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まゆ毛とオシャレと私

「岸田さんって、オシャレですね」と、時々お褒めの言葉をいただけると、嬉しいという感情と同時に自信と元気が沸いてきます。昔から私は洋服が大好きでした。しかし、歩いていた頃にできていたオシャレと、今のそれは少し違います。

行動を変えると気持ちが変わる

大動脈解離後の入院生活はリハビリを含めると約2年近く。当時の私は歩けなくなった現実を受け入れることができず、落ち込んで泣いてばかり。朝から晩までずっと病室のベッドの上にいる生活は、世間とか社会とか日常からは遥かに遠い遠いところ。もちろんスッピン、もちろんパジャマ。リハビリで着るジャージがよそ行きの服でした。

何の意欲も元気もない鏡に映る私の顔は、ウルトラマンに出てくる怪獣ダダを彷彿とさせました。ダダの私、あー、もう終わったんだ私。いっそのことウルトラマンと戦ってやっつけられたい。そんなことを本気で願う、いわゆるやばい奴でした。

そんなある日。同級生からお見舞いに行くよ!という連絡が。歩いていた頃以来、かなり久しぶりの再会。ダダでもすぐわかった。ダダの私を見せるわけにはいかぬ。ほんの僅かでも羞恥心は残っていた。せめてもの抵抗はしておこうと急いで病院の売店でまゆ毛ペンシルを買い、久方ぶりにまゆ毛を描いた。とりあえずダダより少し美しくなった。(ごめんね、ダダ)

ダダより美しくなっただけではなかった。描いたまゆ毛は私の夢と希望のスイッチを入れてくれたのです。忘れかけていた何かを思い出したような。

ならばもうちょっと何かを思い出してみたい。

パジャマじゃなくて洋服を着たい、ジーンズを履きたい、そしてオシャレして車いすに乗って外に出てみたい。

気がつけば私にはやりたいことがたくさんありました。

どうにもならない落ち込んだ気持ちは、気持ちだけではどうにもならない。たった1つ、行動を変えてみることで気持ちは元気になれる。そんなことをまゆ毛が私に教えてくれました。

オシャレをするということ

オシャレをしたいといっても車いすに乗って生活をするようになってから、選べる洋服の幅はぐっと狭くなりました。タイヤに擦れないよう丈の短い袖や裾、長時間座っていても皺になりにくい素材などです。

最初は選ぶのが面倒で、オシャレをあきらめ野暮ったい格好をしていたこともありました。そんな姿を鏡で見ると、好きではない洋服に身を包んだ私の顔は暗く、話しかけづらそうな空気を纏っていました。気持ちまでどんより曇っていました。

これではダメだ!

一念発起して好きだったブランドの店員さんを頼り、数ある服をあれこれ吟味しながら、愛しいと思える服を選ばせてもらいました。そうして宝物のようにして見つけた服を着て、外に出るようになると、出会う人から褒められるようになり、もっと色々なところへ出かけたいと思い始めました。

気づけば外出先で声をかけられる機会も増えていました。人は見た目が全てではありません。しかしオシャレをすることで自分が自分を元気にします。自分が自分に自信を与えます。そんな内面からでる雰囲気は周囲も話しかけやすくなり、社交性も高まると感じています。

私は今でも元気がない時は無理して元気になろうとするのではなく、勇気を持って、いつもよりオシャレをします。それが私が私を元気にする魔法。

気持ちは変えられなくても、行動を変えることはそんなに難しくありません。

私の“良いコト”と“良いヒト”を引き寄せるのは、オシャレをすることなのです。

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