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『華胥の幽夢』


十二国記
小野不由美 著/新潮文庫
(新潮文庫版エピソード7)

既読(読んだ順) ※〈〉内新潮文庫版エピソード順

月の影 影の海(上下)〈1〉
図南の翼〈6〉
魔性の子〈0〉
風の海 迷宮の岸〈2〉
東の海神 西の滄海〈3〉
風の万里 黎明の空(上下)〈4〉
丕緒の鳥〈5〉


短編集。
しばし休んでいた読書(小説)を再開。楽しかった。
そしてこの記事をモタモタ書いてる間に『黄昏の岸 暁の天』も読み終わってしまったのでそんな話も交えつつ、感想。



冬栄とうえい
泰麒たいき、漣に行く。
長年『十二国記』を読むのを拒んでいた私ですが(はまったら生活に支障を来すから)、読む前から『十二国記』のLINEらいんスタンプの絵はスクショして、おりにふれ眺めていた(買ってはいない)。
姿だけ覚えていたあの人この人が出てくると興奮する。
この話に出てきた廉王・鴨世卓おうせいたく
扉絵にいるのを見てスタンプにいた人だと気づき、まさかの王様で驚いた。
泰麒については、何をしててもこの後何故か日本に戻って魔性の子の時間があるんだよなと思うのでつらい。ちょっと楽しそうにしてたけどつらい。廉麟れんりんは『黄昏の岸』でもすてきだったなあ。


乗月じょうげつ
芳の話。『風の万里 黎明の空』で峯王・仲韃ちゅうたつしいした月渓げっけいが主人公。
仲韃の娘・祥瓊しょうけいを追放し生殺しの状態にしながら仮王だか偽王になるわけでもなく、祥瓊に対してすごく感じ悪かった記憶。なんつうか、ラブコメで主人公が最初「何こいつ!」って思うけど結局好きになる相手みたいに感じ悪かった。
その月渓の悩み、考えが書かれている。
そんな風に考えていたのか……知るか!分かるか!仮王になれって言ってるのに、誰がどう見てもそれができる人でしょうに、何もったいぶってんだと思ってしまった。でも良い仮王にはなりそうだ。
最後の供王のなさりよう痛快。
祥瓊も立派になったなぁ。→黄昏の岸で氾王とのやりとり面白かった。


書簡しょかん
楽俊らくしゅん回。楽俊の大学生活が垣間見られるの嬉しい。
陽子との手紙(鳥)のやりとりで話は進む。
陽子が考えている事が今までほとんど語られていなかったんだなと気づいた。主人公なのにね。
楽俊のお母さんいいねぇ。
楽俊と陽子は手紙ではお互いなんの問題もなく上手くやってますと言い合っているけど、心配かけまいとそうしてることをお互い分かってるのがまたいい。
陽子が延麒・六太ろくたを「六太くん」と呼んでいた。感覚が日本人で、なんかいい。


華胥かしょ
才の話。ミステリーだ!いいねえヒャッホーと思ったら初出はミステリー雑誌だとか。でも犯人が分かってめでたしという話ではない。

責難せきなん成事せいじにあらず」

人を責め、非難することは、何かを成す事ではないという意味だとか。
読んでから3週間ぐらい経つけど、日常の中で「これ、責難は成事にあらずだな」と思う事が結構ある。自分自身がまず気をつけなければいけないのだけど。
それにしても青喜せいきの頭が良すぎる!灰色の脳細胞か!?
采麟さいりん元気になるといいなぁ。


帰山きざん
奏の利広りこうと雁の風漢ふうかんがここまでの『十二国記』の話のまとめ、現状の把握みたいな話をしているだけなのに面白い。
チラチラと月渓の芳や、陽子の慶が褒められてるのが嬉しい。
それにしても荒れてる国が多いな。楽俊の故郷も大変そうで心配だ。

神籍や仙籍に入って不老不死になっても実年齢を数えるとか、王が実年齢での寿命を迎える頃に王朝の存続が揺らぐという考察(著者が書いてるんですが)が面白い。
自分が不老不死になっても絶対歳数えるし、そろそろ死んでもおかしくないんだなとか絶対に考える。その時心がざわざわっとするでしょう。
そしてどう考えても生きていない年数が経つと居直るという「もしも人間が不老不死になったら」のシミュレーションが完璧だと思う。
宗王一家、戦隊モノみたいで面白い。全員そっくりな字が書けるってなんだその地味な特技と思ったけど、きっと便利だ(というかずるい)。



扉絵が、ちょっとかぶってた。

『東の海神 西の滄海』記事の見出し画と
『帰山』の扉絵

ポニテの後ろ姿描きたくなるよねと、山田章博氏と肩を組みたい。



ここまでの十二国記で大変だった登場人物も、『風の万里 黎明の空』で「あいたたた〜」だった自分も、報われる様な一冊だった。

ん?講談社版では『黄昏の岸 暁の天』の方が先なのか。で、この次に『丕緒の鳥』。だいぶ順番が違うんだな。
新潮社版の順番の方が後発なのでやはり練られてるというか、親切な並びの様な気がする。特に『帰山』。『黄昏の岸』の前にこれを読めたのはありがたい。


読み終えてからこんなの作りました。

便利。

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