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子の言語習得が、嬉しくて勉強になる

言語習得サービスの会社に入ってしばらくした頃、自分もその領域についてある程度語れなくてはと思い、社内のエデュケーション担当の方に「いい本無いですか」と聞いたところ、こちらをおすすめされました。

「第二言語習得論」のおすすめ本

これが、まーおもしろい。かなり平易に書かれており、読みやすいのはもちろん、自分の英語学習の体験と照らし合わせながら「あるある〜」「そういうことだったのか〜」と感じたり、色々な理論を知ってあらためて自社プロダクトへの納得を高めたり。

追加でおすすめいただき、現在はこちらを読んでおります。

なんでこんなに面白く感じるかって、(もちろん仕事に関連してるからだけど)現在子が2歳、「まさに言語習得しはじめた!」ところだからに他ならない。もちろん母語の獲得と第二言語の習得に違いはあるはず、でも言語習得に関する理論の端々に「あれもこれも子に当てはまる〜」と感慨深くてしかたないのです。

ということで今回は超個人的・親バカ投稿として、子の発語の変遷を書いておきたいと思います。書かないと忘れちゃうし、忘れるにはもったいなすぎる。

初めての言葉らしい言葉は「イッチ」

ずっと前に、よく喋る人の子はよく喋るという都市伝説(?)を聞いたことがあったので、生まれたての頃から「実況中継」を心がけておりました。例えば「ズボン履くよ〜、はい右足(右足ポン)、足入れて、ぐーんと伸ばして。こんど左足(左足ポン)、また足入れて、ぐーん。前あげて、後ろあげて、できた〜」といった調子。うるさい母ちゃんでごめん。

それでも、1歳すぎまで「あー」「うー」的なものだったのですが、ある時、冬で食卓にイチゴが登場しがちだった頃、彼が突如「イッチ」と発しました。ついに言葉らしき言葉が登場したかと、思わず「そう〜イッチ、これが"イチゴ"だよ〜〜〜」と(過大に)賞賛。正直、彼がイチゴを指していたのかは定かでありませんが、赤くてつぶつぶした甘いものを指さしてイチゴイチゴと連呼する大人に、きっと「そうかこれ、イチゴなのか」と彼は理解したことでしょう(たぶん)。さながら、water~~! と叫ぶサリバン先生の気分でした。

しばらく続いた「アッチ」期

その後、机を叩く彼に「テーブル、だよ」、時計を指さす彼に「時計、だよ」、シーリングライトを指さす彼に「電気、いや灯りか」、床を指す彼に「床、ね」など、名詞を答える日々が続いたものの、その頃多用されたのはまさかの「アッチ」でした。こそあど言葉、難しいんじゃなかったの?でも確かに彼が「アッチ」と言えば大人が動く。アッチ行きたいの?アッチのアレ?それでなんとなく「この言葉万能だな」くらいに思ったのかも。

頭文字だけの発話でクイズな日々

そうこうするうちに今度は「ト」と言い始めました。絵本に出てくる時計と実物とを指さし、「ト!ト!」と言い、同じだと教えてくれるわけです。
それから「み」とも言いました。これはみかん。ごちそうさまは「ご」。保育園の話をしていると「ナ」とも言います。あぁ、ナオ先生ね。「リ」はリナ先生。どこまでも頭文字だけで行くつもりらしい。でもなぜか、私の友達の「アイさん」だけはそのまま全部言えるどころか、遠くから叫んですらいた。なんで?好みだった?言いやすかった?

でも一緒に暮らしてると意外とこれでも用を成すもので、「チ」と言われれば、食事時であれば「チーズ」でしょう、「ぺ」と言われたら、視線の先にある「ペン」を取れば満足げ。時々、頭文字クイズみたいになってなかなか当たらないこともあったし、分からないふりしてみたりもしましたが、しばらく頭文字期は続きました。

ただこの頃から、こちらの言っていることは理解できていたようです。相変わらず実況を続けていると予測しつつ動いてくれたり、「テーブルの上の◯◯取ってくれる?」など簡単な指令を遂行してできたりして。これが本にもあったproductive knowledge < receptive knowledgeということなのね!と感動したもんです。

その後は必要な言葉から

次第に「あく(歩く)」「ビカー(ベビーカー)」「あっこ(抱っこ)」「あむー(食べ物、食べる)」と語彙が増えていきました。面白いくらいに彼にとっての必要な単語から学んでいくものです。歩きたい!ベビーカー乗りたい!抱っこして!食べたい!生命そのもの。あと「ぐゅーー(牛乳)」とも言ってたな、懐かしい。

