スプリング エフェメラル
春の女神やら妖精やらと呼ばれる蝶がいる。春に咲いて散る草花なんかをスプリング・エフェメラル、春の女神・妖精と呼ぶ。同じように冬の終わり、春の始まりを告げる蝶たちもスプリング・エフェメラルと呼ばれる。この妖精たちは日本には何種類か存在するが、その代表格は日本固有種であるギフチョウだろう。
自由に林を飛び回り、長い禁欲の冬の終わりを告げる。この蝶はまさに、春を祝福する妖精だ。
また地域によって様々な特徴があるため採集家、写真家問わず蝶好きでこの蝶を知らない人は日本には存在しない。
とにかく言いたいことは、昆虫に縁遠い人からはすれば、初めて聞くかもしれないこの名前の虫は、実はとても有名で愛されている蝶なのだ。また、有名産地である新潟周辺の里山に住む人ならば、春になるとこの蝶を求め網やカメラを抱えた人がやって来ることや、この女神の魅力にやられ周りが見えなくなった人たちによるトラブルがあること。
今や新潟のほとんどの産地では条例等によって採集が禁止されていることをご存知かも知れない。
この蝶の仲間は3種類が知られており、うちギフチョウ・ヒメギフチョウの2種類が日本にのみ分布し、ギフチョウは本州西側、ヒメギフチョウはより寒冷な土地を好むため、北海道と本州北側に分布する。
残りの一種類はシナギフチョウと呼ばれ大陸にいる。この3種から見えてくるのは、日本がかつて大陸の一部であったという地球の長い物語の一編だ。
そして、ギフチョウとヒメギフチョウは本州内で互いに棲み分けをしている。分布が接するラインが明確にあり、これをギフチョウの仲間を表す学名からとってLuehdorfia lineと呼ぶ。
このライン上のいくつかの地域でのみ、両種が混在している地域があるのだという。
恐らくこのLuehdorfia lineにも地球の物語が潜んでいるのだろうが、僕はまだその内容を知らない。
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