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変なバーに行ってみた

昨日、ある人に連れてってもらって某霊視&陰謀論バーに行ってみたわけ。

某駅から歩いて10分程度に位置する雑居ビル。店前にはすでに8〜10人ぐらいの変な人たちで溢れかえっていた。

もうそこに集まっている人をみれば分かる。孤独、不安、断絶、視野の矮小さ、色々な意味で豊かではない人々。しばらく待つと、お店のドアがあき黒い服をきた男が出てきて、人を招き入れる。俺たちは1時間待ちだった。外で用事を済ませて戻ってきてしばらくしたら中に招き入れられた。

10人入ればパンパンの店内、指示された場所に座っていく。
メニューを見ると霊視セット9,999円とある。いや高いだろ。飲み物は普通の値段だったかが、開運プリンとか、厄除けドリンクみたいに、ふざけたことがきったねぇ手書きで書いてある。この手書きの感じ。わかるんだよ、クズみたいな店っていうのが見えちまう字の汚さってのが。

窓際には招き猫が置いてある。
「あの猫、よく動くらしいよ」
俺を連れてきてくれた人がそう言う。

おれ、そういうの全く信じてない。
動くわけないし、動くとしたら風とかだし。

聞こえてくる話によると、おれたちの右隣の男はもう何時間も入り浸ってるらしい。店から出ては再入店を繰り返している。「おれ闇が深いから」と自慢げに話している。店員に絡んでいてる。店員も扱いに慣れているようだ。常連でも邪険に扱われるやつっているんだよな。そのさらに右には太った女。メガネをかけていて、社会のだれからも相手にされない印象。「霊視をお願いします」と言っている。おれの左も男と女が1人づつ。男は「会社の人が都市伝説や陰謀論に興味があって、どんなところか調査しにきました」と言っている。あとでわかったが、そいつ自身がちゃんと都市伝説に興味のあるやつだった。しょうもない嘘つくな。1番左奥の女もメガネをかけていたが、なぜかあまり顔が思い出せない。これがカウンターの全員で、奥のテーブルにも4人ほど客がいたが、割愛させていただく。

店員は3名。

霊視できるという女、オーナーだという男、あとバイトの女。最初の印象は、全員が見た目、汚らしいということ。とにかく全員が、汚いというか、綺麗にしてない。なぜかバイトの女のつむじの形の異様さに目が行った。黒髪の女だったのだがトリートメントなど無縁のパサついた髪、変なところにつむじがあって、髪がどこに向かえばいいの困っているようだった。そのつむじをおれに向けながら酒を作っている。勝手に、いじめられてた過去を持ってそうだと思った。

男もパッとしない。男が社会を生き抜くのは大変だ。特に東京では。はっきり言えば、脱落者のオーラを纏っている。こういう狭い領域でうまくやっているのは大したものだという一方、脱落した領域でいくら頑張っても、所詮世間からはまったく評価されないという当たり前の事実を全身で体現しているような男だった。切り揃えられてない髪の毛。少し長い前髪。黒いTシャツ。中肉中背。男性社会の底流を現在進行形で流れている。

霊視できるという女。目の周りを黒塗りにした品のない化粧。ジーンズに黒いTシャツ。意図しておっとりとさせている話し口調。フレームが曲がった、演劇の小道具見たいな伊達メガネ。メガネにガラス自体入っていない。フレームだけ。黒髪ロング。客一人一人に話しかけているが、おれにはいっさい目を合わせない。もうそれで戦闘能力が分かる。本当に強い詐欺師は、相手がどんな人間であれ目を合わせ、騙そうとしてくる。こいつはある一定の知性と自分なりの失敗・成功経験を持った詐欺師だろうと感じた。

まずは奥のテーブルの客の霊視が始まった。
何を言っているのかよく聞こえなかったが、「品川っていうのはいい場所だから」とかどうしようもないことを言っているのだけは聞き取れた。あと、手の動き。いわゆる陰陽師とか霊媒師の型みたいな、そういう手の動きをしていた。よくやるよなあんなこと思いながら、一応頼んだ「厄払いドリンク」を飲む。

厄払いドリンクって、なんかコーン茶みたいなのに、少しだけ金粉が浮いてるだけなんだ。ディズニーランドとかみてみろよ。もっとちゃんと人を騙そうと完璧を目指しているだろ。人に魔法をかけるというか、ある種騙すんならもうちょっとやってほしいと思う。各所に見える雑さというか、チープさに辟易する。

