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ve(3,3)とは?何がすごいのか?

こんにちは、mackeyです。

最近、Defiプロトコルについて色々と自分で触りつつ調べていて、この記事を読むにいたりました。

とても面白い内容だったのですが、ve(3,3)についてはあまり詳しく言及されてなかったので、ve(3,3)についてまとまることにしました。なるべく、噛み砕いてわかりやすく説明してあるつもりです。今回が初投稿なので、読みづらい部分が多々あるかと思いますが、興味ある方はぜひ読んでいただけると幸いです。コメントや質問、誤りの指摘などお待ちしております。

ve(3,3)とは?

ve(3,3)はAndre Cronjeが現在コミットしているプロジェクトです。Cronjeは利回りやガス代を自動で最適化してくれるYearnを開発した人物です。2022年1月1日に彼は、Fantom上に新たなプロダクトをデプロイすると宣言していました。その新しいプロダクトがすなわちve(3,3)であり、1月11日にve(3,3)の内容が明らかにされたのです。彼はve(3,3)について、"emission-based token that balances ecosystem participants"と述べています。日本語に訳すと「エコシステム参加者のバランスを取る排出ベースのトークン」ですが、これだけではまだ何を言っているのかよく分からないですよね。。そもそもトークン発行が何を目的としているかという点から説明していきたいと思います。

トークン発行について

様々なプロトコルではネイティブトークンを発行しています。トークン発行の目的はプロトコルによって様々ですが、各プロトコルの目的を達成するための動機付けとしてトークンは用いられるとCronjeは述べています。例えば、ブロックチェーンであればセキュリティ、AMMであれば流動性または手数料の確保を可能にすることです。

ブロックチェーンの例で説明します。だいたいのプロトコルにおいて、何らかのトランザクションを行えば当然手数料を取られます。徴収された手数料はプロトコルの重要な収入源になります。しかし、プロトコルが始まった直後ではプロトコル側はほとんど手数料を取れません。まだ、そのプロトコルを使う人の数がとても少ないので当たり前ですね。このとき、もし、チェーンのvalidatorにはプロトコルの手数料収入のみから報酬を払うというしくみであれば、検証作業をしようと思う人はほとんどいないでしょう(最初の時点で多額の手数料を利用者から取ろうとするとそもそも利用者したい人が現れない)。よって、チェーンのプロトコルはブロック生成をすると、トークンという形で報酬がもらえるという仕組みを採用しています。BTCもvalidatorへの報酬はトークンというかたちで付与されます。ただし、最終的にはトークン発行はストップして、プロトコル利用者から徴収する手数料からだけでも十分にvalidatorへの報酬を払うことができます。つまり、手数料だけでも十分なインセンティブになるというわけですね。

従来のAMMプロトコルの問題点

さて、ここでCronjeは、一部のAMMについてはインセンティブ付の設計に問題点があると指摘しています。例えば、UNISWAPの採用しているような設計について問題を感じているようです。UNISWAPでは、プロトコルが徴収した手数料は流動性提供後の利回りとして還元されます。流動性提供をした利用者はUNIというトークンをもらえることになりますが、このトークンを所有しているからといって、プロトコル側から何か報酬を与えられるというわけではありません。 UNIトークンはマーケットで売買することで、利益を得られます。このような設計の何が問題かというと、UNIトークン保有者はUNIを売ることでしか最終的には利益が得られないという点です。保有者が一斉にトークンを売りに出した場合、トークン価格は暴落し、UNISWAPに流動性提供するインセンティブは大きく低下することでしょう。

一方で、Curveなどの場合は、流動性提供者はCRVというトークンはもらってステークすることで、veCRVというガバナンストークンを得ることができます。veCRVは、どの流動性プールにどれくらい多くの利回りを還元するかを決める投票の際に使うことができます。この点でいうとveCRVを自身が流動生提供しているプールにたくさん投票すれば、利回りが上昇します。この仕組みは画期的で、トークン保有によって利回りが上がる、すなわちプロトコルが得た手数料収入をより多く還元してもらえるようになるため、トークン保有のインセンティブが生まれることになります。

ただし、Curveでは、プロトコルによって徴収された手数料収入の50%は全てのveCRVの保有者に還元される仕組みになっています。よって、あまり手数料収入を得ていないような流動性プールに投票したveCRV保有者も、取引量が多い流動性プールから発生する手数料収入を得ることができます。

ve(3,3)のすごさとは?

ve(3,3)はこの点を改善したプロトコルであるといえます。ve(3,3)は以下のような性質を持ったプロトコルです。

・プロトコルの収入(徴収した手数料)は、ve(3,3)トークンをステークしている人に還元される

・トークンは手数料収入が多く発生する流動性プールに資金を預けている人に付与する

・ve(3,3)をステークしている人は、どの流動性プールから多くの手数料還元がなされるべきかについて投票できる。ただし、その際に投票した流動性プールが生み出した収益から手数料還元を受ける

このような性質を持っていることで、ve(3,3)では人々が最も取引量の多い流動性プールに投票するインセンティブを持つようになります。加えて、取引量の多い流動性プールに流動性提供を行うインセンティブも高まります。結果的に、最も需要が高い流動性プールに適切に資金が提供され、提供者は適切な報酬を受け取れるようになります。

また、Cronjeは手数料還元の方法についても注意が必要だと言及しています。従来のように、手数料をネイティブトークンという形で渡すことは適切ではないと述べています。これはなぜかというと、ネイティブトークンの流通量が増えると、ネイティブトークンの価値が薄れてしまうからです。そうなれば、流動性提供の見返りにトークンを付与されるメリットも薄れて、流動性提供インセンティブが低下します。Cronjeは解決策として、Curveのようにステーブルコインを使って還元するべきと述べています。ステーブルコインで還元することで、ネイティブトークンの価値が下がることは避けられます。また、仮にトークン価値が下降しているときであっても、ステーブルコインという形で報酬を得られるのであれば、プロトコル利用者がトークンを保有しつづけるインセンティブは維持されます。

さらに、Cronjeはve(3,3)はあらゆるプロジェクトにとって優れたシステムであるとも述べています。例えば、ve(3,3)の流動性プールにプロジェクトのtresuaryが保有するネイティブトークンを預けるとします。そうすれば、流動性プール内で発生した取引の手数料がそのプロジェクトに流れてくることになり、大きな収入源となる可能性があるのです。この点が彼の予想通りであれば、ve(3,3)のスケーラビリティはかなりのものであると言えるのではないでしょうか。

終わりに

以上が、現時点で明らかになっているve(3,3)の設計についての説明になります。1月10日に正式稼働を始めたLooksRare(NFTマーケットプレイス)も手数料還元ということで似たような仕組みを採用しているように思えます。トークン価値を下落させずにプロジェクトをスケールさせるため、このような仕組みが今後多くのプロジェクトで主流になるのかもしれません。

出典




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