタバースかどうかは異なる。

4 「virtual economy」 
ビットコインなどのテクノロジーを用いた仮想-現実を横断する経済圏。これもメタバースを構成する要素の1つ。

5 「ゲーム」 
Fortniteは①IPの流入 ②単一IDで複数のルームに参加可能 ③ユーザーの自由度が高いルームも存在 ④UGCの権限付与 などの面でメタバースと表現される反面、現実世界と比べるとまだまだできることが少なすぎる。

6 「virtual theme park」 
ディズニーランドなども含める。アトラクションが有限。

7 「新しいapp store」 
生活体験の一部の提供しかできない。

8 「新しいUGCプラットフォーム」 
YoutubeやTikTokなど確かにユーザーが「生産」「共有」「収益化」までできるUGCプラットフォームではあるが、メタバースはある種の帝国であり「労働」「投資」「貸付」などより複雑な経済活動がなければならない。

 このように2020年においてメタバース=〇〇というようなプラットフォームは存在せず、上に挙げたサービスは近しい性質を持っているだけだということがわかります。
 理想のメタバースは現実世界では表現できていないので、次の章ではSFの作品を使ってよりイメージを膨らませていきます。

第2章 代表作

 『Ready Player One』はメタバースに関する文章で取り上げられる作品の一つです。

 作中ではVRデバイス、スーツの着用による没入感ある世界に加え、ガンダムやストリートファイターなどのIPの流入によってかなり自由度の高い仮想世界が広がっています。
 またオアシス上で恋仲になる女性が現実世界の容姿に自信がないため会うことを躊躇うなど、特有の悩みも取り上げられていてかなり面白い作品となっています。

 『The Matrix(マトリックス)』も1999年の作品ながら、メタバースの性質を捉えた映画となっています。

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 主人公が仮想空間と現実を行き来しながら、人類をコンピュータの支配から解放する戦いに身を投じていくアクション映画です。
 写真のように仮想世界での戦闘などのあらゆる活動も現実世界では体を動かさない点が特に興味深いです。これほどまでの没入感になると、現実は生理的欲求を満たすのみの世界になるかもしれません。

 最後に和製メタバース作品代表の『サマーウォーズ』です。

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 仮想空間で起きたセキュリティ上の問題が現実世界のインフラにも影響を及ぼすストーリーで、よく議論にあがるセキュリティの議論をよく捉えています。
 また、日本ではこのようなPOPなデザインも受け入れられるとされており、独自の世界観を作り上げています。

 このようにメタバースはSF映画のテーマとして取り上げられることが多く、それぞれに作者の理想の仮想世界の思想が現れています。

第3章 Fortniteが注目されるわけ

 USの多くの有識者は、Fortniteこそが最も早くメタバースになり得ると述べています。この章では、そんなFortniteについて深掘りしていきます。

Fortniteとは
 Fortnite(フォートナイト)は2017年Epic Gamesによってリリースされた世界で最も有名なゲームの1つで、2020年5月時点で3.5億人のプレーヤーが1月計32億時間もプレイしているようです。
 ユーザーの多くはPUBGやCoDでみられるような、「バトルロワイヤルモード」という1〜4人組での勝ち残り戦闘ゲームを楽しんでいます。

 多くのバトルロワイヤル形式のゲームがある中で、Fortniteは「特徴的なデザイン」、「建築による複雑な戦法」、「血や性的コンテンツがない」などを理由にZ世代から人気を集めています。

Fortniteとメタバース
 このような説明だけでは、単なるゲームにしか見えません。しかし圧倒的なユーザーの熱狂は、メタバースへの布石となっているのです。
 Facebookが世界的なソーシャルメディアプラットフォームになるにあたって、最初に始めたのは大学コミュニティでの小さなサービスでした。
 Fortniteも単なるゲームに過ぎないですが、Z世代は放課後Fortniteをしながら毎日数時間電話をしている事実もあります。そこではゲームの話はせず、学校での出来事、スポーツ、恋話などをして、新たなソーシャルメディアとしての役割を果たし始めています。ユーザーはこの"単なる”ゲームを通じて、自発的に新たな仮想世界を作り上げ始めました。

 最近では他のブランドやIPなどがマーケティングの一環としてFortniteに流れ込んできました。2020年4月にはラッパーのトラヴィス・スコットがライブを行い、同時接続は1,230万人を記録しました。

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 新型コロナウイルスによりアーティストの活動が自粛される中、ライブコンサートの新たな可能性を示唆するイベントとなりました。このイベントをきっかけにトラヴィス・スコットを知ったZ世代も多く、新たなファンの獲得へのPR方法の1つになったようです。

