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花束をたてがみにして 声を限りに吠える その先に月がいるのは偶然だ てらてら光る黒いビニール 発情した猫に擦り寄られ 痛む喉をいっそ掻き切る 汗に塗れた髪をふと思い出す チルド室の不凍液は わたしの喉を通り 傷口から滲み出した それを合図に 花束を引き剥がす 枯れたたてがみを捨てて 黒いビニールの軽やかな音に 耳を貸そうとしている もう吠えるための声も出ないのだ 月がいるのはほんの偶然