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苦行のはじまり編①〜出産前〜

専業主婦になる約束で嫁いだはずの
「箱入れられすぎ」娘だった私。

新婚旅行から帰ってきた翌日より、
義父の営む「運送会社」へ
強制連行されることになった。

そのとき、妊娠5ヶ月…
まぁまぁ身重である。

「専業主婦でいいよ」と
約束してくれた愛しの主人は、
義父から私を守ってはくれなかった。




くる日もくる日も
慣れない台帳とにらめっこをしながら
ソロバンの玉を弾く。

出勤して15日が経ったとき
はじめて請求書を作成することになった。



昔はパソコンなんて便利なものは
ございませんでした。

そう、いちから手書き!



【〇月〇日 どこから〜どこまで 何万円也】



1行ずつ丁寧に、間違えないように…



あぁ、そんな時に限って間違える。



「はい!書き直しっ!」

あと20日で退社される事務員さんの声が
容赦なく飛んでくる。



「えっ…あと1行で書き終わるのにぃぃ(泣)」

と、心の中でつぶやくも
声に出す言葉は「ごめんなさい」。



容赦なく、ビリッ!!と
私が丁寧に書き込んだ「お初の請求書」が
無惨にも破られる音が響いた。

そして
心の中にも、脳裏にも、焼き付いた…。



それから慣れない作業は毎日続き、
さらに20日締め、末締めには
膨大な「運行記録※」が待っていた。

昔から「こずるい性格」の私は
とにかく楽ができることを考えた。

「そうだ!毎日毎日1行ずつ
 日記のように書き込んでいけば
 締日に焦らなくても楽ができる!」

そのときほど
自分の要領のよさを感じたことはなかった
ひろこであった。



つづく


※「運行記録」とは運転者の氏名や開始終了地点及び目的、並びに主な経過地点及び乗務距離などを記したもの。現在はデジタル化されているが、30年以上前は全て手書きだった。












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