しるし(2019.1.30)

わたしの乳房に影さす
欅の枝のかたち
桜なら五分咲き
旧いプラネタリウムの星
きらきら光る石灰化

片方の乳房に残る
小さなクリップ
近づけない柵越しの桜
光だけが届き続ける星
今は無いがんのしるし

油性のマーカーで
描かれた線は
許可されたその日に
石鹸で消した

放射線を浴びた肌
刃を入れるために
開いた傷は
火星の土の色

片方の乳房に合わせた
下着の隙間から
わたしにも聞こえない
わたしの声がする

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