龍スカジャンができるまで①(刺繍のための準備編)
龍のスカジャン制作のために準備したものや製作中に思ったことなどの記録です。
大きめのフリーな刺繍をする時の参考になればと思います。
刺繍の下絵のこと
刺繍枠のこと
刺繍の下絵について
今回はジャンパーの背中中央に直径30㎝ほどになるように下絵を作りました。
まずは紙に小さくラフに絵を描き全体の形を決めます。
龍の姿かたちに関しては一応ごく浅く勉強してみたのですが諸説あり、自分のイメージに近いのは実家で使っていたラーメンの丼の茶色っぽい赤と緑でプリントされた中華風の龍で、日本のお寺の天井にいる龍と結構雰囲気が違うのですが自分が最後までどうしようか悩んだのは龍の背中の背びれ風の物体でした。中華龍はあの部分がたてがみ、つまり「毛」のものをよく見るのですが魚の背びれそのものだったり日本のお寺のものはもっととげとげしたステゴザウルスの背中にあるような物体だったり製作する人それぞれに違っていて、そこに単なる流行ではない何か決め事があるのかなとも思ったのですがそうでもなさそうにも感じて自分も適当にすることに。
他にも龍はよく「火焔」をまとっているのですが大抵の横から見た龍は腕や脚の付け根部分から火が渦巻いて伸びており、付け根部分がいったいどういう形状をしているのか判り難かったりします。龍の全体像を考える時に一番構造を知りたい部分はいつも炎や雲で隠れていたりするので「まあそういうことだ」と諦めて
下絵の段階から「こうはならんやろ!」と自分につっこみながら作業をしてまいりました。
そしてこの時の絵には陰影は全くなく幼児向けの塗り絵の線画と同じ様相です。
鱗は全て描きましたが顔の内容も大雑把でした。
なので刺繍によってどうなっていくかは全く予想が出来ませんでした。
龍のまわりに小さい雲を配して鉛筆線の下絵が出来ました。これを一度ボールペンでなぞって鉛筆線を消し、はっきりした下絵を作りました。これはまだ必要な大きさよりは少し小さかったので110%ほどに拡大コピーしました。コンビニで。
最終的にはA3用紙からは雲が一部はみ出る大きさとなりました。(念のため2枚)
この後、もとのやや小さい下絵のほうに色鉛筆でざっと色を縫ってみました。
正しい3Dを意識することもとても難しかったのでほとんど平面アニメ的な表現にとどまりました。
私は普段猫や犬の写真を見て刺繍しており、多少色合を操作しながら刺すことはありますが基本的には写真になるべく近い色使いをするわけです。
刺繍家の友人で下絵から創作し、それを刺繍に仕上げるかたがいるのですが彼女は下絵段階がすでに「作品」と言ってよい絵で、それに忠実に刺しておられます。本当はそうするのが良いのだろうな…とは思ったのですが、面倒でもありほとんどぶっつけ本番で刺し始めました。鉛筆なら紙の上で楽々できてしまうことでも糸でやるのは結構大変ですよね。そう思うと、絵の方で色々作りこんでもその通りにはできないなという諦めの方が強くて「まあ、緑にしようかな?」程度で刺繍に入ったのです。
布は後ろ身頃の丈・身幅より二回りほど大きめに長方形に裁ち、水平垂直が分かるように糸で端に印をつけました。その後布との間にチャコペーパーを挟んでコピー用紙のままいつものように書けないボールペンでなぞって下絵を写しました。刺繍に長期間かかると思われたのでかなりしっかり写しました。鱗が多いので写し終わるまで1時間くらいかかってしまいました。
刺繍枠のこと
普段は15~20㎝の丸い刺繍枠しか使わないのですがこの刺繍をするにあたって大きめの枠を用意したいと思いました。小さな枠で少しずつずらしながら刺していくという手もありますがまわりの布の処理を考えると何度もずらすのは避けたいところです。さらに30㎝の枠だと端の雲の刺繍が刺せないので35~40㎝のものが必要でした。