 NIKEもFortniteに注目しており、2019年5月にはエアジョーダンを発売しました。

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 現実世界で一足数万円で買うスニーカーを仮想世界内では数百円で購入可能になり、Z世代へのNIKEのIPの訴求としてはこの上ない手段となっています。またこのようなイベントをきっかけに現実世界での販売促進も期待され、仮想空間と現実世界はビジネスとしてもシームレスになり始めました。
 上にあげたイベントはほんの一例で、多くのIPが流入しているFortniteは現状メタバースに最も近い存在の一つと言われます。

 また「クリエイティブモード」ではユーザーにコンテンツ制作の権限が与えられています。

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 ユーザーは思い思いの自身の島を作り、その中に友達を呼ぶことができます(上はスマブラをイメージして作られたもの)。もちろん制限があるため純粋なメタバースとは言えないものの、その片鱗を見せ始めています。

  iOS、Android、PlayStation、Nintendo、PC、Xboxの全てでプレーできる点も見逃せません。これらはそれぞれのアカウントや決済システムを持ち、通常は「閉じた」状態のこれら全てでプレーできるのはFortniteの影響力を評価するには充分過ぎます。

Epic Gamesの野望
 上の事例はよく語られるメタバースの要素の事例ですが、これらを議論する上で最も注目するべきはFortniteを運営するEpic Gamesの動きです。

 Epic Gamesの最初の事業は『Unreal』というゲームエンジンの開発運営でした。Fortniteを含む数千ものゲームはUnreal上で運営されており、世界2位の独立したゲームエンジンがEpic Gamesにとって大きな強みとなっています。
 次の事業として始めた「ゲームストア」ではUnrealで運営されるコンテンツの販売を行っています。このように多くの体験をEpic Gamesが握っており、コンテンツ間の繋がりも強くなる設計がされています。この事実こそがシームレスなメタバース体験への準備となっています。

 また同社は2019年4月にTwinmotion社を買収しました。この会社は仮想空間上での「建築、建設、都市計画、造園の専門家」などの技術を有しており、より美しい仮想空間の創造に動き出しています。

 Epic Games社CEOは「Fortniteはゲームですか?それともプラットフォームですか?」という質問にこのように答えています。

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 このようにFortniteはゲームコンテンツとしての人気を伸ばしながら、裏では仮想世界の創造に向けて着実に準備を進めているのです。

第4章 日本×メタバースの可能性

 この章では、日本においてメタバースがどのように普及していくのか有名なサービスを挙げながら考えていきます。
Second Life

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 Second LifeはLinden Lab社によって2003年4月に運営が開始されました。多くの日本人が「初めて利用したメタバース」として第一想起される仮想世界です。最も大きな特徴としては「ゲームではなくコミュニティ」である点です。
 前提として仮想空間上で長時間を過ごすには、「敵を倒すなど課題をクリアするゲーム型コンテンツ」「特に目的がないコミュニティ型サービス」のいずれかである必要と言われています。
 Second Lifeは後者であり、ユーザーがアバターとなりもう一つの世界を生きるという世界観です。当時のアーリーアダプター達はこのサービスに興味を持っていて、人種や国境関係なくコミュニティを作っていました。
 日本人としてメタバースを考える上で、Second Lifeの存在は無視できません。

ZEPETO

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 日本のZ世代は新しいコミュニティとして、Naver Z社が提供するZEPETOを利用しています。自身のアバターを作成し、フレンドとのコミュニケーションやInstagramのようなSNSを提供しています。メタバースとは言い難いものの、Z世代の仮想空間での立ち振る舞いを学ぶ上で大変ヒントが多いプラットフォームです。

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 Fortniteと同様、NIKEがアパレル展開しています。ユーザー自身もアパレル展開ができ、最高で約100万円/ 月稼ぐクリエイターもいるようです。
 またゼペカレ(ZEPETO上の彼氏)、ゼペドル(ZEPETO上のアイドル)などの概念も生まれていて、高校生などがゼペドル事務所を立ち上げているようです。このようにZ世代によって新たなビジネスモデルが生まれ始めています。
 ZEPETOのヒットの裏にはそのデザイン性にもあるようです。仮想空間上でのビジュアルはより期待値が高くなるため、それを表現できるプラットフォームがZ世代からの評価が高いことがわかります。

国内スタートアップ
 国内でもVRを中心に仮想空間を作ることにトライする企業が現れ始めました。
cluster
 クラスター社が運営するバーチャルイベントプラットフォーム「cluster」は、VR空間でのイベントなどを通したコミュニティの形成をしています。

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 渋谷を模した仮想空間上に攻殻機動隊のIPが入るというイベントも企画されており、今後のサービスの展開が楽しみです。

ambr
 仮想世界「ambr」もVR空間でのコミュニティを形成しています。

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 一般的に仮想世界での滞在時間が長い、濃いコミュニティの設計は難しいとされています。ambrは「飲みニケーション」「現実世界にもある店舗の利用」を濃いコミュニティへの設計施策としている点が大変興味深くなっています。