しばらくすると、「〜ナイ」という活用にも気づきました。「あるか・ない」「たべ・ない」「いか・ない」。確かに基本形だけだと表せないこともたくさんあるよね。なるほどねぇ。

相当経ってから「おトゥ」

ちなみに彼はこの頃まで「ママ」だの「パパ」だの発していませんでした。うちはそもそもパパママって柄じゃない、と「おとうさん」「おかあさん」で通していて、一方で世の中(特に関東?)のメジャーはおそらくパパ・ママ。

ある時「おトゥ」と言い始め(先越された)、そのうち、「おカァ、パパ?おトゥ、ママ?」、いや逆だよ、という会話が始まったので、もしかしたら、共通概念として認識しづらかったのかもしれません。ちなみに今は、彼なりに愛称である「ちゃん」をつけてくれて「おトゥちゃん」「おカァちゃん」になり、帰宅すると玄関で「おカァーちゃーん!」と叫びます。なんか昭和初期の子みたいだけど、かわいいからいいや。

ある時、超自然に「おかえり」と

2歳になって少ししたころ、気づけば頭文字だけでなく少し発音が未完成ながらも単語全体を発するようになり、やりたいことを明確に言うようにもなっていました。「おカァ、すわる!◯ー(自分の名前の頭文字)、あらう!」=自分が洗い物するんだと張り切るなど。

そして、ある時、ものすごく自然に、帰宅した父親に「おかえりー」と言ったのでした。あまりの自然さに、うっかりスルーしそうになるほど。でも彼は見てたんでしょうね、「人がどこかから帰ってくる」→「オカエリ」と言う、と。これがシチュエーションとフレーズをセットで覚えるってことかぁと、これまた自社プロダクトに照らし合わせて感激したのでした。

おもちゃを巡るサバイバル語

「シチュエーションとフレーズをセットで」といえば、2歳過ぎてしばらくして驚いたのが、おもちゃを片付けようとすると「◯ー、いま、つかってる!」と怒ってきたこと。あと「けんかする!」とも言い始めました。いずれも使ってるおもちゃをまだ使いたい時に出てくるフレーズで、あぁ、昼間、お友達とおもちゃを巡って必死にやりあってるんだなぁ、これも彼にとっては日々を生き抜くために必要なフレーズなんだなぁとまたもや感動。いいよいいよ、家でくらい、好きに遊んでおくれ。あ、けんかの練習もする?いいよやろうやろう。ちなみに家で「けんかする!」と言う彼はむちゃくちゃ笑顔です。取り合い、楽しいの?大変なの?どっち?

[もう/まだ]、[ぜったい/たぶん]など英語でも難しいやつ

何かを指しては「これなんだー?」を繰り返すようになってから急速に語彙が増え、最近(もうすぐ2歳半)では、舌足らずながらも「いっしょにいたいよ」「おいしいね」など気持ちも表現してくれ、「誰、なんだー?」と人の名前を聞く社交性まで発揮して驚く毎日。一方でよく言い間違えるのが「もう・起きてる」「まだ・行く」(「まだ起きてる」「もう行く」の間違い)。あと面白いのが、「ぜったい!」と言ったあとにやっぱり自信ないやと思い直すのか「たぶん」と言い直す時。already/yet、definitely/perhaps, often/rarelyなど結構英語でもちゃんと覚える必要がある表現だった気がします。

期間限定に違いない発音

発音も興味深いもので、「せーの」と言いたい時に「せーご」と言ったり、「テレビ」を「てびり」と言ったり。てびりは友達の子でも聞いたことがあるので、何か発音しやすい母音の並びなんでしょうかね?「さん」もまだ言えないみたいで、「ちゃん」となります。よって、はいしゃちゃん、びようしちゃん、おうまちゃん、と揃って可愛い感じになる。

文法や用法の違いは、その場でやんわり修正版を口添えしておくものの、「せーご」は可愛くて、できれば長く聞いていたくて、言い直さずにおいてしまう。いつか気付けば普通に言っていて、普通すぎて変化したことにも気づかないんだろうなぁ。

子の2歳半までを見て分かったこと

ここまでの彼の成長を見て実感したことは
・発話に先んじてだいぶ理解できている(Productive<<<Receptive、難しい言い方なら分からないでしょ、とはあなどれない)
・彼のサバイバルに必要なこと、話せると楽しいことから学ぶ
・伝わるのに必要なだけ、学ぶ。どうしても伝えたい時むちゃくちゃはっきり発音する
・言いやすい/言いにくい発音がある
・社交性とお喋りはそれなりに関連

など。まあ、先の長い道のりだし、ゴールもないし、言葉だけがコミュニケーションでも無いので、今後もただただ彼とのやりとり自体と観察を楽しみたいと思います。

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