#24,#25 家族の機能⑫⑬ 「コミュニケーションのズレはなぜ起こるか?」

コミュニケーションとは何か

1)情報のやりとり、4つのプロセス

①送り手のなかで何か伝えたいことが浮かぶ(感覚・感情・考えなど)
②伝えたいことを記号化(言葉、表情、しぐさなど)して送信
③送信された記号を聴覚、視覚を通して受信
④受信した記号を脳で解読する

①と④にズレがなければ、「理解し合えた」「分かり合えた」関係が成立

2)コミュニケーションのズレとは

例)妻:私、頭痛いの
  夫:じゃ、頭痛薬飲めば
  妻:あなた、何もわかってない!(怒り)
  夫:???

頭痛を感じた妻の頭の中
頭が痛い、ああ困ったな。ちょっと休みたいな。心配してくれたら嬉しいな。
子どもの寝かしつけ、今夜は夫に替わってもらいたいな

記号化されたのは「私、頭痛いの」

受信した夫の頭のなか
頭がいたいのか、頭痛を直すには薬を飲んだほうがいい
とにかく問題解決だ!

①と④のズレ
同じものを見ても、同じ体験をしても、どんな記号を選択するのかは、送り手の感情、価値観、人間観、世界観 自己概念 パーソナリティーなどが強く影響する
同じ価値観の人はいないので、何らかのコミュニケーションエラーは必ず起こる

3)どこでコミュニケーションのズレが起こるのか

(1) 内容レベル(コンテント)と関係レベル(コンテクスト)とのズレ

例)頭が痛い→頭部に痛みを感じている(コンテント)
ああ困ったな。ちょっと休みたいな。心配してくれたら嬉しいな。
子どもの寝かしつけ、今夜は夫に替わってもらいたいな(コンテクスト)

内容レベル(報告)
関係レベル→メタ・コミュニケーション(要求)

メタ・コミュニケーションを読み取らない、読み取りのエラーによって人間関係がギクシャクする

① 読み取らない例

妻:〇〇さん、この夏、ご夫婦で海外旅行に行くんだって(私たちもどこか行きたいわ)
夫:どこ行くの?
妻:イタリアかスペインだって
夫:何日間?
妻:知らないけど・・
夫:夏っていつ?
妻:知らない・・・(沈黙)

<望ましいコミュニケーション>
妻:〇〇さん、この夏、ご夫婦で海外旅行に行くんだって
夫:そうか、海外旅行か。ずっとコロナで行けなかったもんなー。
妻:〇〇さんは、イタリアかスペインに行くみたい。
夫:イタリアかぁ。イタリアへは一度行ってみたいって言ってたよな。ちょっと俺たちも考えてみるか。
妻:嬉しい!ここ3年間、どこへも行かずに頑張ってきたからね。
夫:そうだなーーー

(2) 内容レベル(コンテント)と関係レベル(コンテクスト)とのズレ:二重拘束説(ダブルバインド ベイトソン)

内容と関係レベルの不一致
二重拘束のメッセージは、素直な反応を不可能にし、どう反応してもメッセージを発した人の意には添わないわけで、反応することは不可能
受け取る人を身動きできないような状態に陥れる可能性をもち、関係性に大きな障害になり得るコミュニケーション

「好きにしていいのよ」と言いつつ、厳しく硬い表情

メッセージの受け手は混乱
このような関係を一定の関係のなかでさせられ続けると、どんなメッセージでも二つの意味をかぎ取ろうとする受け取り方のクセがつき、二重拘束ではないメッセージにも疑い深くなり脅威を感じやすくなる

一般社会でも
「わが社は社員の自主性を重んじる」と言われる一方で何かの案件について相談にいくと、「そんなことも自分で判断できんのか!いちいち相談に来るな!」と言われながら事故が起こると「何で相談しなかったんだ!」と怒られる

メッセージの送り手は、自分のメッセージが矛盾していることに気が付かない

(3)自分が発しているメッセージに気づかない

人間の行動はすべてコミュンケーション
言葉、身振り手振り、表情、姿勢、服装、動作、声の調子などすべてがコミュニケーション コミュニケートしないこともコミュニケーション
ひきこもる口をきかないことで、実はパワフルなメッセージを発信している

「私、何も言ってないのに・・・」「黙っていればいいんでしょ!」

(4)句読点の打ち方の違いによるズレ

継続する関係性においては、相互交流は無限の情報交換
どこを切り取るかによってズレが生じる

例)
夫:ちゃんと言ってくれなきゃわかないじゃないか
妻:言いました!言ったって聞いてくれないじゃない

夫:キミがガミガミうるさいからますますやる気が出ないんだよ
妻:あなたがいいかげんだからガミガミいわなくちゃならないのよ

どちらが原因でどちらが結果かかの不毛な議論

夫:ちゃんと言ってくれなきゃわかないじゃないか
妻:言いました!言ったって聞いてくれないじゃない
夫:聞いてなかったか・・。聞いてるつもりだったけどな・・。そうか、ちょっとショックだな
妻:まぁ、私も言葉足らずだからね・・。私にも反省しなくちゃけないところはあると思う。
夫:二人とも、どっちもどっちってことか
妻:そうね・・・。気をつけなくちゃね

4)コミュニケーションパターンの固定化

相称的コミュニケーション
二人そろって自分を主張する。お互いが相手の火を燃え上がらせる薪として機能する時に、二者が常時対立する関係を招く

① ポジティブフィードバック
夫:食事もすんだし、どっか行こうか
妻:そうね、お天気もいいし
夫:映画なんかどう?
妻:あら、私も見たい映画があったのよ
夫:そりゃ丁度いい。すぐ支度するか
妻:あたしもすぐに出られるようにするわ

② ネガティブフィードバック
夫:食事も済んだしどっか行こうか
妻:あなたの行きたいところなどこへでも
夫:えっ、きみこそ、行きたいところはないのかい?
妻:私はいいのよ
夫:そんなこと言ったって。どっかあるだろう、行きたいところ
妻:だから私はいいのよ。あなたはいつも帰りが遅いから
夫:そりゃそうだけど・・。そうじゃなくてさぁ・・・。僕はキミが行きたいところへ連れていきたいんだよ
妻:だから、私はいいのよ。たまのお休みなんだから、あなたが行きたいところへ行けばいいのよ。そう言ってるじゃない
夫:じゃ、もういいよ

③ 相補的コミュニケーション
一方は優位あるいは主導的な立場をとり、相手がそれにブレーキをかけるようなかかわり方をする。濡れ雑巾型。距離が開く。
夫:食事も済んだし、どっか行こうか
妻:そうねえ、でもまだいろいろやることが残ってるのよ・・・
夫:そんなの後にしとけよ
妻:でも・・・
夫:きみはいつもそうなんだ
妻:…席を立つ

どちらが良くてどちらが悪いということではない
どんな二者関係も、「どちらかといえば」どちらかに傾く
大切なのは、どちらか一方にくぎ付けにならないで両者の使い分けができること
対称型にも相補的にも自由にふるまうことができる柔軟性
アクセルとブレーキ

固定化すると、話し合う前に結果が予測できてしまい、関わりが少なくなりがち

自分たちのコミュニケーションパターンを振り返ってみることの大切さ

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