奥のテーブルの霊視(4人分)を終えた霊視のできる女はカウンターに戻ってきて、俺たちとトークを開始する。1番左の、顔の印象が全くない女からに話をしていく。

霊視のできる女「京都には行ったことありますか? 京都って歴史的な建造物とかたくさんの石像とかあって、すごいんですよ」と言うと、左の女は「えぇそうなんですか」とわざとらしく頷く。ちょっと待てと。誰でも知ってることをおっとりゆっくり喋ったらそれなりの雰囲気が出てると思ってるのだろうか。っていうか左のやつも京都に歴史的建造物と石像があることを知らないわけがないだろう。その後も、不動明王がどうたらこうたらとか、それらしい(おれからすると全くそれらしくない)ことを話している。

俺の左隣の男とは都市伝説の話をしていた。そこには陰謀論も含まれるのかよくは知らない(というかどういう風にジャンル分けされているのかよくわからん)が、楽しそうに話している。のちにこの左の男が俺に「こういう話、ついてけますか笑?」とか話しかけてきたので、おれはぜひともお前みたいな人間に話しかけられたくないという気持ちを全開にして「いえ」とだけ答えたわけだが、水を得た魚とはこのこと。べちゃくちゃ喋っている。都市伝説や陰謀論好きにはいいバーなんだろうなと思う。

霊視ができる女は、前述の通り、ある程度の経験を持っているのに加えて、おれが思うに防衛本能が強い女だと思う。ここまできても、おれとはいっさい目を合わせない。徹底している。おれみたいなやつが、自分のビジネスの敵だということをわかっている。

霊視のできる女は自分のスマホをみて「あーゾロ目だ。22時22分。しかも5月5日だから、ごーごーにーにーにーにーだ」とか馬鹿げたことを言う。周りが「わぁ〜」と騒ぐ。バカなんだろなと強く感じる。

既視感を持った。むかし幕張メッセで、マーケティングに関する巨大な販促イベントがあって、そこに自分の会社のブースを出したことがあった。その時に、別の会場でキングコング西野のイベントがやっていて、彼のシンパが大量に、俺たちのようなBtoBの販促ブースに流れ込んできたことがあった。おれたちも「ウェブマーケティング」という単語を提げてブースを出していたもんだから、言葉的に近しいものを感じた(もうその時点で物事に対する解像度が低いのだが)、西野シンパが俺たちに話しかけてきたことがある。日本には知的障害者は1%程度らしいが、いわゆるグレーゾーンの人たちは15%程度いるらしい。その話を証明するような人々であったことは間違いなかった。きっと投資詐欺とかにもあうし、陰謀論も信じちゃうし、幽霊ももちろん信じちゃう人々。彼らの人生に寄りかかる木はあるのだろうか。あった。それがこの店なんです。

一つ論点としてあるのは、霊視ができる女やオーナーの男が意識して人を騙しているかどうかという点である。おれが思うに、霊視の女は銭ゲバだと思う。思う、というより、おれの人生経験の蓄積により、確信に近いものを感じた。そしておそらく特殊な育ちをしている。そうでないと、人を騙して金にすることはできない。いや本当に、できなんだ。人を騙して金を継続的に稼ぐって、普通の人間ならば相当な負担になるし、ストレスがとんでもない。一方オーナーの男はどんなやつかというと、おそらく、バカである。バカだって生きなきゃいけないから、サバイバル自体に関しては否定はしない。むしろうまくやってる方だ。人を騙したって生きていかなきゃいけないのが人生であることも事実。バイトの女は知らん。つむじが変で、たぶんいじめられてたから、変なところに身をおくことで、自身のアイデンティティを保持しているのかもしれない。ていうか髪の毛ちゃんとしろ。全員な。

生きる上で、ある程度保もたなければならない品位は存在する(お店サイド)。
教養を持つこと、孤独にならないこと、各種レイヤーの人的ネットワークが人を強くし、騙されづらく、自分自身や自分のあらゆる資産を守ってくれるということ(客サイド)。
人を騙さなくても生きていけるスキルセットやマインドセットは持ってたいということ(自戒の念)。

そんなことを感じた夜でした。

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