無理だ

無理だ。今さらそんなことを言われても絶対に信用できない。何が大丈夫になった? 問題が消えるわけはなく、隠れてまた見つけにくくなった。わたしはこれからますます不安で不安でこれまでよりもよりなんとか間に合わせようとするだろう、でもこれほどのことを間に合わせるのは自分にはとても無理だ。
いったいどうするんだろう。また同じことになるだろう、これまでずっとそうだったのだから。わたしが生まれる前からずっとそうだったのだから。おまえはずっとそうだった。おまえのそのまえのものも。母はずっとこうだった。母のなかに棲む母もずっとこうだった。それをわたしはよく知っているのだから。
母も自らのなかに棲む母のその腕が抱え損ねたもののことばかりを思っていたんだろう、ずっと。わたしのように。
これからどうやっていったらいいんだろう。
両腕ともそれぞれ縛られ、抱え損ねたもののあたりを睨みつけながら俯いてメトロを歩いているのがわたし。
そのわたしの目の前にいつか現れていた熱い白い滝が塊になる。白い塊は天井の低いまっすぐな地下の道に噴き出し、その道を奪い尽くす。

#超短篇


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