『短歌人』2018年2月号掲載五首

哀しみの聖母の脚にすがり付くその悲しみの薄き蒼空

堤防の黄色に萌える草にさへ打ち負かされる木枯らしの朝

パリにいた詩人のやうに行く雲を眼で追ひながら顔あげてゆけ

耳元の寝息の褥あさまだきハイデッガーにおはやうを言ふ

十年も土に潜めば土だけの匂ひとなりて世に還りたり