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遺品整理

主人、義母、義父の順に
たった1年間で3人も看取り終え、
相変わらず忙しすぎる毎日。


ふと、
11LDKの大きなお屋敷を見渡した。


そこには3人の遺品がここかしこに
まるで今も住んでいるかのように
残っていた。


「眺めていると辛いなぁ。
 もう3人は居ないんだから、
 遺品整理をしよう!」


重い腰を上げてゴソゴソと、
ひろこはひとり黙々と動き出した。




まずは3人の洋服。


オシャレが大好きだった主人のスーツは
ランバンばかりだったので、
肩身分けとして欲しい方々にお渡しした。


義父母の洋服、貴金属、着物も
肩身分けをして
親族の方々に引き取っていただいた。


その他には
それぞれが愛用していた
小物、置物、アルバム…


どれも私にとっては
無用の産物でしかなかった。


たくさんの遺品を
ゴミ出しの分別表を確認しながら仕分け、
指定された曜日と場所に
ひとりで何往復もした。




つぎは介護グッズ。


おまるや、
お風呂場で使っていた介護用の椅子。


それらをゴミに出す時は
少しキュン…となった。

お風呂で介助してる時に
あんなこと、こんなことがあったなぁ…


ヘルパーさん達も
ワガママな義父母だったから
大変だっただろうなぁ…


と、いろんな思い出が
湧き上がってきたからだ。





遺品整理中には
こんな不思議体験もした。


義父の可動式ベッドはレンタルだった。


義父の四十九日の法要の前に、
そのレンタルベッドを
早々に返却してしまったのだ。


返却した日の夜。


私が義父の寝室の隣りにあるリビングで
香取慎吾さん主演のNHK大河ドラマ
「新撰組」を楽しんで見ていたとき。


誰も居ないはずの義父の部屋から 


コッ、コッ、コッ、


と、ステッキをつく音が
聞こえたような気がした。


「ん!?空耳かな?
 ドラマの続きみよっと♪」


そして、また暫くすると…


コッ、コッ、コッ、


「えっ!?
 お義父さんがステッキをついて
 部屋中を歩いてる!?(驚)」


慌てて部屋を覗くと
何も無いガラーンとだだっ広い空間が。


「ん…?待てよ!
 お義父さんもしかして
 ベッドを探してるの!?」


思わず私は
部屋に向かってそう叫んでいた。


「そうか、
 四十九日の法要が終わってないから
 まだ家に居てくれてるんだよね(涙)

 ごめんね、お義父さん!
 今、お布団敷くから待っててね!」


慌てて押し入れにあった敷布団を
以前ベッドがあった位置に敷いた。


「どうぞ、やすんでくださいな。 
 おやすみなさい。」


すると、義父のステッキの音は
聞こえなくなった。


「私の近くで見守ってくれていて
 ありがとうございます。」


と、そっと両手を合わせた。






他にもこんな不思議エピソードを
思い出した。


義父の葬儀後、
お香典は受け取らない旨を
告知していたにも関わらず、
たくさんのお香典が集まってしまった。


香典返しと集計作業を
会社でひとり、夜遅くまで処理していた。


「よし、終わった!帰ろ!」


出入口のカウンターに
お香典の現金が入った袋詰めを
ポンと置き忘れたまま、
事務所の鍵をかけた…その瞬間!


けたたましく
セキュリティアラームが鳴ったのだ!(汗)


「えっ…なんで!?
 中には誰も居ないのに
 なんでアラームが鳴るの!?」


ふと中の様子を覗くと
カウンターに置きっぱなしの大金が!!


「わっ!わっ!わっ!
 ヤバイ!ヤバイ!置きっぱじゃん!」


私は慌ててアラームを止めて鍵を開け
現金の入った袋詰めを持った。


「あっ!きっとお義父さんが
 教えてくれたんだ!(汗)」


今ごろ私の背後で
「ワレ!!
 何おっちょこちょいなこと
 やらかしとるんや!!」


と、怒鳴っていそう。


「ごめんなさい。」


と、心の中で手を合わせた
ひろこだった。


つづく

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