【悲 報】「短歌人」第16回高瀬賞(新人賞)応募作品 の墓

※箸にも棒にも引っかかりませんでした。お弔いで note に載せておいてあげます(;_;)。なむなむ


「ターコイズブルーの空に」/安野文麿

突然の悪寒に手と足冷たくてひとり聖夜に心ぼそかり

酸味増すヨーグルトならば生きている証といふも上ぐる胃液は

眠れぬと飲む粒のありあの頃はアダリンといふ薬ありとふ

「田園」を蓄音機に聴き幾たびもあくがれの野は阿多多羅といふひと

かの人は紙絵を切りて彩れり下絵も無しに千三百余作

蓮根の穴の歪みも愛おしと夫に見せたき心哀しも

お見舞ひに果物かごをもらふたび紙絵に換へて思ひを還す

青鞜を飾りし女神の冠を外して夫を支へしひとよ

大胆に色を置きたる風信子匂ふがごとき息吹きとどむる

右の辺の背中にひとつ黒子あり彫刻家描くスケツチの伝ふ

花霞酌めどもあかぬ酒を産む蔵の二階に書斎はありぬ

芳しき糀いきづく酒蔵に帰りたからむ疾しきたましひ

床の間のすとんと重き白無垢は旧家の娘に似合ふ肌目よ

ターコイズブルーの空に汽車で来し造り酒屋の娘の生家

目醒めれば知らぬ駅なり帰らむと線路辿れば高き警笛