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摂食・嚥下チームアシスタントレポートVol.7「呼吸と嚥下」〜胸郭可動域編④〜

はじめに

摂食嚥下チームアシスタントレポートにお越しいただき誠にありがとうございます。
東京オリンピックももう終わりますね!皆様いかがでしたでしょうか?ここ一番で活躍することの難しさや本領を発揮できることがどれだけすごいことかを感じ、オリンピック選手からたくさんの感動をもらいました!スポーツもリハビリ職も技術が大切だということを改めて実感した次第です。これからもコツコツとアシスタント実技練習を継続して技術を磨いていければと思います!

前回のレポートはこちら⬇

1. 呼吸や嚥下機能の改善に必要な思考過程

呼吸や嚥下機能の改善に必要な思考過程

これまでの胸郭可動域レポートでは、呼吸と嚥下の関係性の中で胸郭の可動域を出して一回換気量を向上させる必要性についてお話してきました。呼吸が上手く行えないと、食事場面でSPO2低下や呼吸数増加、呼吸補助筋の過活動により頸部の可動性が低下することで、嚥下反射惹起遅延や嚥下圧の低下が生じてしまうことがあります。

まずは視診で嚥下時の舌骨挙上範囲や筋活動を確認し、触診で左右差や筋緊張などを嚥下評価します。

そして胸郭の可動性に問題があるかもしれないと考察した場合は、胸郭の可動性を出していくために、肋骨(上部・下部)、肋椎関節(棘突起、背面筋の活動)、肋間筋、肩甲胸郭関節、胸鎖関節、肩甲上腕関節、胸肋関節などを部位別に評価していく必要があります。

さらに可動性が低下している部位があれば、その部位の関連筋にアプローチしていきます。

2. 肩甲骨の運動学

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肩甲骨は解剖学的に胸郭の背面に位置しており、上方回旋/下方回旋、挙上/下制、内転(後退)/外転(前突)といった運動が可能です。これらの肩甲骨の動きについては肩甲胸郭関節の運動として表現され前傾後傾といった動きも重要です。ここでの運動はあくまで現象レベルと考えられています。肩甲胸郭関節は一定の関節をもたず、胸鎖関節と肩鎖関節の運動が複合して生じています。

3. 坐位での肩甲骨の介入

なぜ座位で介入するのか?というと、座位で食事をすることは消化吸収に効率的なだけでなく、栄養吸収率も増加します。さらに意識や意欲等も向上し、日常生活動作をしていくなかで基本的な姿勢になるからです。

また、重症な呼吸障害の方は胸郭の可動性の問題もありますが、抗重力位の座位が保てない人が多くいらっしゃいます。抗重力位の中で肩甲胸郭関節の可動性を出していくと、抗重力筋と呼吸筋の両方を活動させるという目的があります。

<肩甲骨の持ち方>

肩甲骨の持ち方

背部の手は、母指で外側縁を走行する円筋群(大円筋・小円筋)・広背筋にかけ、4指は肩甲骨内側縁を走行する菱形筋・僧帽筋中部に触れ、筋収縮や筋緊張を触診します。

胸部の手は、大胸筋に母指をかけ、4指は大胸筋の鎖骨部(オレンジ)or胸肋部繊維(赤)を把持します。また筋収縮や筋緊張を感じつつ胸肋関節の可動性を確認します。

 このように、肩甲胸郭関節の可動性や肩関節の外旋、胸椎の伸展を確認しながら、筋肉の起始停止を考えて他動運動(可能なら自動運動)をします。そして、どの筋が収縮しにくいのかを確かめ、その筋が収縮しやすい位置にアライメントを整えます。
 反復するうちに目的とする筋の可動性と筋緊張が向上するのか、鎖骨や肩甲骨の位置などが変わるのかをみていきます。

<治療ポイント>
・このときの操作は、手で動かさないで、自分の重心移動を使いましょう。
・また、母指と4指は交互に固定と運動を反復するので、虫様筋握りで把持して動かせるようにします。
・肩甲骨を動かすことに集中しすぎると代償動作に気づけないので、周辺視野で全身を評価することを意識していきましょう。
例)・体幹の側屈・回旋や頭頸部伸展等の代償運動が出ていないか?
 ・重心(Th7の位置)や坐骨部分の支持基底面を感じることを意識しましょう。

4. 実技アドバイス


①筋緊張が高くて胸郭が硬く肩甲骨内転が生じにくい場合

肩甲骨の持ち方1

マッサージで循環改善を図る。加えて、筋の長さを出すために、まず外転方向へしっかり動かしてから内転方向へ大きく動かします。この場合、姿勢を崩して粗大運動をするのも一つの方法です。

②背面筋が硬く肩甲骨の外転が生じず体幹が回旋してしまう場合

肩甲骨の持ち方2

この場合、被験者の前面から対面姿勢になり、背部に手を回し対側の肩甲骨をとめます。
肩甲骨をまず内転方向へゆっくり動かして菱形筋や僧帽筋中部〜下部繊維を収縮させてから外転方向へ動かします。

まとめ

今回は、食事中の1回換気量向上や咳嗽力向上を目的に「胸郭の可動域」を広げるための座位での肩甲胸郭関節の評価、治療についてお伝えしてきました。
 臨床場面では常に仮説〜評価、治療⇄効果判定の繰り返し行う事が重要ですので、必ず嚥下と呼吸機能の評価を行なってから介入しましょう。

おわりに

これからも解剖学や運動学、実技だけではなく、臨床で必要な思考過程も含めて共有させていただきます同じ嚥下障害に悩む患者様を担当されているセラピストの皆さんに一人でも多く知っていただき、一緒に嚥下障害を治療していく仲間が増えることを私達摂食嚥下チーム一同願っております。

一人でも多くの皆さんに知っていただけるよう、私達の活動を応援していただけると幸いです。今後も摂食・嚥下アシスタントレポートを宜しくお願い致します。

ごあんない

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