【謝るを科学する(1)~クレーム処理の初動~】

こんばんは。ひろきちです。
過去2つの記事は規制や法規が題材で、少し取っ付きにくい内容でした。

このマガジンでは、『謝ること』という、より私たちの肌に近い事がらについて、フォーカスして深く深く掘っていきます。
私は製造業で品質保証部門として沢山のクレーム処理に関わってきました。
その一面では、「謝ること」の専門家でもあります。

そんな私が常々 思い、モヤモヤしていることがあります。
◆みんな、謝ることをネガティブやマイナスに捉えすぎていないか?
と。

時代は常に動き、仕事や人間関係への価値観も変わってきました。
世の中では企業や公人・有名人が不祥事を起こし謝罪し、不良製品は回収され、失言は撤回する。傲慢や無責任は白日の下に晒される。

これらは、(私たち)消費者や視聴者、被害者の反応が時代とともに変わり、レスポンスが速くなった結果だと思います。

しかし・・・『謝る側』のメンタリティは、時代に追いついていない・・・
そう感じるのです。

このブログで私が、皆さんに本当にお伝えしたいことは。
◆謝ることは、何も悪いことばかりじゃないよ。
◆謝ることの価値観を変えよう。そうすれば行動は変わり、自分の周囲を変え、同僚や上司、お客様、すべての関わる人との信頼を引き寄せられる。

読んでいただく方に、このことをしっかりとお伝えして、皆が少しでも、生きやすくなる手助けとなりたい。それが私の願いです。

それでは、当マガジンの最初の記事に入りましょう。


【謝るを科学する(1) ~クレーム処理の初動~】
目次:①『ちょっと待って!それホントにクレーム!?』
   ②『初動の情報が交渉の行く末を大きく決める!』
   ③ まとめ

何も説明せずに使っていますが、「謝るを科学する」は私が勝手に作った造語です。できれば流行らせたいと思ってますw
・・・では、お題は「クレームについて」。


①『ちょっと待って!それホントにクレーム!?』
私の仕事は製造業ですので、今回は(企業対企業)BtoBを前提に書きます。(企業対消費者)BtoCについては、別の記事で触れますね。

BtoBですので、クレームの第一報はまず得意先企業から連絡が来ます。
ここで皆さんは「えっ?」と思われるかもしれませんが、
◆実は、クレームは初動の段階ではまだクレームと決まってはいません。

ちゃんと説明しましょう。
製造業でのクレームはほぼ、製品そのものの品質不良に関わるものです。
不良の内容によっては、一報を受けた段階で自社にその原因がある、と丸分かりのものもあります。

しかし一部では、よくよく調べてみると不良発生の原因や責任は自社には無かった、ということがままあるのです。
例えば、
・製品に使用する資材をお客様から提供を受けていて、不良品発生の原因がその資材にある場合。
・品質に問題があると指摘はされたが、一般的な価値観で考えると大きな問題があるとは言えず、交渉の末にクレームではなくなる場合。

このようなことがあり得ます。
ですので、クレームを受けた段階で情報が少ない場合は、(実際はクレームと言えないこともあるので)まず情報を取ることを優先して動きます。
また、初動の段階で自社にその責任が無いと考えられる場合、クレームとして受けずともお客様にご納得いただけるよう、論理を構築することもあります。

そのような、色々な可能性を考慮して(最初から自社に責任があると明らかな場合を除き)、クレーム処理の初期では、謝罪することは控えます。
相手先も企業ですので、形だけの謝意で納得することなどありません。
お客様は、常にこう考えます。

『この会社に自社の製品を任せて大丈夫か?』
『次にまた不良が発生しないと本当に言い切れるのか?』

お客様は、安心したいのです。営業担当の方などは、自分の受け持つ製品が「今後は大丈夫です!!」と上司に報告し、安心させることを求めています。
なので、クレームであるのならば。謝罪の言葉よりも、
・なぜその不良が発生したのか、納得できる原因の説明。
・「次からはもう大丈夫」と安心できる、再発防止策の提案。
これがお客様にとって、最も重要です。

その「発生原因・再発防止策」をしっかりとお客様へ提示するためには、初動の情報がとても大事になってくるのです。


②『初動の情報が交渉の行く末を大きく決める!曖昧さの排除』

前項で初動の情報が大事である、と書きました。
この「初動の情報」とは、大きく分けて2つあります。

◆お客様から頂く情報
◆自社内の製造情報(記録)

です。
まず、『お客様への情報取り』について。
例えば、不良品が流出してお客様へご迷惑をかけてしまった場合。

お客様は、「納品されたすべての製品が不良なのか、または一部なのか」を不安に思っています。
不良品は、一部に混入することもあれば、納品したロットすべてが不良品である場合もあります。

(例)一部が不良品・・・製造中、機械故障など不具合で品質が不安定になった場合など。
(例)すべてが不良品・・・製造時、製品の規格を間違えて作ってしまい、すべてが不良品と判定されたもの、など。

ですので、クレームを起こしてしまった側(自社)は、その不良品が混入している区間を証明しなければなりません。
そのために、お客様から情報を取る必要があります。

・どのロットから不良品が発生しているか。
・何月何日の製造分か。

などです。
しかし、全ての情報をお客様から頂けるわけではありません。
お客様の方でもロットが混在して分からなくなっていたり、エンドユーザーまで製品が流れていて情報の取りようがなかったり。
お客様が激怒していて取り付く島がない、なんてこともあります。

そこで、次の『自社内の製造情報』が重要となってきます。

製造業では、自社内に残す「製造記録」を製品ごとにつけています。
いわゆる、「トレーサビリティ」というものです。

この製造記録を残すことで、
・どこに不具合が起きているか
・資材は何を使っていたか
・発生した不良の波及範囲は?
このような、「発生原因を探るうえでの重要な情報の素」を見つける手がかりとなるのが、製造記録です。

記録を残していなければ、本来は自社に責任が無いのにも関わらず、証明する手段が無くクレームとされてしまう、そういった問題にもつながってしまいかねません。
また、原因をお客様へ説明しようにも、情報が無くて何もわからない、といった失態となってしまいます。

その意味で、製造記録は(自分たちを守る手段)でもあるのです。

製造業で働く者の感情で言えば、製造記録を記入したり、品質を絶えずチェックしたり・・というのは手間に感じてしまうことが多いです。
しかし、それを怠りひとたび、クレームとなってしまえば。
その手間の何百倍、何千倍もの時間、労力、損害を引き起こすこととなります。

クレームが起きてしまって、得をすることなど何もありません。
しかし、クレームを基に自分たちの行動を改善することで、
自分の作った製品を次に使う人が、喜んでくれる。自社の利益、ひいては自分たちの幸せにつなげることができる。

そう、クレームは『大きなチャンス』でもあるのです。
クレームを起こしてしまったからといって、下を向いて頭を垂れていても、なにも変わりません。
それよりも、改善するチャンス ととらえて、前向きにクレームに向き合う。それでこそ、自分の周囲、お客様、消費者、世間から良い評価、信用を得られる。
そう、信じています。

これが、冒頭でお伝えした「謝ることの価値観を変えたい」私の考えのひとつです。


③ まとめ
◆クレームと判定するには、情報が必要
◆謝罪は後からでもできる。求められるのは、確かな情報と、お客様を納得させられる説明、安心できる再発防止策。
◆クレームは自分たちの幸せにつなげるチャンス!上を向こう!

今回の記事は以上となります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

しばらく、このマガジンで「謝ること」を深掘りしていきます。
次回もぜひ、読んでいただけると嬉しいです。
では、また。

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