ネットプリント『liz/bluebird』あとがき

こんにちは。はじめてのネットプリントを出しました。

このnoteはそのあとがきに該当しますが、この作品について自分が考えていたことをゆるゆる書いていきたいと思います。先にこのnoteを読んでからネットプリントを読んでも大丈夫です。合わせて読んでいただけるとより楽しめると思います。

(2024/4/28/追記: PDF版の無料配信を開始しました。こちらのリンクからダウンロードできます。)


また、『リズと青い鳥』はNetflixやAmazon Primeをはじめとする配信サービスで視聴可能です。『リズと青い鳥』を見てからこの作品を読むとより楽しめると思います。





まず、このネットプリントの作成にご協力いただいたbbmasaさんにこの場を借りてお礼を申し上げます。ほんとうに素敵な絵、ありがとうございました。

bbmasaさんの絵にはたましいの輪郭を感じさせる、不思議な引力があると思ってる。bbmasaさんの描く鎧塚みぞれと傘木希美にわたしたちは触れることはできないけれど、彼女たちに宿るかすかな聖性、みたいなものを、信じさせてくれる。




『bluebird』と『liz』は、『リズと青い鳥』の二次創作という意識で作った連作だ。なぜ、と聞かれたら、わたしはうまく説明できないけれど、少なくともわたしは『リズと青い鳥』を元に作品を編むことに強い必然性があった。

強いて言うなら、わたしは『リズと青い鳥』に、少しでも還したかったから、この作品を作ったと思う。

なんというか、わたしは普段もっと違う俳句や短歌を書いているのに、どうして、これを書いてしまったんだろう、と、今でも困惑している。一方で、わたしはこれをどうしても書かなければいけなかった、と確信している。それほどに、『リズと青い鳥』の引力が、わたしのなかで、強かった。

もちろん、作品は読まれたいけれど、でも読む人が一人もいなくても良いと本気で思ってる。わたし自身がこの物語を一番必要としているから。

実際、このネットプリントを印刷する人はほとんどいないと思う。読んでくれる人が、本当に一人でもいればいいと思っている。できれば、一人がいいと思っている。




『bluebird』は絵コンテのように描きたい、という意識があったし、楽譜のように記したい、という意識もあったと思う。前者でいうと十首目(〈いつまでも…〉)は映画的なカットを考えて描いたし、後者で言うと二首目(〈君の長い…〉)は3/4拍子のイメージで書いたつもり。

あと、鎧塚みぞれは旧仮名だと思ってるところがある。

『bluebird』をU-25短歌選手権に応募してもよかったのだろうかと葛藤していたし、今でも応募してよかったのかな、と思ったりする。けれど、先生方の評を読んで、ほんの少しだけ、報われた気持ちになってる。

穂村弘さんの検索履歴のどこかに〈ヴェロスラフ・ヒチル〉があることを、今でも時々思い出して笑ってしまう。『bluebird』という連作において、ヴェロスラフ・ヒチルはどうしても必要な手順だった。

ヴェロスラフ・ヒチル、ぜひ検索してみてください。必要な手順なので。

小島なおさんの〈《愛ゆゑの決断》〉の歌の評が、今でも読み返すくらい、大好きだ。

「愛ゆえの決断がまだないからこそ、どのような旋律で自分のパートを吹くか練習することによって、愛が疑似体験として自分に入ってくる。不可逆であるはずの順番が逆転する瑞々しさ。」

一方で、座談会で指摘された通り、まだ『bluebird』の青春性というテーマにおいて浅瀬にいると思う。確かに、もっと巧く描く方法はあったと思う。だけど、わたしが『bluebird』で描きたかったのは青春性ではなくて。

ちやんと吹けたらわかるだらうか。




『bluebird』はかなり強いコンセプトを持って作り始めたけれど、『liz』は逆にそこまで強固なコンセプトは持ってなかった。

連作『liz』を書いていた当時は俳句で何が描けるのか、かなり迷いがあった時期だったと思う。描きたいもの、と、描くメソッドが、自分の中で一致していなかった感じ。その中でどうすれば『リズと青い鳥』を描けるか、苦労した記憶がある。

『bluebird』に関しては、どう書くか、あまり迷わなかった。自分が短歌の技法にあまり詳しくないから、というのがあるのかもしれないけれど。単純に、この連作が出来上がる前から、わたしは、鎧塚みぞれについて、ずっとに考えてきたから、だと思う。

巣立鳥、という季語に出会えて良かったと思ってる。この季語が出会えなかったら、きっとわたしには『liz』は作れなかった。

読み返すと、『liz』は技巧のレベルはあまり高くないように感じるけれど、わたしは気に入っている。祈りに近い辿々しさで。




最後に、このネットプリントには俳句連作『liz』と短歌連作『bluebird』を収録しているけれど、それとは別にネットプリント自体に『joint』というタイトルがつけた。それに気づいてくれたら、わたしはとても嬉しい。それが、全てだから。


池田宏陸


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