壁(2018.10.21)

目を黒く塗りつぶして
隠しおおせるのは
素性でも顔の造作でもなく
互いの視線の行方

壁を打ち壊して残るのは
壁だった瓦礫と
湿った土を乾かす
隠しようがない空

光を嫌う虫ならば
持ち上げた石の下から走り出る
逃げることも忘れて
残された瓦礫にしがみつく

掴みどころなく
爪を剥がすたびに
声は枯れていく

不在通知が保証する宛先
そこに
あなたはいるのだ

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