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Aragon Network

  今回の記事ではAragon Network DAOについて紹介します。Aragon Network DAOはのガバナンス構造が非常に興味深かったので、詳しくまとめていきたいと思います。今後、多くのDAOでこのようなガバナンス構造が取られるようになるのかもしれません。"Degital Jurisdiction"(デジタル司法)として組織や投資家が法的関係を結ぶことなくビジネスを行うことを可能にしようとしています。

そもそもAragonとは?

 Aragon Networkは人々が容易にDAOを立ち上げ運営できるサービスを提供する組織であるAragonによって設立されました。Aragonのこれまでのサービスについてはこちらの記事でよくまとまっていました。

 Aragonは企業構造を変革しAragon Newtork DAO(AN DAO)へ移行している最中であり、AN DAOが運営を開始したのは2021年10月なので割と最近です。

AN DAOのガバナンス

 AN DAOはMain DAOと複数のsub-DAOで構成されます。Main DAOもsub-DAOもAragonが提供しているサービスであるAragon Governで作成・運営されています。

 Aragon GovernはDAOは、DAOがDAO Agreementsとよばれる独自の設立文書を作成することで、DAO内で揉め事が生じたときにAgreementsを憲法のように機能させることができます。Aragon Governは"Optimistic Governance"(楽観的なガバナンス)という機能を備えています。例えば、AN DAOではガバナンストークンである$ANT保有者がDAO内で提案を行うことができます。Optimistic Governanceでは、もし特に反対がなければこの提案が承認され提案内容が実行されます。反対者は、提案がなされたのちにthe Dispute Time Delayと呼ばれる時間内で異議申し立てを行う必要があります。もし提案がDAO Agreementsに違反していれば、提案は却下されます。

 Optimistic Govenanceは、意義がない限りは提案を可決することで迅速な意思決定を可能にする仕組みであるといえます。しかし、あまりに多くの人が様々な提案を出すようになりチェックが行き届かなくなれば、組織にとってよくない提案が十分に審議されることなく実行されてしまいます。そこで、Aragon Governでは提案者が事前に担保として50$ANTを預けることになっています。もし提案が反対にあって実行されなかった場合に担保として預けていた50$ANTが没収されます。この仕組みによって粗悪な提案が数多くなされることを抑止しているのです。

Aragon Court

 Aragon CourtはもともとAragonが提供していたDAO内の裁判所機能です。DAOで反対が出た事案について陪審員による裁判を受けられます。AN DAOでもこの機能を採用しており、陪審員は$ANT所有者なら誰でもなれます。

Main DAO

 Main DAOはAN DAOに関して重要度の高い提案と提案の実行が行われる場になります。ここでの決定についてはOptimistic Governanceを採用しないことになっています(これもDAO Agreementsにおいて明記されています)。Main DAOでの提案はAragon Voiceでの投票に成功しなければ実行されません。

Main DAOでの提案可能議案

・金融:Treasury資産の使い道について

・選挙:subDAO委員会の選出

・その他:ガバナンス設計そのものの変更、コードやパラメーターの変更

また、Main DAOにおける全ての提案はAragon ForumやDiscordなどで7~10日間をかけて審議され改善された状態でなされる必要があります。投票はAragon Voiceで7日間かけて行われます。現実の議会制度とよく似た制度であるという印象を受けますね。

Sub-DAO

 sub-DAOはMain DAOに従属しており、資金はMain DAOに融通してもらうことになりました。sub-DAOは全体のDAO Agreements (憲章)に従うほかに、それぞれ独自のAgreementsに従います。Main DAOにおける投票によって、新しいsub-DAOの設立や既存sub-DAOの分離などが可能です。

 AN DAOにはローンチ時点で、Exectuive Sub-DAO、Compliance Sub-DAO、Tech Committeeという3つのsub-DAOが置かれていました。それぞれのsub-DAOには3名の委員からなる委員会が設置されます。

Executive Sub-DAO

 DAOの運営資金、投資や助成金などにあてる資金の管理を行います。"Lazy Consensus"と呼ばれるコンセンサスアルゴリズムを使っています。Executive Sub-DAOの委員会が提案を行い、他のメンバーが反対しない限りは提案が実行されます。反対があった場合、議論で解決しなければAragon Voiceにおいて4~14日をかけて投票を行います。

Compliance Sub-DAO

 Complian Sub-DAOは明らかにDAOが立てた憲章に違反する、もしくはAragon Networkに大きな損害をもたらすような提案を拒否します。AN DAOの暴走を食い止める防波堤のような存在と言えるでしょう。

Tech Committee

 Tech Committeeは厳密にはDAOではありません。DAOやsub-DAOで提案があった場合に、コントラクトのコードを新たに書き換える存在であり、この作業はオフチェーンで行われます。また、Github上の情報の管理なども担います。

まとめ

 Aragonのガバナンスシステムにおいては、Optimistic Governanceを採用することで、DAOの課題である意思決定プロセスの複雑さ・遅さを克服しているといえます。Aragonの提供するOptimistic Governanceを利用することで、従来の組織以上に迅速な意思決定が行われる事例も見られているそうです。

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すでにかなりたくさんのコミュニティで導入されているみたいですが、今後より普及するのではないでしょうか。



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