15年間の仕事の中で、一番嬉しかった1分の仕事
私は、とある会社で15年働いてきた。仕事内容は、企画や開発など。大きな成果を上げているわけでもなく、仕事が楽しいとも思えていない。そんな中で、特別に嬉しかった1分の仕事がある。
1分の仕事
ある時期、私は仕事で英語の文献を読んでいた。その時に、経理のIさんが私に声をかけてきた。Iさんと私は、時々一緒にお昼ごはんを食べたりするような関係。
Iさんが言った。「ちょっと教えてくれる?」
私は少し身構えた。「私にできるかな」
Iさんは紙を差し出し、「この書類、どの国から来たものか、わかる?」
私は、それならわかると思った。住所をGoogleで検索し、「アメリカですね」と答えた。Iさんは「ありがとう」と言い、軽く笑って去っていった。私はとても嬉しかった。
それはたった1分の仕事だった。仕事とは言えないような、ただの出来事なのかもしれない。でも、私にとっては、15年の仕事の中で、一番大きい仕事だった。
それまでにも、いわゆる大きな仕事(大きな案件や大きな予算)をしたこともあったけど、この事が一番嬉しかった。私がこの会社での勤務を辞める時、一つだけ思い出として持っていくならこれだろう。
何がそんなに嬉しかったんだろう?
3つの理由を考えてみた。
理由1. 相手が喜んでくれた
これは大事。でも、相手が喜んでくれたのは、他の機会でもあった。だから、これだけが理由ではない。
理由2. 相手が私の力を使ってくれた
Iさんは、私の様子を見て、私に何ができるかを理解し、私の力を使ってくれた。私を頼ってくれた。この人に聞こう、そう思ってくれた。
理由3. 私にとっては簡単なことが、人を先に進めた
この時、私はがんばっているという意識は、まったくなかった。例えるなら「今日の天気はどうかな」と訊かれて「晴れって言ってましたよ」と答えるくらいの感覚。そんな簡単なことで、人が喜んでくれる事があるんだ。それが驚きだった。
こんなにもあっさりと、喜ばれる
私は、人に喜んでもらうためには、がんばらないといけないと思っていた。人のために、大きな努力をして、辛い思いをして、やっと人の役に立てる。しかも、人の役に立ったところで、その人が喜んでくれるかはわからない。それでもがんばる。それが私の方法だった。
でも、そうではなく、こんなにもあっさりと、私が普通にできることで、人を助けることができる、その人がその先に進める。それが私にはとても嬉しかった。