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摂食・嚥下チームアシスタントレポートVol.6「呼吸と嚥下」〜胸郭可動域編③〜

はじめに

 摂食嚥下チームアシスタントレポートにお越しいただき誠にありがとうございます。
コロナウイルス感染拡大の不安感は、ワクチン接種が進み少しずつ軽減していくと思いますが、思うように集まって練習することはまだまだ難しい状況です。そのなかでも私たちはオンラインで嚥下障害の方をより効果的に治療ができるように練習を続けています。引き続き、実技練習で学んだことをこのレポートで共有させてもらいますのでどうぞよろしくお願い致します!

前回のレポートはこちら 
 胸郭可動域編② 〜寝返りと胸郭をみるポイント〜

このシリーズでは、食事中の1回換気量向上や咳嗽力向上を目的に「胸郭の可動域」についてお伝えしています。
前回のブログでは ①肋椎関節の評価 ②背面筋の評価 ③腹圧の変化を感じる についてお話しました。
今回のブログでは「胸郭の可動域」を広げるための ①肋間筋の評価 ②肩甲胸郭関節の評価 についてお話していきたいと思います。

1.肋間筋の評価

肋間筋の評価

・肋間筋には外肋間筋(逆ハの字走行)と内肋間筋(ハの字走行)があり交差型の走行です。
・体表から肋骨の走行をイメージして、肋骨の間に指を沿わせます。
・呼吸時に動きの悪い部分や肋間が狭くなっている部分を評価し介入します。
・相手の呼吸に合わせて肋骨の軌跡についていくようにしましょう。

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〈触診時のポイント〉
・指先で押すと痛みが出やすいため指腹で触れておく程度にします。
・相手の呼吸時の胸郭の動きに合わせて自分の身体の位置や介入方向を調整し、動きを阻害しないようにようにしましょう。

2.肩甲骨と胸郭の運動学

肩甲骨と胸郭の

まず、肩甲骨が内転・下制すると胸郭や胸椎の動きはどうなるでしょうか?
本日のテーマである肩甲胸郭関節を考える上でとても重要な運動学になります。
肩甲骨が内転・下制すると、胸郭は後方回旋し胸椎は伸展します。
逆に肩甲骨が外転・挙上すると、胸郭は前方回旋し胸椎は屈曲・円背姿勢となります。

3.肩甲胸郭関節と周囲筋

肩甲骨と胸郭の間を肩甲胸郭関節といいます。

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肩甲骨と胸郭の動きに関係する筋肉はたくさんありますが、今回は前鋸筋・広背筋・大円筋・小円筋を意識しながら評価していきます。

肩甲骨周囲筋


4.肩甲胸郭関節の評価

肩甲骨内側縁と外側縁を把持

【肩甲胸郭関節の評価】:側臥位
上の写真の場合、左手で肩甲骨を持ちますが、まずは内側縁・外側縁をきちんと把持できることが大切です。右手は肋骨(前鋸筋や大胸筋)に沿わせます。上記で述べた肩甲骨と胸郭の運動学を意識しながら肩甲骨を動かし可動性を診ていきます。

肩甲骨を内転・下制することで胸郭が後方回旋し胸椎が伸展するか?肩甲骨を外転・挙上することで胸郭が前方回旋し胸椎が屈曲するか?を最終可動域まで動かし、呼吸や寝返りなどADLで制限になる制限因子を評価します。

さらに、肩甲胸郭関節だけを動かしどの方向に動きにくさがあるかでどの筋肉が肩甲骨の動きを阻害しているかを評価していきます。

〈触診時のポイント〉
・自分の体で体幹を止めておくと代償動作が出現せず評価しやすいです。
・評価する際に肩甲骨に集中しすぎると、肩甲骨の動きに伴って肩関節や体幹、頭頸部の代償動作が出現することがあるで常に全体をみて評価しましょう。

【どちらの肩甲胸郭関節を治療するか?】

臨床で大切な思考過程

今回、肩甲胸郭関節の評価についてお伝えしていますが、まずは食事場面等での嚥下評価をすることが必要です。呼吸と嚥下シリーズでは、嚥下機能や食事摂取量の低下の原因が評価した結果、呼吸機能(一回換気量の低下)であった症例についてお話ししています。
例えば、右の肩甲骨が外転しておりが翼状肩甲になっている症例の場合、右の肩甲胸郭関節の可動性の低下が胸郭の可動性の低下の原因だと評価した上で肩甲胸郭関節の治療を行います。そして、再度嚥下評価を行い効果判定を行っていきます。必ず介入前後で嚥下評価をしていくことが大切です。

まとめ

今回は、食事中の1回換気量向上や咳嗽力向上を目的に「胸郭の可動域」を広げるための①肋間筋の評価 ②肩甲胸郭関節の評価 についてお伝えしてきました。ポイントは以下の3点です。

①肋間筋の評価は体表から肋骨の走行をイメージして、肋骨の間に指を沿わせます。この時、強く押さずに相手の呼吸に合わせて肋骨の軌跡についていくようにしましょう。

②肩甲胸郭関節の評価では肩甲骨の内側縁・外側縁をきちんと把持できることと、肩甲骨と胸郭の運動学をイメージしながら肩甲骨を動かしていくことが大切です。

③肋間筋や肩甲胸郭関節への介入前後の嚥下や呼吸機能の変化を必ず評価しましょう。

おわりに

 同じ嚥下障害に悩む患者様を担当されているセラピストの皆さんに一人でも多く知っていただき、一緒に嚥下障害を治療していく仲間が増えることを私達摂食嚥下チーム一同願っております。一人でも多くの皆さんに知っていただけるよう、私達の活動を応援していただけると幸いです。今後も摂食・嚥下アシスタントレポートを宜しくお願い致します。

ごあんない

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