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はじめに


一応食の専門家である私が、なぜファッションについて書くのか? それは、食べることと、着ることが、人生にとって同じくらいに大事なことであり、どちらか一つでも欠けては生きていけないほどだからなのです。お金がなくなったらどちらをとるかと問われても、恥ずかしながら、食とは答えられない。なけなしのお金を半分にして、食と衣服に使うでしょう。
それほど、着ることも好きなんです。
63年の人生を思い返すと、はっきりと、洋服のことを意識した記憶は小学校1年生。以来、服にまつわる思い出――あの時あんな服を着て、こんな気持ちだった、楽しかったなどなどーーは数えきれないほど。そこで、年齢を追って、そんな思い出を文字化しようと思ったわけ。つまり、莫大な浪費を少しでも、取り返そう的な。そして、お葬式のとき、お棺には、一番好きだった服を入れてもらい、シャンパーニュで献杯。小洒落た婆さんだったよねと言われれば本望。“お洒落な”じゃなくて、“小洒落た”。これ、大切。ギラギラと全面に押し出した、ファッショニスタではなく、見る人が見ればわかる、シックなお洒落が目標だから。


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