司法試験・予備試験会社法学習用の本

本にも色々ありまして。

このようなご質問を頂きました。7科目+選択科目をバランス良く勉強する必要がある司法試験・予備試験では、どの程度深く学ぶか、その度合いを迷われる方も多いと思います。さし当たり受験生向けは日本評論社の『新基本法コンメンタール会社法1~3』かなあと思いますが、今回はコンメも含めて、司法試験・予備試験の会社法学習での本の使い方について考えてみたいと思います。

最終的な目標は「歩くプチコンメンタール」

以前から申し上げてきたように、僕自身は予備校さんのギリギリ合格理論を支持しない立場です。他の科目の転びようによっては、一部の科目でパフォーマンスを発揮できないことで1年を棒に振るリスクが高すぎると思います。いずれの科目でも上位半分ないし2/3程度を確実にとれるような余裕はいると思います。

従来から僕は、多くの科目について、受験生はプチコンメンタール状態になっておくのが理想的だと伝えてきました。その意味は、条文・判例ベースで、条文の趣旨・要件・効果、主要な判例の争点・理由付け・結論を、簡潔で良いので正確に説明できるようになることを指しています。この正確性が高まるほど、以前述べたいわゆる「打率」が上がることになります。

「プチコンメンタール」になるまで

予備校さんでも、全体構造(基礎)→一通りの知識→論文レベル→択一知識レベル、と知識を版画のように重ね塗りしていくことは、勉強法の一つのスタンダードです。僕も、入門書・いわゆる教科書をインプットで段階的に用い、教科書を論文・択一でのインプットの基本としつつ、必要に応じてコンメンタールを補助的に用いるのがよいと考えます。

もちろん、最終的にはアウトプットが必要になり、それは過去問のほか現在は豊富にあるいわゆる演習書によることになります。ただ、インプットされた基礎知識があやふやな状態では、アウトプットも支離滅裂になることは避けられず、個人的にはあまりにも早い段階でのアウトプットには賛成できないところです。むしろ焦らずに、過去の択一問題やそれに準ずる難しさの資格試験(ビジネス法務実務検定や法学検定など)の短答などで知識の定着度を確認していくのがよいのではないかと思っています。

学説の枝葉末節は避ける

他方で、商事法務(中央経済社は商事法務と日本評論社の間くらいの詳しさです)のコンメンタールのような詳細なもので、学説対立の書込みが丁寧なものは、上記「プチコンメンタール」からはオーバースペックだと思います(このことは程度の差こそあれ『論点体系』でも同じことです)。あくまでも実務家登用試験としての司法試験・予備試験では、判例から離れた学説対立に詳しくなることには、一定程度抑制的になるべきだと思います(それは研究者なり研究者養成コースの院生の仕事だと思います)。そのような観点を持てれば、後は使う具体的な本に何を選ぶかは、何が個人の肌に合うかで考えればよいのではないかと思います。具体的な本のラインナップについては、また別の機会にでも。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?