 国内で考えてもSecond Lifeに始まり多くの仮想世界が生まれてきました。日本特有のデザイン性や「VTuber」など特有の文化を元に、ますます盛り上がりを見せることでしょう。

第5章 Withコロナでの『あつまれ どうぶつの森』

 2020年3月に発売開始された『あつまれ どうぶつの森』は自粛期間中に多くの人が楽しむと同時に、メタバースとしての可能性を見せ始めました。
 このゲームの中では、珍しい形でニュースになることがあります。
 その一つが、草抜き代行会社の誕生です。あつ森では自身の所有する島に雑草が生えてくるため、ユーザーは定期的に草抜きをする必要があり、中にはめんどくさがるユーザーもいるようです。そんな課題を解決すべく新たに設立された会社「WeedCo」は雑草の除去サービスを展開し始めました。事業の拡大にあたり従業員を募集しており、ダイレクトメッセージで自分の除草テクニックを示す30秒の動画を提示することが履歴書代わりになるようです。合格すれば、WeedCoの社員の証である制服が支給されます。このような一見突飛にも見える新たなビジネスモデルの誕生が今後起こってくることになるでしょう。

 また香港では自粛期間中の政治活動をあつ森で行い、大変話題になりました。

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 仮想空間×現実世界での政治活動については、今後問題になっていくと思われます。ISISの戦闘員の募集がメタバース上で行われた事例もあり、秩序がどのように生まれるべきかはまだまだ議論の余地があります。

 自粛期間を通して『あつまれ どうぶつの森』は、「ユーザーの居場所」という意味で仮想世界としての重要な役割を果たすサービスになりました。

第6章 メタバースに動き出す企業

 インターネットはもともと軍用技術であり、公的研究機関や政府を中心に作られたという背景があります。メタバースはそのビジネスでの可能性が理解されており、民間企業が初期から参入している点で大きく異なっています。
 ここからは世界のTech系大企業がメタバースに関してどのように動き始めているのかみていきましょう。
Microsoft
 Office365やLinkedInを通して、何億人ものユーザアカウントを持つMicrosoftはメタバースでの「仕事」に関するサービスを期待されています。toB→toC、PC→モバイル、オフライン→オンラインの変化にうまく順応した実績からも、メタバースでも重要な役割を担うと予想されます。またAppleと違いオープンなOSを提供している点でも、プラットフィームとの相性も良いと言えるでしょう。

Facebook
 FacebookはGAFAの中で最もメタバースに前のめりな企業だと言えます。これまでは純粋なソフトウェアのアプリやサービスに固執してきており、UGCやデジタル広告のデータを収集してきました。そんなFacebookはコミュニティ型サービスで最もユーザーを魅了したと言えるのでしょう。
 2014年のOculus社の買収は、メタバースへの第一歩として認識されています。仮想世界を体験するためのデバイスは複数ある中で「VR 」の領域を総取りしにきており、Oculusで準備されている『Horizon』は、メタバースのSNSとして最も期待されています。

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 「Horizon」は見知らぬVRユーザーと知り合うことも想定されたパブリックさもありつつ、クリエイターは自分のワールドをクローズドな招待制にすることもできる設計を目指しています。VRユーザー同士を結びつけ、クリエイターとなってワールドを作っていく様子が想定されているようで、現在リリースされているβ版以降の展開が楽しみです。

Amazon
 「購買」においてこの会社の右に出る企業はありません。Amazonフレッシュ(生鮮食品)、Prime Video(映画)、Kindle(本)、echo(スマートホーム化)などのサービスは生活必需品から娯楽まで全てを「家の中で完結」する世界を促進しています。オンラインとオフラインが滑らかに繋がっていく中で、消費活動を早期から握っている強みがあり、オフラインでの覇者であるAmazonが「購買」において仮想世界でもリードしていると言われています。
 また、CEOのJeff Bezosはインターネットのインフラに力を入れており、その代表サービスががAWS(アマゾンウェブサービス)です。クラウド分野でのAWSの世界的シェアは33%前後で世界1位です。世界的シェア13%前後で世界2位のMicrosoft Azureを大きく引き離しており、仮想世界のインフラを賄う力も持っているでしょう。バックエンドのインフラとデジタル取引の利用量が増えることによるメリットがあるためAmazonは積極的にオープンな開発環境を提供しており、その思想はメターバースと近いものです。

Google
 Googleはグローバル規模でユーザーデータのマネタイズが最も上手い企業と言われています。同社はオンライン、オフラインの両方で市場リーダーであり、中国以外で最も成功しているソフトウェア、サービス企業です。YouTuberという職業を生み出したように、新たなビジネスモデルを生み出してくれそうです。
 仮想世界という新たな環境ができる中で、Google Mapの知見は他の企業に比べて優位性があります。

