見出し画像

ステージング

 このテキストは、初心者にステージマジックの教育を20年間行ってきた、手品家社長とりっと氏による、そのノウハウを公開するための動画による指導書である。
 一般的に、テーブルマジックよりもステージマジックのほうが、高額の依頼が多いので、クロースアップマジックだけを演じるよりも、ステージマジックを覚えたほうが稼ぎが増える可能性が高い。ところが、最近のマジック業界の流れとしては、クロースアップマジシャンは増えているものの、ステージマジックができるマジシャンは減っているように見受けられ、この業界の課題に対して、ステージングの解説を行うことでの解決を図ろうとしているのが、この動画テキストである。
 このステージング教育は、手品家において、新人のマジシャンに向けた指導方法であるが、とりっと氏の厚意により、手品家以外のマジシャンや、これからマジックを始める人にも提供できることになっている。
 ターゲットとしては、全くマジックができない人、興味があるのにやり方がわからない人、わからないままステージマジックを演じているマジシャンに向けた解説であり、点数で言うと60点という合格ラインを目指すための解説になっている。70点、80点を目指したいマジシャンは、60点ぶんの基礎に、自分にしかできない個性を加えていく必要があるだろう。

 マジックを演じるには、やり方(テクニック)見せ方(プレゼンテーション)楽しませ方(コミュニケーション)が重要であるが、ここでは主に見せ方の部分に焦点を当てて説明を行うことにする。したがって、タネを知るための動画ではないし、タネの部分はこの動画で学ぶことはできない。タネを知っている前提での解説となり、料理にたとえると、「麻婆豆腐の作り方は知っているが、美味しく作る工夫を知りたい」という人に向けた解説であることをはじめに言っておく。
 一方で、「美味しく作る工夫」は、カレーライスを作るときにも適用できる考え方であり、必ずしも麻婆豆腐のレシピを知っていることが重要ではない。つまり、タネを知らずに見ても何の役にも立たない、ということではなく、「美味しく作る工夫」のほうから入門するとしても、それもまた推奨される入門経路であると言える。

 ステージ映えする立ち方、歩き方、ターンの仕方、お辞儀、目線、アピールポーズ、呼吸、というようなことを解説することが、この動画の目的である。これらは、ステージマジックを演じて観客に好印象を与えるのにとても重要な要素ではあるが、しかし、巷ではなかなかその解説書がなく、今回ここで解説する運びとなったのも、そういった理由からである。
 マジシャンの動きに対して観客はどこを見るのか、というような理論も説明していくことにするが、これらが研ぎ澄まされると、同じルーティーンを演じていても、見え方は全く変わってくるものである。ご家庭の麻婆豆腐が、中華料理店の麻婆豆腐にレベルアップすることになるだろう。もちろん、一流店の麻婆豆腐にしたいならば、さらに独自の工夫を足していかなければならない。

 理論として一例を挙げると、「刺激と反応理論」がある。これは演者が笑うとお客様も笑うし、お客様が笑っていると演者も笑ってしまうというような理論であり、マジックを演じる上でとても重要な理論である。駆け出しのマジシャンによく訪れるのが、演者が緊張してしまい、見ているお客様を緊張させてしてしまう、というような状況であるが、それもまた同じ理論である。
 この刺激と反応理論を上手く利用すると、悪い空気を良くするような工夫もできるようになるが、それも理論をきちんと勉強しているからこそであるだろう。

 これから、様々なステージ上での立ち振る舞いのレクチャーを、動画にて行っていくことにする。

ここから先は

2,506字
この記事のみ ¥ 100

無料記事に価値を感じていただけた方からのサポートをお待ちしています。より良い情報をお伝えするために使わせていただきます!