ウディネーゼ戦 〜どこまでリスクを負うべきか−まだまだ続きそうなアンチェロッティの模索〜
総シュート18本のうち、枠内3本では心許ない。あまりにも低調すぎた前半、リスクを背負って前に出たもののカウンターの脅威に晒され続けた後半をどう取るかは人によりけりであろう。
前節ホームでボローニャに負け、直近のリーグ戦6試合で勝ち点を4しか積み上げられていない7位ナポリ(勝ち点20)は、ミッドウィークにラウンド16進出の懸かるCLヘンク戦を控えており、スタメンレベルではアラン、ミリクを欠く中、前節とは打って変わって4-4-2を導入。大方の予想は4-3-3であり、従来の4-4-2では引いた相手に対する効能がほとんどなかったことから指揮官の修正が非常に気になるところではあった。もっとも、結局何も改善されていなかったのが実情ではあったのだが…
前半
3-5-2(5-3-2)で臨んだ14位ウディネーゼ(勝ち点14)に対し、ナポリは6割近くボールを保持するものの全くチャンスを作れずにいると、32分に先制を許す。
CKのカウンターの流れから、人数はいたもののラインが揃わないうちにフォファナのスルーパスを受け裏に抜けたラザーニャに上手くシュートを流し込まれた。
ハーフタイムにかけても拙攻を続けたナポリはまさかの枠内シュート0で後半へ折り返す。あんまりつまんないんで裏でやってるマンチェスターダービーにでもチェンジしようかな、と思うほどに低調な前半であった。
後半
後半頭から低調なインシーニェに代えてジョレンテを投入してシステムを4-2-4に変えてリスクを負ったナポリは完全にポゼッションを掌握し、53分にファビアンのミドルシュートでこの試合初めての枠内シュートを記録する。
しかし、その後も攻め続けるがゴールを奪うには至らず、ロサーノを見切ってユネスを投入し、状況の打開を図る。
すると69分、同点ゴールが生まれる。敵陣でのボール奪取からボックス右のジエリンスキが左足で放ったシュートはゴール左に。崩し切ったシチュエーションではなかったものの、ようやっと追いつくことに成功する。
追いついたナポリはその後、78分にジョレンテのヘディングシュートでこの試合最大の決定機を迎えるもこれはキーパー正面。その後もゴールを脅かすものの、このままドローで泥沼のリーグ戦7試合勝利なしとなった。
極端すぎた攻守のバランス
上の図は@tacticsplatformより引用した。前半のゴール期待値はまさかの0.2。ビルドアップはショートパスを大外のレーンでつなぐパターン1と、クリバリからロサーノ間の裏へのロングキックというパターン2が見られた。だが、相手が固めてきたこともあり中央のレーンもハーフスペースも全く使えなかったことで攻撃は大外からのクロスのみで終止した。しかも、クロスに入る人数は大抵2人で1人ということもあり、人数不足(かつ小柄なので質的な不足も)は明らかであった。下のパスマップから、データでもこれが如実に現れていることがわかる。
全く機能しない攻撃とは対照的に、守備面では失点シーン以外で目立った決定機はなかったように思う。だが、この戦い方では点が取れないことは明らかで、リードした試合の締め方としては適切かもしれないが、勝ちを求めるアウェイチームにとってファーストハーフはいたずらに時間を浪費するだけのものだったといえよう。
後半、ジョレンテを投入したものの、システム自体を変更した、というよりは立ち位置を変更したという表現が正しい。具体的には、両サイドの4枚がポジションを上げ、2-4-4のような形に変えて、相手を一方的に押し込むことを狙った。
この狙いはある程度奏功した、とみて差し支えないだろう。上のグラフからわかるように、後半は立て続けにシュートは放ち、ゴール期待値にも上昇が見られた。
一方で、守備面には深刻な問題を引き起こした。カウンターになった時に、必ずと言っていいほど数的不利を強いられ、クリバリとマノラス2人だけの対応となることもしばしばであった。はっきり言って個の能力で言えばウディネーゼのアタッカー陣よりもはるかに高いこの2人であったからこそ失点しなかったものの、もう少しこのクオリティが高い相手なら(それこそ開幕戦で打ち合いを演じたフィオレンティーナのように)間違いなくやられていたはずだ。
アンチェロッティは同じ4-4-2でも、豊富なアタッカーを活かすために多少カウンターのリスクを負っても実質4トップのような状態にすべきか、もしくはある程度計算できる4-4-2のブロック守備で固く守り、カウンターでワンチャンスをモノにするべきか模索しているように見える。個人的には格下には前者又は4-3-3で、格上には後者で一環して戦えば結果がついてきそうな気はしないでもない。
まとめ
もうそろそろ、リーグも折り返しを迎えつつあり、痛い引き分けになったナポリ。おそらくよりカウンターのクオリティが高い相手にこのサッカーをすれば間違いなく負けていただろう。引かれた相手にリスクを取らない布陣を敷いてしまったことで誤算になった前半が響いた印象だった。サッカーは往々にして攻守一体とよく言われるが、守備がハマっても攻撃が上手くいかず、ずるずる行ってしまうこともあるのだな、と思った。逆もまた然りである。そしてそれが起こってしまう理由こそ、持つ者故の葛藤であるに違いない。
水曜日にはCLのヘンク戦がある。引き分けでも突破は確定するものの、なんとか勝ってスランプに終止符を打てないだろうか。(この項・了)