国宝展に行ってきた話

平日の午後だというのに上野公園内は人で溢れかえっていた。
路上で楽器を演奏する男性、その演奏に耳を傾けながらビールを飲む老人、肩を並べて銀杏並木を歩くカップル、園児と一緒に枯葉遊びをする保育士、みな和気あいあいとしており、会話に耳を傾ければ異国の言葉も飛び交う。

羽毛のダウンジャケットを着て来たというのに防寒どころか暑苦しいばかりの天気で、吹きすさぶ冷たい北風もなければ枯葉の下にできる霜柱もない。すでに冬を迎えた東北とは別の季節が広がっているだけではなく、時間の流れさえ止まっているようだった。田舎では平日の昼間から公園で遊ぶ大人はいない、学生であっても昼間歩いているだけでも不思議に思われる。それなのに公園内は大人も学生もあちこちに見えた。

人がいないことに慣れている田舎の自分は面食らった。すごい人の数である。都会に来るといつも人の多さに驚く。日本国内一億人いると言われても普段は実感できないのだが東京に来ると本当の事だとわからせられる。過疎化を考えるともう少しバラけてもいいように思われるが、都会に住む学生が普段からこういう風に身近に文化を触れる機会があるのだと思うと、田舎暮らしというのは、大きな損失を生まれた頃から被っているのかもしれない。

国宝展は敷地内に入ってすぐ真正面に向かい合う本館ではなく、その隣の平成館で行われている。迷子になる人が多いのか案内看板も立てられていた。
平成館に向かうと13:30の入場列が長く続いている。国宝展のチケットはオンラインでしか予約できないはずである。しかし目の前には3桁単位の人がいる。こんなに入って観れるのか…?という不安も抱きつつ入場。中にはオンラインチケットを持っておらずに列から抜け出す人も。ルールだと言われても納得できないようでいた。それはそうだ。普段の特別展であればチケットさえその場で買えば入れるのだから。
見ている限りでは障がい者とその介護者が待機列に並ばずに入っていた。公式サイトを見れば入場無料であり、事前予約も不要らしい。素晴らしい。この制度を知らないのはあまりもったいないのでここに記しておく。

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