見出し画像

ゴール期待値の活用例

前回まで、ゴール期待値のことを深ぼってきましたが、ゴール期待値をどのように使うかについて、もう少し詳しく書いていければと思います。

また、今回は、参考として用いているデータやそれに付随する選手名などは、あくまでもわかりやすく説明するために、公表されているものから取り上げたものですので、ご理解ください。

さて、今回解説するのは、『選手の能力評価』『チームの評価』についてです。

それでは、みていきましょう。



◾️選手の能力評価

最近では、選手のゴール期待値が以下のようにランキングにされたりもしています。

少し古いですが、https://www.football-lab.jp/column/entry/734


このランキングでは、ゴール期待値よりも多くのゴールをとっている選手が上位に位置付けられています。

FootballLABより


それでは、1位の仲川選手を例に考えてみましょう。


ゴール期待値から読み取ります。
平均的な選手であれば、本来10.42点ほどのゴールが奪えるだろうという全シュート場面から、仲川選手は実際に15点を取りました。
つまり、ゴール期待値から4.58点を上回ったゴール数を決めたということがわかります。


これが意味することは、なんでしょうか。

仲川選手の「ゴールを奪う力がとても長けている(シュートが上手い)」もしくは、「この年は運がとても良かった」のどちらかと考えることができるでしょう。

仲川選手のこの例は、「実際のゴール>ゴール期待値」ですが、
反対の「実際のゴール<ゴール期待値」では、どのような解釈ができるのでしょうか。
(ランキングでは、すべての選手がゴール期待値を上回る得点を挙げていますね・・・)


たくさんゴールを奪えるチャンスを作ることができたが、「ゴールを奪う力が高くなかった(シュートが得意ではない)」もしくは、「運が悪くてゴールが奪えなかった」、などということになりそうですね。


このようにして、ゴール期待値を見ることで、その選手のゴールを奪う力が表されたり、チャンスの場面を作れているかなどということが参考にできます。


こうなると選手の評価は簡単に見えます。



極論ではありますが、、
たくさんゴールを奪っている、かつ、ゴール期待値を元に選手を探し、
「実際ゴール>ゴール期待値」という、シュートが上手い選手をチームに獲得することで、チームのゴール数が増やせそうです。
(もちろん、選手間の相性やチームのスタイルなど、それ以外の要素も絡んできますが、あくまでゴール期待値を参考にした場合ということです。)



つまり、今回の例からすると、仲川選手はたくさん得点を取ったし(実績がある)、シュートが上手なので、獲得したらチームの得点は増えるだろうと考えるのが普通です。




しかし、ここからが面白いところです。


では、来シーズンについて考えてみましょう。


Q.仮に仲川選手を獲得したとして、来シーズンも15点、もしくはそれ以上の得点を取ってくれるでしょうか?



・・・もちろん、取ってくれるはずだ。

・・・いや、来年はマークも厳しくなって難しいんじゃない?



・・・仲川選手が好きだから取ってくれることを願っている。



・・・ゴール期待値を上回っているからたくさんのゴールしてくれるだろう。


などなど、いろいろな意見があるかと思いますが、、



・・・どうでしょうか。





それでは、その答えを出すために、統計学の考え方を用いてみます。



「平均回帰」を元に考えてみましょう。




急に難しい言葉が出てきたような気がしますね。

きっと理解できるので、先入観に捉われず読み進めてみてください。




平均回帰とは:極端な結果を出せてたはずなのに…何度も繰り返したら、トータルで平均値に近づいてしまうことです。




これにゴール期待値を交えて説明すると、、



今シーズン、ゴール期待値を大幅に上回る極端な結果を出せた。けれども、仮に毎シーズン同じゴール期待値だったとした場合、最終的には、実際のゴール数がゴール期待値に近づいていってしまう。ということです。



