【百科詩典】ひひょうかか、せんもんかか【批評家か、専門家か】

様もなく情報に肥え太り燥ぎさわぐ批評家か、みすぼらしく自陣の立て籠もり痩せ細る専門家か。あるいは、その場その場にあわせて、この二つの仮面を手早く取り替えながら歩むか。この「仮面の手際よい取り替え」に属するものとして、新しい専門分野を自分でつくってしまう、という手管がある。今まで批評の対象にならなかった新しく出てきたものを、俺は専門的に知っていると批評家が言い出すわけです。かくして最悪の仕方で自閉し、自らの視野狭窄にも気づかず、その閉じられた世界のなかで何でも説明できる万能の全知を揮うことができるようになる。国内外を問わずこういう態度は見られますね。批評家か、専門家か、「新しさ」「新世代」を振り回す批評と専門性の最悪の結託かー知に携わるかぎり、われわれには、このような貧しく卑小な選択肢しか残されていないように見えます。この現在という時代にあっては。
 〜佐々木中『切りとれ、あの祈る手を <本>と<革命>をめぐる五つの夜話』

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