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かばん2017年8月号

いいえ、もう逝ってしまった人でなくあなたの為の白い花です

百々橘


群青の氏名なだめて水田は方言を抱く。そして隠した。

とうてつ


目覚むればすべてが厭になつてゐて黴雨沁み入る暁を聴く

佐藤元紀


はじめから読み直している道徳の本は浜辺の砂を吐き出す

漕戸もり


朝がきて乱れた髪を猫が噛むわたしを置いていかないで欲しい

柳本々々


この街に青色家族まいおりて命の話ばかりしている

土井礼一郎


人間の芯をなすのは純情で、境涯がその発露を定めん

久保明


月無き夜抱かれる身体はわななくか一たび二たび三たびまで

この夏も大透羽の幼虫は我を慕って群がるだろうか

池田幸生


ひかり、もうひとつのひかり。テーブルにこぼしただけの瞳と孔と

杉山モナミ


あのひからいくどめかのひがめぐりきてごまかすようにまつりばやしを

ミカヅキカゲリ






かばん2017年8月号






EKRITSから時無草の話が届き、夜、墓場の近くの溝にペットボトルのコカコーラが光り、自転車のサドルを高くしたら、

この秋。この秋は、


このことをこの世界の用語で言い直すようなことをしたくなく、どっか行きたいな。

いい歌ばっかし。やさしく胸倉をつかまれ、しんけんに問われているような気持ちにさせられる。




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