『短歌人』2016年9月号掲載 五首

くわくこうが隣町まで来たんだよ朝ごはん摂りながらする夏の挨拶

斑の入りしすすきを刈れば日のあたる紫式部に幸ひのあれ

しやりしやりと茗荷を食めば寂寞の記憶は月の影と重なり

こぼれたる薔薇のはなびら雑草のうへに微かな光をさそふ

ぽろぽろかぼろぼろなのか読めなくて右手を伸ばし眼鏡をはづす