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肥った豚よりも痩せたソクラテス

以前、東大の卒業式典でスピーチをした方が、過去の総長の言葉を引用しました。

それが、

「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」

でした。

当時は、この言葉が新聞やテレビでかなり大きく報道されたので、覚えている方もいるかもしれません。

元々は、ジョン・スチュアート・ミルの

「満足な豚であるより、不満足な人間である方が良い。
同じく、満足な愚者であるより、不満足なソクラテスである方が良い。」

から来ています。

ミルは質的功利主義である、「ただ生きるのではなく、善く生きる」ということ。このことの真理を探究することを彼は説きました。

それを過去の総長が違った解釈をして使い、その誤用をスピーカー、さらにはメディアがそのまま世間へ垂れ流ししてしまいました。

しかし、このスピーチの一連の問題を見ると、不確かなあやふやな情報の中で生きる私たちがいかに危険な状態にいるのかが分かります。情報の真偽、オリジナルかコピーかも分からないまま、その情報を消費している、という認識に立ちながら、自ら情報を獲りに行く必要があります。


先のアメリカ大統領選は、まさにネットによる世論操作を駆使し、情報を制したものが勝者になる戦いでした。日本も構造的には同じ状況にあります。

そういう世界で生きている中で、撒かれた餌に食いついて現実の苦悩から逃げるのも一つですが、スキゾなスタンスで「嫌いなものを好きになる」「違うものを受け入れる」方が、得られる結果の純度が高いように思います。

今流行りのアニメ的に言えば、「満足した鬼より不満足な人間になれ」です。

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