Apple
 iOSなどのクローズドな運営方針から分かるように、Appleの思想はメタバースからかけ離れています。
 一方でiPhone、MacBook、Apple Watchなど同社の信者も多くインターフェースのデバイスが全て賄われる可能性も大いにあります。一部では2022年にARデバイスがリリースされると報道されており、続報が楽しみです。

 このようにGAFAMは既存のアセットを使いながらスタートアップ企業を買収し、メタバースの覇権争いを始めています。

第7章 a16zが期待する『Roblox』

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 多くの投資家がメタバースの可能性が一番高いのはFortniteと考えるなか、米国で最も有名なVCの一つのAndreessen Horowitzは『Roblox』が理想形であると考え、投資をしています。
 A16zは下の6つの点でゲームは進化してきていると分析しています。

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 過去10年で興味深い特徴の一つに「ゲーム開発者」と「ユーザー」の境界が曖昧になってきており、10代でもゲーム作りに興味を持ち始めたという点があります。そしてその欲求はRobloxによって満たされ始めています。Robloxは世界最大級のソーシャルコミュニティで1ヶ月あたり1.5億人以上の子どもや10代が遊んでいます。もちろんユーザー数も大事ですが、Robloxの1番の強みは200万人を超えるゲーム開発者のコミュニティを作り上げたことにあります。ユーザー自身が求めるゲームやプラットフォームを作り上げる環境を提供し、高度なクリエイティブになるように支援する仕組みづくりは他のゲーム会社と異なっています。
 開発者はある種の起業家としてプラットフォームを作り上げ、ゲーム内通貨のRobuxで収益を上げています。2019年は彼らは計1.1億ドルの収益を上げています。
 この誰でも仮想世界を作り上げることができる思想は、ユーザーのエンゲージメントを上げるとともにそのプラットフォーム上で新たなビジネスが生まれる可能性を秘めていることでしょう。

第8章 これからのメタバース

 メタバース内の自身のアバターは現実の自分の属性を反映をさせる必要はなく、人種、性別、年齢などはユーザー自身の選択に委ねられます。そこに現実世界の国境はなく、全員が「Hello!」と話しかけるのが予想できます。(もちろん自動翻訳機能などは導入されるでしょう。)
 国境にとらわれない仮想世界では新しい文化や秩序が生まれると思われます。過去にはSecond Life内で大統領を選出しようとした動きがあるようで、どのメタバースでもその可能性を秘めています。近年のオンラインサロンような1人を囲むコミュニティの延長線上にはメタバース上で「理想郷」を作り上げるような動きも出てくると思い、国土に依存しない「人」を中心とした世界も予想され楽しみです。
 このような複数のメタバースが存在する概念は「マルチバース」と言われ、今後各ユーザーが理想の仮想世界を行き来することでしょう。

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 古代では「武力」がステータスとなり、クニを治めていました。そこから血筋や宗教などが複雑に絡みあい、現代では資本主義的な観点で秩序を作る側に回れるかどうかが決まっていると思われます。メタバースという新たな世界が生まれることによって、誰が秩序を作り民衆が何に付いていく事になるか大変興味深く思っています。

 DXによって仮想世界内での経済活動は確実に需要が増してきました。
現実世界↔︎仮想世界で考えたとき、国家間の貨幣価値の違いから(現実の)国によってはかなりの収入を得る人も増えるでしょう。またシームレスに繋がる仮想世界内で現実世界のアウトソーシングを積極的に行う企業も増えると考えられ、新たなビジネスモデルも生まれるのではないでしょうか?
Second Lifeでは株式会社メタバーズという企業が生まれていたようです。新たな仮想空間の創造の受託業務や広告業、Second Lifeの不動産事業などユニークなビジネスを行っています。
 最近ではブロックチェーンを用いた仮想商店を出店する企業も生まれ、マルチバース内でシームレスな経済活動が進み始めています。(参照:『バーチャルで生きる世界をつくるために仮想商店を開きます』
 新たなチャレンジャーが増えていく中で睡眠欲、食欲、性欲のフィジカルな三大欲求は基本的には仮想空間では満たせません。ユーザーはメタバースに何を求めて、何にpayするのかは考え続ける必要があるでしょう?

第9章 まとめ

 With、Afterコロナでは外出機会が確実に減っていく中で、『あつまれ どうぶつの森』のヒットなどからわかるように、人類は仮想空間内に新たな居場所を求めるようになりました。
 今回紹介したように「メタバース」は仮想空間に新たな世界を生み出す可能性を秘めています。そしてまだその世界でのリーダーは決まっていません。Fortnite、Roblox、GAFAMと並ぶ企業が日本から生まれてくる日を心待ちにしています!

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 メタバースに興味をお持ちの方はぜひお話ししたいです!こちらからDMお待ちしております。


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