しおり(2017.11.7)

傷はいつまでも消えない
傷がなかったことを
覚えている限り

数年も経てば
わからなくなると
ドクターは言った
まだ固い胸
ときどき ピッと痛む

わたし といえば
全身がわたしのはずだった
報告の義務などない
がん細胞は
おとなしく きちきちと
分裂し続けていた

この傷は栞
知らなかった と
知った は
栞の手前と向こうで
ぴったり隣り合って
ひとつに閉じられている

いまも
栞を挟んだまま
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