つまり、大幅に上回る極端な結果を出せるシーズンもあれば、大幅に下回るシーズンもあり、全シーズンをトータルで見ると平均値に近くなるということです。


したがって、来年は10点ぐらいになるかなと予想するのがアンパイかもしれませんね。

(仮に、15点を取れなくても、仲川選手が10点取ってくれるのであれば獲得したいのではないでしょうか。)

【ゴール期待値と平均回帰の注意点】

ゴール期待値は、過去のシュートデータに基づいて算出される指標であり、必ずしも将来のゴール数を正確に予測できるわけではありません。また、平均回帰もあくまで統計的な傾向であり、必ずしも個々の選手に当てはまるわけではありませんので、注意が必要です。
絶対こうなると言い切ることは言えないので、注意してください。





Q.ゴール期待値を上回り続けることって可能なの?


ゴール期待値を一貫して上回り続ける選手はほぼゼロに近いようです。

世界的スーパースターのC.ロナウドにとってさえ難しいとされています。


しかし、そんな中、もう一人のスーパースターであるメッシは、唯一と言っていいほど一貫してゴール期待値を上回り続けた選手であるようです。


ある本から抜粋した数字を以下にまとめました。
(本については、次の回で紹介する予定です)

C.ロナウドは1シーズン足りないですが…比較してみると驚くべき違いが出てきますね。


一言。


恐るべしメッシ。


毎年のように、ゴール期待値を上回り続けるゴール数。


これは、平均的な選手にはなかなか決められないシュートを圧倒的に多くゴールにしてしまう力があるという事です。


抜群にシュートが上手いという表現ができそうですね。


一方のC.ロナウドの凄さは、シュート能力ではなく、
「チャンスをたくさん作り出す力」と言えます。


シュート能力は平均的な選手と同じということが、xGと近しいゴール数を毎年積み重ねているということでわかりそうです。

では、たくさんゴールを取れている理由はなんでしょう。
それは、xGの値が他の選手よりも群を抜いているという事です。

比較相手がメッシなので、群を抜いているようには見えませんが。。




◾️チームの評価

勝てていない中でも常にゴール期待値が相手よりも圧倒的に高い場合、そのチームの未来は少し明るいかもしれないと考えることもできます。


実は、もう先に出してしまっていたのですが、、


ここでは、それをより詳しくみていきます。

2015-2016シーズンのイタリアの名門、ユベントスについてです。

こちらはまたOpta Sports の動画から抜粋しました。

(Opta Sportsより)


【日本語表記】

シーズン開始から10試合時点での「実際ゴール数と被ゴール数」、「ゴール期待値と被ゴール期待値」になります。

ユベントスは、この10試合で3勝しかしていなかったようです。


この表から読み取れるのは…


・ゴール期待値は高いのに、実際ゴール数は少ない

・被ゴール期待値は低いのに、実際ゴールは多い


ということ。


そして、これに、先ほどの平均回帰の考え方を用いて考えてみると…


実際ゴール数は増え、実際被ゴールは減る。

=勝つ試合が増える


と予想することができます。


実際、12試合目を境にして、勝ち試合が増え、ゴール期待値と実際の値が近づいていったようです。
そして、最終的にこのシーズンのユベントスの成績は優勝に終わりました。


このように数字を用いて考えると、クラブとして進んでいる道は間違っていない可能性が高いと考えられます。


結果が出ていないから監督を変えるというのはよくある決断ではありますが、チームが進んでいる方向を評価する一つの手段としても、ゴール期待値は使用できるということが言えそうです。



さて、今回は、ゴール期待値の使い方について、実際の数字を使って解説しました。

まだまだ、他の使い方もあると思いますし、このような数字をどう扱うかは、人によって変わってきます。

そんな点も踏まえて、次の最終回では、2023年J2リーグのゴール期待値を元にした、勝ち点期待値から順位付けをしてみます。

勝ち点期待値という新しい言葉が出てきましたが、それも次回解説する予定てす。
それでは。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?