#43,#44 家族の発達段階「乳幼児を育てる段階(養育期)」

1.人間の子育ての特徴

1)強く長期にわたる関係性
母親は、9か月間という長期の妊娠期間。親と子が相互に求めあう結合・愛着の関係はあらゆる種のなかで最も強く、そして長期に続く。

2)破格に長い親子関係
他の動物では、自分で餌を取り外的から身を守れればもう「おとな」
身体の成長のみならず、社会的ルールや道徳、社会で生きていくための知識やスキルを身に着け、自分の考えや価値観、アイデンティティを獲得するなどいくつもの発達課題があります。そしてそれらの達成に親が必要とされ、親子の関係が続く。
一方が死ぬまで、あるいは死後も形を変えながら生涯つづく

3)対立・葛藤を内包する
哺乳類の繁栄、つまり子どもを産み育てることは、親の資源の投資です。子育ては、自分の体力、精神的エネルギー、時間を子に投資する営み。
自己の有限である資源をどう配分するかは常に葛藤をはらむ問題(子育てによって、自分のキャリアを中断せざるを得なかった、本も読めず、コンサートにも行けなくなったなど)
人間では、自己への投資と子への投資とのバランスをいかにとるかが解決の鍵。

4)体験のなかで育まれる養育力
哺乳類である人間にとって、子宮と乳房をもつ母親が養育の第一段階を担っています。しかし、母親のみならず、父親がその後も長く養育に関わるのも人間ならではの仕組み。父親が母親にも劣らない有能な力と愛情で育児ができるのも人間の特徴。

5)文化としての育児
人間の親子・子育ての特徴は、多様性にある。その差を生み出すのは、「子どもの自立を重視するか母児の相互関係を重視するか」といった発達観の違い、さらには「親子関係を重視するか夫婦の関係性を重視するか」、「子どもにとっての最善を追求するか、家族生活のバランスを重視するか」といった家族観の反映。
子育ては、生物学的な営みではなく、その国や地域がどのような人を「望ましい人間像」として捉えるのかが投影された極めて文化的な営み。

2.第1子出生直後~数年間は家族危機好発期間

マタニティーブルーズ:30% パタニティブルーズ:
産後うつ病 母親1割 

1)ママの体験

①生活時間
・自分の時間はゼロ/赤ちゃんに時間をのっとられる/何かしていても、赤ちゃんが泣けば強制終了
・何事も自分のペースで事が進まない
・切れ目も終わりもメリハリもない一日/常に半分は戦闘態勢・緊張感
  「ああ、疲れた~、ちょっと休む」という夫 「いいよね~」

②身体的環境の変化
・出産は交通事故にあったと同じダメージ(全治10か月) 傷、筋肉やじん帯の損傷、貧血
・睡眠不足 超ブラック企業(50日連続夜勤)

③精神面
・ホルモンバランスの急激な変化 一夜にして最高値から老女レベルに
・命を預かるプレッシャー

④社会的環境の変化
・あくまでも主役は赤ちゃん、自分はサブ
・外出できない、話し相手がいない
・無収入の不安、立場の低下、自己の存在のゆらぎ
・孤独で自己評価が低下しがち

○育児に必要な力
・パズルのように1日を組み立てる構成力
・赤ちゃんの状態を把握するパターン認識
(画像や音声など膨大なデータから一定の特徴や規則性のパターンを識別する)
・機嫌を見通して備える計画性
・強い体力
これらを総動員して全体をマネジメントし、マルチタスクをこなす
起伏の少ない作業を延々と続け、モベーションを維持していく力

2)パパの体験

○育児や家事を軽視しない 家にいられていよな・・・ はNG
家事や育児を侮辱しないで
そのうえで
一日20分の息抜きで頑張れる
抱っこしているからゆっくり食べて が嬉しい
時間どろぼうからママを救い出して 今を感じさせて
ママのコントロール観を取り戻させて

「仕事だからしょうがない」
収入を得る責任は確かにある
「仕事だからしょうがいないけど、できることは100%やろう!」(期間限定)

3)夫婦の関係性

第1子出生後、の夫婦関係の変化
配偶者といると本当に愛していると実感する
妊娠前 妻74.3%→34.0%
    夫74.3%→51.7%
一度落ちた結婚満足度はなかなか上昇しない

妻 夫と子育てを分かち合えない孤独感→不信感→嫌悪感
妻にある想い  パパだけ特権階級(仕事なんだからしょうがないだろう)

○パパ
手伝ってるよね。仕事も頑張ってるし。
そんなに大変なの? もっと子育て、楽しみなよ!

○ママ
なんでわかってくれないの?
仕事行けてうらやましい
眠いし痛いし もう限界
やる気あるの?

育児は、眠いし、痛いし、汚いし、臭いし、暑いし、寒いし、うるさいし、イライラするし、
いいとこ取りして育児をした気にならないでよ!
なんで私だけ?アンフェアじゃない。

関係がギスギスする
・不機嫌(ため息、目を合わせない)/怒り出す/指示だし/無言/規制

夫婦関係に深刻な傷となるコミュニケーション
非難、侮辱、自己防衛、遮断

自分の意図や感情を相手に伝えるコミュニケーションスキルが高い妻
夫に理性的な主張をする妻
夫からのサポートを引き出し、夫婦関係の質もそれほど悪化しない

パパの気持ち
・最近妻がいつもイライラしてくつろげない
・妻と口喧嘩が絶えない。普通の会話が減った
・妻が子どもにかかりきりで自分は放置されているようで不満を感じる

家に帰るのも苦痛  悪循環

4)夫婦の関係性を良好に保つために必要な対処

○前提
応援、サポートはいらない。同志であること
一度、昭和の価値観をアンインストール

①役割の納得感:育児や家事を半々に担わなくても納得感が得られてるかどうかが大事
妊娠前からのリサーチ(お互いの職場の育児支援制度):夫婦の対話
修正もあり:働きたいというママの気持ち

②心の並走感
育児時間に偏りがあっても、いつも相談にのってくれる、話しを聞いてくれる
すぐに調べてくれる、昼間にラインをくれる
労いや感謝の言葉を伝え合っている
ささいな子どもの変化をシェアできる
いつも気遣ってくれる。遅くなるときは必ず連絡をくれる

③アサーティブなコミュニケーション
適切にSOSを出す
どうして欲しいかリクエストを明確に

〇〇ちゃんおお世話のことなんだけど
今、私・・・してるでしょ。
疲れちゃってもう限界なの。
夜、1回変わって欲しいな。

④引き算で折り合いをつける
夫の育児にダメ出しをしない
自分のこだわりを押し通さない

⑤柔軟性であること
この方法しかないと思い込まない

両親学級は、家族の危機対処能力を高めること

参考文献

「ふたりは同時に親になる 夫婦のズレの処方箋」猿江商會, 狩野さやか


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