コガネムシ(2018.7)

一匹のコガネムシが
仰向けで
脚をばたつかせていたのを
さり気なく爪先で表に返してやろうと
身構えていたのに
電車の扉が開いた途端に忘れて
乗り込んでしまった

わたしがしでかしたこと
わたしがしなかったこと
どちらの罪が重いかを
ときどき
秤にかけてみるが
わたしに秤を裁く手が見えないように
コガネムシにもわたしは見えないのだ

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