かばん2018年1月号

合わせ


美しくありたがってた汝のことが水寸前の氷のように、

母さん 世界はずっと悲しくて金魚は長く生きなかったね

鈴木智子



ただ走ることをよろこぶ子どもたちこの世に終わりはないかのように

あぢさゐの玉と思ひてみてゐしが小鬼のあまた円座をなせる

牛島裕子

飯島章友



特急の中で教わる雪深い森がかつては町だったこと

くらやみがまぶたの丘をつつむころ嘴を持つもの持たぬもの来よ

(「嘴」に「はし」のルビ)

木村友

佐藤弓生



あなたが初めてミスをしたらしい 天空で舞うビニール袋

田村聖也




天空へ飛ばされ、ここがどうあろうと天空「で」舞うビニール袋。無心に舞い、さまざまに形を変える何者か。意図や理由や役目や価値に何の判断も下さない、さまざまな白い光がここに降ってくる。

ビニール袋の歌大好きだ。ビニール袋の連作つくりたい。と思う。路上にあって、私たちの動き方や速度とは無関係な法則のもと動く生き物のようなビニール袋の姿にはっとさせられるし、ビニール袋の歌に印象深い歌が多い。


まぶたを閉じた世界と、まぶたを開けた世界。そのどちらもが、自らの知っている世界でない世界を感じ取っている有り様、のような合わせになった。




(かばん2018年1月号)

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