迷信(2019.6.5)

枇杷は
その種を植えた人が
死んだときに
実を結ぶのだと
教えてくれたのは父だ
以来
実をつけた枇杷の木を見ると
ああ誰か死んでいる
と思うのだ
その誰かは
自分が植えた枇杷を
食べることも
見ることも
叶わなかったのだと

靴下を履いて寝てはいけない
親の死に目に会えないから
ご飯粒を残してはいけない
目が潰れるから
夜に爪を切ってはいけない
不吉なことが起こるから

もし父が
枇杷を植えていたのなら
どこかで
たわわに実っているだろう
靴下無しで眠れないわたしは
それを見届けられないのだ

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