かばん2017年10月号

君に添ふ夢から覚める夢のなかの君がつらさうな顔をしてゐて

小佐野譚


月かげの遠さに人もごきぶりも路地をいでたり体ひからせて

(体=たい)

佐藤弓生


夜に風、ソーダの泡になっていく大好きだった主語のない星

みたかあめ


桃の実を削ぐ 切実というよりは腫れぼったさの線香花火

沢茱萸



スカイツリーを刺青となし根気よくまぶたをさすられている水

井辻朱美



装身具のみで男子学生を分ければピアスは孤高の光り

柳谷あゆみ



元号がはらりと変わるそのときも迷わず靡く十本の指

漕戸もり



さいきんの月は大きいと言ったのに 口先だけで肯定されてる

村本希理子



そんなこと信じなくていいアプリケーション宝箱まで向かって歩く

壬生キヨム



惑星の七つ並びて作りたる、触のある間のけらくの月影、或いは、水星の間

乗倉寿明



金ですむことはすませてそうじゃないことに集中するための金

島坂準一



咲き時を見失った紫陽花がペットボトルの夢をみる朝

牛島裕子



届かない言葉にふと気付く 遠い日声を失くしたこと

原田洋子




(かばん2017年10月号)





今年はドンペリはやめとこっかなー、と考えている夢をみてびっくりした。金色の歌がその日印象にのこっていたのも影響したのか、何やら金色の世界だった。わたしはドンペリは飲んだことない。

本質的な悩みにまだまともに出会えてもいない。悩むといえばいつも、目の前の都合にどう付き合おうか、付き合えるかということあたりで、工夫しながら運をくぐる訓練としてそういうのはとらえればいい。「到底都合がつけられないまま手渡すことについて」という課題とは、長く同じような状態で接しているままだと思う。

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