大きめの布のための刺繍枠というのは日本刺繍のように枠に直接布を縫い張っていくタイプやぱかっと四角い枠で裏表から挟むタイプや巻きとっていくようなタイプなどいくつかあるようですが大きなものというのは片手で持って刺すという前提がないです。枠自身が机のようだったり専用のスタンドが必要になります。
自分にはここが大変ネックになりました。更に大型で丸い枠は主にキルトに使われるもので刺繍枠の倍以上の厚みがあり重いです。これを(私は右利きなので)左手で支えて刺すというのは不可能と思われ、最初は普通のキルトフープスタンドを購入するかで悩みました。中古のお安いものを見つけましたが、大きさで躊躇したのと、何よりこういったスタンドを使うと椅子に座って作業せねばならず、このことで迷いました。
私は炬燵派、夏でも座卓派なのでフープスタンドで大きな枠も挟めるタイプはないかとものすごく探しました。ネットで手作りの刺繍用スタンドを製作販売しておられるお店がいくつかみつけたのですが、たまたま目についたお店のスタンドのフープを挟む部分が他のお店のものより大きい?と感じて問い合わせたところ、そのスタンドで30㎝以上の枠を挟むのは厳しそうでしたがそれとは別に本来他のやや特殊な刺繍用のスタンドが私の探しているものに近いということが分かりました。座卓に設置できる譜面台のような構造のもので二本の腕の角度や高さがいくつか変えられるす。私は左手で針を扱うことはなく枠に沿えて布の裏を探ったりするのですが、この台なら刺繍枠の重さを左手で受けることなく普段のように使える気がしました。お店の方とも相談して「これがいいな‥」という所まで来たのですがその品は販売が終わってしまっていてちょっと形を変えた新作が2月中旬から販売される予定になっていました。2月中旬といえば何とか刺繍は終わっている(実際には3月までかかってしまいましたが)ことが予想されまして、今回は見送りました。
散々探して遂に見つけたものが購入できないとなるともう代替品に気持ちは動きませんで、結局35㎝の大きな枠を炬燵の天板(の厚み部分)と自分の胸の下あたりで挟むようにして左手も添えて抱えるようなおかしな姿勢で刺すことになりました。
(余談ですが、この姿勢になった時に有吉和佐子さんの「恍惚の人」という小説の主人公の認知症の舅がお釜から直接ご飯を食べているという描写を思い出しました。)
このおかしな姿勢、初日は「明日はさぞかし体のあちこち痛いだろう」と想像していたのですが存外どこにも痛みはなく2~3日で持ち方にもすっかり慣れてしまいました。
なのでまたこの35㎝枠を使うことがあれば恍惚の人スタイルでいく予定です。
35㎝刺繍枠は籐製と竹製があり、お値段の安い竹を選びました。そのせいというわけでもないと思いますが何分大きいので外枠も内枠も正円ではなくどう合わせても隙間の空く部分ができました。
そこで合わせる向きを確認したうえで内枠の隙間のある部分が厚めになるようにバイアスに切った布を巻きつけました。これは滑り止めでもあります。
また、外枠の調節ねじの土台を取り付けてあるハトメ(?)も完全に木に埋まっておらず布にくっきり跡がつくことが予想されたのでその部分にも薄いスポンジを仕込んでバイアス布を巻きました。
そして刺繍布よりやや小さめの布に直径33㎝ほどの丸い穴を抜いて汚れ避けのかぶせ布として刺繍する布と重ねて枠にはめました。そのあと刺繍布の余った部分を適当にまるめてさらにかぶせ布で包み込むようにし、かぶせ布を内枠のバイアス布に軽く縫い付けていきます。これで刺繍布の余白部分がかぶせ布の中に納まって汚れや傷みを防げるわけです。
ここまでで準備完了です。
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